外出5

 しばらくして、ミレイが子供を連れて戻ってきた。 子供たちを、オルガは一瞥すると声を掛ける。


「それじゃあ各々自己紹介をしろ」


「ミレイ=アシッド15歳」


「クラン=グレイス13」


「バオ=シュン……11歳」


「ターニャ=イワン9歳です」


 全員の自己紹介が終わるとしばらくオルガ様は押し黙り。 沈黙が流れた。 そして深くため息をついたと思ったら、頭をかきながらオルガ様は口を開く。


「子供と聞いていたが、ここまで若いとはな、しかも、全員女かよ、男はどうした」


 その声はあからさまに落胆していた。 確かに子供とは聞いていてある程度、覚悟はしていたが一番下は9歳とか、二桁にもいっていない。 ミレイは、役には立てると言っていたが、いくら体力があったところで、あれでは役立たせる方が難しいだろう。


「男の子は全員連れ去られました」


 何故、男を中心にとらえたのか少々疑問に感じたが、オルガ様が――。


「恐らく、成長すれば男性の方が戦闘に向いているからだろうな。俺でもそうする。流石に捕らえに来たものが兵士なだけはある、バカではないらしい」


 ――と、独り言を言っていたため考える暇が省けた。


「…そういう理由があったんですか」


 一緒になってミレイも驚くが、ミレイの連れてきた子供たちは意味が理解できなかったらしい。 全員が目をパチクリとさせていて会話に参加しようとはしなかった。本当に大丈夫だろうか。


「まあいい、お前らを見た感じ使えそうにない。ミレイ以外はいらないな」


 いきなりバッサリと切り捨てるオルガ、しかし、この言葉には私は賛成である。 思考ができない者が役に立てるはずも無し、不快になるだけである。 だが、ミレイはオルガ様の言葉に納得がいかなかったのだろう顔を真っ赤にさせて叫んだ。


「ッ!? それでは約束が違うじゃないですか!!」


「はぁ? 俺は使えるかどうか判断すると言っただけだ。そして見た感じ使え無さそうだった。何か文句あるか? それとも、足手まといであるコイツらの子守をしながら旅を続けろと? 冗談でも笑えないぞ」


「そ…それは」


 落胆した表情になり、ミレイは言葉に詰まらせたが、オルガ様は構わず言葉を続ける。


「だがよ、俺も鬼じゃねぇ。先ほどメルスが言ったように物資の補給にこの村へと立ち寄った。だが、聞けば隣国は戦争中。ここを出て行っても、他の国から物資を補充できる可能性は少ないだろう」


 オルガ様の言葉に対して首をかしげる子供たち、まさか、意味が理解できていないのだろうか?


「とりあえずは俺たちは、この村を拠点に自ら物資を調達する。そして、滞在してお前らを鍛えてやる。それで使えると判断した奴だけ連れて行く。これが俺にできる最大の譲歩だ」


 先ほどまで俯き落胆していたミレイが、顔を上げオルガ様に視線を向ける。


「もしも、それで使えないと判断された子がでたらどうなるんですか?」


「どうもしねぇ。ただそいつはココに置いて行くだけだ」


「期間はどの程度と考えていますか?」


「物資が集まり次第と言っただろう。聞いてなかったのか?こんな状況だ。明確な日数は答えられないし、仮に答えたとしてもお前らはそれまでに強くなれるのか?本当に付いて行きたいと思うなら、考えるという行為を止めて鍛えればいいんだよ」


「分かりました。その条件でよろしくお願いします」


「「おねがいします」」


 ミレイと子供たちが一斉に頭を下げるのを見て、ニヤリと歪んだ表情になったオルガ様は、魔族である私でも少しだけ怖かった。


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