第127話 私には分かっている

「うむ。みんなどうしたんだ?フェルは正しい」


アイリス。


「フェルさんは、今回だけは正しいですよね?」


「だけって何よ?!」


リミア。

フェルが噛み付く。


一体・・・何が起きている?


・・・まさか。

フェル達は、俺の知っているフェルではない?

全然別の並行世界から、この世界に接続している・・・?


「私は、全て分かっているけどね」


フェルが胸を張る。

うわ、また見当違いの事を言う気だ。

やめてやれよ、ソフィアが真っ赤になって耳を塞いでしゃがみ込んだぞ。

警戒して戦闘の構えをしてたオトメが、武器をしまって、ごはんとお箸持って、ソフィアを覗き込んでるじゃないか。


「流石賢人、フィロ!」


フェルが歓喜の声を上げる。

そもそも、全て分かっているって何だよ。


「つまりは、浦島太郎だよ」


ほらあ、また訳の分からない・・・


「・・・なるほど」


ソフィアが、得心した様に立ち上がる。

何が?!


「・・・そういう事・・・ですか」


トキが、感心する。


・・・えええ・・・?


「つまり・・・フェル達にとっては・・・一夫一妻制が、常識なんだ」


・・・あ。


「どういう意味よ。常識・・・というか、当然でしょ?」


フェルが怪訝な声を出す。


「一夫一妻制って、何??」


レイが不思議そうに言う。


「昔の制度、だな」


サクラが言う。


「・・・今は違うのかい?」


アイリスが尋ねる。


何と言うか・・・


「人類の大半が死に・・・そして、社会の麻痺、病気の蔓延・・・その状況で・・・産めよ増やせよ、かな。モテる人の周りに異性が集まるなら、むしろ、どんどん集めた方が都合が良い。逆に、個人主義で結婚しない自由も有るからな。結婚する気が有る人達がどんどん結婚する・・・その方が、色々と都合が良いんだ」


もっとも、


「日本は、結婚の制度が残ったが。国によっては、そもそも、結婚の制度が無くなった国もある。現代社会において、決して自然な制度では無いからな」


だから、


「俺は、現実リアルではトキ、イデアと結婚していて、レイやサクラとも婚約済。こっちの世界では、それに加え、ロリア、オトメ、フィロも嫁だ」


「「「「フィロ?!言ってよ!」」」」


フェル、リミア、アイリス、ミストが叫ぶ。


なんの事はない。

転生した5人は、人類が絶望の底から這い上がる、その前の常識しかない。

言わば、常識の異なる異世界に転生した様なものなのだ。

いや、異世界に転生したんだけど。


いや、違うか。


気付いたら10年経っていた・・・正に、浦島太郎。


ちなみに、平均年齢は一気に下がり、20歳を下回る。

古い法や習慣は一掃、一方で、日々新しい技術が開発され・・・人類は、若返った。

引き篭もりの俺が言うのもなんだが、行き詰まって未来に希望が持てなかった10年前・・・

不謹慎な言い様では有るが・・・フェルのお陰で、人類は未来を得たと思う。


「真実に・・・辿り着いた様だね」


フェル達に揺らされながら、フィロがドヤ顔で言う。


「・・・私達は・・・何の為に・・・」


フェルが、疲れ果てた様子で言う。

いや、本当に、何でだったんだ?

そろそろ、目的を教えてくれよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る