第120話 トーナメント

「インターフォンはホログラムタイプ・・・玄関のレールガンは、ダブルスパイラル式で・・・」


サクラがカタログを見せながら丁寧に説明。

大丈夫だよな?

お父さん信じているぞ?

玄関のレールガンって何だ。

兵器のレールガンでは無いだろうから・・・何かパーツの名前か?


向こうでは・・・ロリアが、フレアと歓談している。

微笑ましい。


さて・・・


「ちょっと出てくるよ」


そう告げ、共有領域へと足を向ける。

幻獣ウォリプスのいる海・・・そこへと繋がるダンジョンが見つかった。

行ってみる価値はある。


--


「ただいま」


拠点へと戻った。

うん・・・敵が超強い。


オトメとロリアを召喚しても・・・いや、ロリアは姉妹水入らずですごしているから、他の面子を・・・


「お姉ちゃんいましたか?」


「いや・・・辿り着けなかった」


ははは・・・

トキが苦笑いする。


「なら、久々にフルパーティー・・・かな」


ミストが言う。


「そうだね。私も、フェルには会いたいし」


フィロが頷く。


超豪華。


「よし・・・リトライするか」


俺、ミスト、フィロ、リミア、イデア、アイリス。

それに、トキとオトメ。

まあ・・・これだけいれば、過剰戦力だろう。


--


幻想の海。

美しい光の中を・・・クジラ・・・幻獣ウォリプスが泳ぐ。


「久しぶり、ね。1人で来てくれなかったのは、マイナスポイントだけど」


「非戦闘職に無茶を言うなよ・・・」


「あら?またレンジャーをやってるの?」


ゆったりとしたローブを身に纏う・・・華奢な少女。

だが、その印象は・・・絶大な能力隠蔽の結果だろう。

実力の片鱗すら感じ取れない程の・・・圧倒的な能力差。


少女──フェルは、俺達を見回し、


「久しぶりね、親友達・・・そして、解子」


「お姉ちゃん!」


トキが駆け寄る。


感動の再会、か。


「それにしても良かったわ・・・解子、貴方が生きていて」


「うん・・・私は結局、LJOには招かれなかったから」


「そう・・・貴方を殺さずに済んだのね」


ごく自然と、その言葉は発せられた。


あ。


全員──オトメ以外全員、しまった、という顔。


「殺す・・・?」


トキが、小首を傾げる。


「ええ・・・私が魔王となって、人を殺して、殺して、殺して・・・たくさん殺したから」


フェルが、くすり、と笑う。


あああ・・・


「え・・・お姉ちゃんが・・・魔王・・・?」


「あら?誰だと思ったの?」


今度は、フェルが小首を傾げる。


「・・・トキ」


俺は、そっとトキの肩に手を置く。

トキが・・・震えている。


「貴方達の世界で、10年前・・・多くの人を殺した魔王は・・・私・・・」


トキが、膝をつく。


「悪いとは思ってるのよ?貴方に、大量殺人鬼の妹・・・そんな立場にしてしまって・・・それとも・・・例えば、魔王化したのはロリアとか・・・そんな優しい嘘があるのかしら?」


フェルが、謳うように続ける。

迂闊に飛びかかるわけにもいかないし・・・


「嘘・・・お姉ちゃんが・・・魔王・・・ロリアは・・・魔王じゃない・・・?」


フェルは、俺達を見て、


「で、私が大人しく同盟を組んだりはしない・・・それは分かっているのよね?」


「・・・ああ、そうは思うよ」


できれば大人しく組んで欲しかった。


「そうね・・・派手に、トーナメントなんてどうかしら?陣営に関係無く、好きなだけエントリーして・・・最後まで勝ち抜いた人が・・・全種族の代表・・・みんなに命令権を得る・・・とか」


うわ。

根底からルール覆してきた。


「フェル・・・お前も・・・何か望みが・・・?」


「勿論あるわ。LJOで・・・貴方に伝えられなかった事が・・・」


・・・その望みは・・・俺に関係するのか・・・


「解子・・・貴方は、優しさに恵まれたわね。みんな・・・貴方に気を遣って・・・でも、駄目よ。事実はちゃんと受け止めないと・・・ロリアにも謝らないといけないわね」


俺は、トキに肩を貸す。


「駄目よ、解子。シルビアの優しさに甘えてばかりじゃ・・・ちょっと貴方近いわよ」


俺がトキに近付きすぎているというのか。

姉としての優しさ。

だが・・・


「トキは確かにフェルの妹だが・・・今はもう、俺の妻でもある・・・だから、その指示は聞けないな」


「いえ、解子がいくらシルビアの妻で──は?」

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