第118話 望んでいない?

イデアは、アイリスを見て、


騎士王アークロードアイリス、我が親友よ。言いたい事があるのなら・・・ここは戦いの場、為すべき事は・・・言うまでもないですね?」


音も無く、刀を構える。


「・・・影王アークシャドウイデア、我が親友よ。随分久方ぶりに・・そなたと相まみえたな。良かろう・・・相手にとって、不足無し」


ゴウッ


再び、アイリスが闘気を纏う。


ぞくっ


死を感じる程の殺気、魔力、鬼力・・・

力の弱い者が、次々と気を失う。

おい、アーサー、ポラリス、起きろ。


対するイデアは、自然体。

・・・というか、相当不利。

ニンゲンと半精霊では、ステータスが段違いだ。

加えて、LJOの頃の戦法・・・影人の特性を活かした戦闘もできない。


つまり・・・

イデアは、最早昔の様には戦えない・・・


アイリスの右手に、美しい、細身の槍が現われる。

アイリスの左手に、巨大な盾が現われる。


本気中の本気。

そして・・・


ヴッ


アイリスが、消えた。

その重装備からは考えられない・・・神速の動き。

それを──


チッ


いなし、躱し・・・

イデアが、凌ぐ。


それは、巨大な台風に、ナイフ1本で立ち向かうようなもの。

しかし・・・それが、実現している。


チッチッ


光が輝く。

その圧倒的な力のぶつかりが・・・強い光を生んでいるのだ。


イデアは、アイリスと互角に戦う。

それを可能にしているのは・・・純粋な、巧さ。


イデアの武器は、豊富な攻撃手段でも、高いレベルでも、高いステータスでも、種族特性でも無い。

圧倒的な格闘センス、技術・・・


「・・・今分かりました・・・かつて、人類代表を決める戦いで、私達五王を殺し続けていたのは・・・シルビアさんではなく、イデアさんだったのですね・・・」


ソフィアが、うろんな目で言う。

俺にそんな事できる訳無いだろ。

非戦闘職をなめるな。


2人の戦いは・・・互角。

その打ち合いは、危なげない。

ちなみに、全然視認出来ない。


ザザッ


イデアとアイリスが、距離を取り、対峙する。

仕切り直し、か。


月花が手を挙げ、


「はい、イデアさんの勝利です。アイリスさん、半精霊の敗北です、残念でした」


「「「?!」」」


一同、声にならない声を上げる。

どう言う事だ?!


有効打、みたいなのを・・・イデアが撃ち込んでいたのか・・・?


「ど・・・どういう事だ、月花ちゃん・・・?!まだ勝負はついていない・・・だろう?!」


「いえ──」


月花は、困惑した様に、


「ニンゲン側は、5人全員を、ニンゲンで構成したので・・・規定により、アイリスさんが槍と盾を手にした瞬間に負けは決定していて」


あ。


アイリスが、あんぐりと口を開ける。


ぎぎぎ


イデアの方を向き、


「・・・イデア・・・キミも・・・こんな結末・・・望んでいない・・・だろう・・・?」


イデアは、しゅるしゅる、と覆面を顔に巻き、


「勝負はついたでござる」


そう告げると、ぺこり、と頭を下げた。

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