第112話 勝ち目の無い戦い

「ちょ?ちょいちょいちょい!カゲ、何やってるの?!キミも混ざっちゃ駄目だよ!」


「あ、お構い──」


「構うよ!!」


ミストがカゲを引きずる。


「頭ぁ、給水塔出来たぜ?」


「ああ・・・有難う、すぐ行くよ」


ミストは報告に来たサクラに礼を言うと、


「行ってくるよ。とにかく・・・手出し無用だからね!」


そう言って駆けて行く。

いや、サクラがナチュラルに混じってるぞ。


--


「結局、要塞を占領して、それを再利用したい・・・その考えが、戦術の幅を狭めている。私が入手した情報では、意外と上空からの攻撃には脆弱・・・つまり、ここで提案したい戦術は──」


作戦会議。

フィロがノリノリで、空中に文字やイメージを描き出す。

ちなみに、ミストはいない。


「建造した要塞を上空数キロの位置に移動させ、制御を解除。そこから自由落下した要塞が──」


ただの大岩で良いんじゃね?

あと、要塞の占拠が目的であって、破壊したら駄目だからな?


「そんな事は非人道的ですし、そもそも、建物を破壊しては駄目です。勝利条件とも異なりますし、せっかく造った物なのに・・・」


リミアのツッコミ。

リミアがいれば、おかしな方向には行くまい。


「近くの川から水を引いているようでござる。その川に毒を流せばあっさり制圧できるでござるよ?」


「だから、正々堂々と挑みましょう。実力では勝っているんです」


カゲの提案に、リミアが突っ込む。


「遠くからエーテルライフルでミスト様を狙撃してはどうでしょうか?」


「消滅させる気ですか?!」


オトメの提案を、リミアが却下。


作戦会議は続く・・・まあ、暇つぶしである。

実際には、普通に正面突破、その後半年守って終わりだろう。


元々、戦力差は絶望的。

城のギミックも全て種が割れ。

構成員の詳細ステータスも全て入手済み。


勿論、ミストは強いし、他の側近も強い。

が、こっちは圧倒的に多勢。

カゲ1人でもミストを抑えられるし、リミアの支援が加われば圧倒できる。

結局、結果は見えているのだ。


「ちょっと、夜風に当たってくるよ」


そう言うと、作戦会議をしているテントを出る。


ひゅう


そろそろ、肌寒い季節だ。

無論、常識の範囲内の温度。

氷点下200℃でも活動できるので、本当に耐えられない程寒い訳ではない。


夜の月に照らされ、


「やあ、シルビア」


「ミストか・・・混ざらないのか?」


「流石に、敵である私が混ざる訳にはいかないよ」


ミストが苦笑する。


「出てた案は・・・同規模の要塞を超高度から落とすとか」


「えっ」


「毒を流す、回避防御不可の超貫通魔法で狙撃する・・・」


「ちょ・・・と言うか、最初の、そもそも占拠行為じゃ無いよね?!」


俺は首を振ると、


「そこは発想の転換だな。壊した跡に、別の要塞を持ってくればそれで済む話だ」


「済まないよ?!」


まあ・・・


「ミスト、何故こんな条件にした?勝ち目が無いのは分かっているんだろ?」


「・・・まあね。でも・・・楽しみたいし・・・それに」


ミストが、俺を見て、


「時間が掛かれば・・・キミが、私の目的に気付くかなって」


もう一つの勝利条件、か。


六王・・・かつての友人達は・・・何を隠している?

何を望む・・・俺に、何かさせようとしているのか・・・?


思考の取っ掛かりさえ無い。


そう言えば──

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