外出4

「私達の旅にあなた達をですか? できればご遠慮していただきたいのですが」


 メルスが否定的な言葉を返すが少女は引くことなく食い下がる。


「私がダメでしたらせめて子供たちだけでも良いんです」


 これだから正義感で動いている人間という種族は面倒なんだ。 自分はいいから子供だけとか。 そっちの方が子守もかねるから余計に手がかかるだろうに。 何も考えていないのだろうか。


「何をさせても構いません、子供たちには、ここで怯えて暮らすより外の世界で楽しく暮らしてもらいたいんです」


「そう言われましても、子供たち、というのはアナタより年下なのでしょう?どう考えても足手まといにしか、ならないと思うのですが」


「彼らも勇者の血は引いているので成人男性よりは力も強く動けます。足手まといにはならないと思います」


 間接的に、波の立たないように連れて行きたくないという表現を伝えたつもりだったのだが、やはり下等生物である人間には伝わらないようだ。 

それに、アナタも私達魔族から言わせてもらえれば非力だし十分に足手まといだ。 自分は出来ていると思っているあたり、本当に人間は面倒くさい。


「おい」


「すいませんオルガ様、きちんとお断りをしますので――」


 このやり取りを見ていたオルガ様が耐え切れなくなり声を掛けてきた。 少なくとも私はそう思いオルガ様に頭を下げたのだが、不思議と機嫌は悪そうではなかった。


「いや、そうではない。ガキ、お前名前は?」


「ミレイ=アシッドです」


「ミレイ、使えるかどうかは俺が判断する。とりあえずガキどもを連れてこい」


「はい!!ありがとうございます」


 満面の笑みを浮かべると。少女は村へと帰っていった。 オルガ様は何を考えているのだろうか、私には理解できなかったた。


「どういうつもりですかオルガ様」


「良いじゃないか、メルス。負担になったら切り捨てればいいだけだ」


 酒をあおりながら、平然と答えるオルガ様は何も考えていないように見える。 その対応に少しだけ怒りを覚え言葉を返した。


「いや、そうではなく、旅なんて設定上の話で。本当にするつもりは無いんですけど」


「丁度暇だし旅はする。ガキを連れて行く理由は、アイツらを連れていれば、向こうの方から手練れた刺客が連れ去りに来るんだろ?断る理由がねぇじゃねぇーか」


 本当にオルガ様は何も考えていなかった。 旅なんてしている余裕はない。 国の代表がいきなり消えたら魔界が混乱する。 今まで築いてきた秩序が崩壊してしまう可能性すらありうる。


「何を言っているのですかオルガ様!!旅をする余裕なんてないと言っているんです。 オルガ様が居ないと雑務ですら滞ってしまうのですよ!?」


「その辺は問題ない。ちゃんと変わりを残して調整はしておいた。これから2年は俺がいなくても大丈夫だ。当然だが、おまえの分も仕事は片づけておいた俺の付き人として一緒にいる事に問題は無い」


「へ?」


「そもそも、お前に、1週間で準備を整えろと言ったのは、俺の仕事の引継ぎや、その時抱えていた問題を解決するための時間を考慮して1週間と期間を設けたのだ。だが、まさか、お前の方が調整不足とは思わなかったぞ」


 そうだった。 ここ100年はサボりがちだったが、もともとオルガ様は恐ろしく仕事ができるお方だった。


「お前、何か失礼なこと考えてないか?」


「いえ、素直に感心しただけです。それよりオルガ様、人間界に滞在するにしても、人間をお供にするなんて本気ですか?ひ弱すぎるので害はないでしょうけど」


「構わないさ、人間の下僕も丁度ほしいと思っていたしな」


 そう言ってニヤリと笑うオルガ様は、とても悪い顔をされていた。

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