第111話 聖職者を3名ずつ出して

「条件は悪くないけどね・・・攻城戦は、守るのも、攻めるのも、数が重要だ。私達は4種族・・・相当有利となる」


フィロが言う。


幹部を集めての会議。


「でしょ?さくっと決めちゃってよ!」


何故かついてきたミスト。

お前、帰れよ。

今は敵だろ。


「期間が1年・・・順調に専有すれば、半年くらいで決着はつきます。それでも、半年と建築期間の3ヶ月で、9ヶ月ですね」


リミアが言う。


「姉さんの魔法で、建築すれば、数日で作れないですか?」


ソフィアの提案。


「おっと、フィロの魔法が強力なのは認めるけど、それは無しだ。人数的に不利なんだ。地理的有利は確保したい」


ミストが苦笑する。


「つまり、城を放棄したふりをして、防御に罠を仕組んだりするんですね。日常的に使わない様な特定の文章を受信した途端、防衛システムが無力化する様な・・・」


「防衛システム・・・?」


オトメのボケは良く分からん。

自動防衛システムでも構築するのか?


「ここでミストに対して、シルビア殿が、こちらに有利な条件で適当に宣戦布告すれば、自動的に適用されるでござるよ?」


カゲの提案。

敵側領地であるニンゲンの領域に来ているミストは、極めて危ない状況だ。

能力は激減し、勝負を挑まれれば無条件受諾だ。


「ちょ、カゲ、君酷いね?!」


ミストが叫ぶ。


「しりとりでも仕掛ければあっさり勝負が着くにゃあ?」


「人の声真似で、口調取らないで欲しいにゃ?!」


カゲの台詞に、トキがツッコミを入れる。


「・・・カゲ・・・シルビアの従魔じゃなくなって、すっかりお茶目になったね・・・」


ミストが戸惑った様に言う。


「あ、お構いなく」


「構うよ?!」


カゲが首を振り、ミストが叫ぶ。


「やはり、聖職者を3名ずつ出して、勝敗を競うのが早くないですか?」


「うちに不利過ぎる?!」


アリスの提案に、ミストが叫ぶ。

何だか可哀想になってきた。


「・・・何だか、ミストの条件を呑んでやって良い気がしてきたよ」


「有難う!流石シルビアだね!」


ミストが、


「じゃあ、勝負は3ヵ月後。期間は1年間。城を専有する期間が長い方が勝ち・・・そして」


ミストが俺を見て、


「特別ルール。私の目的を当てられたら、大人しく負けを認めるよ」


ミストが、挑戦的な笑みを浮かべる。


・・・また目的・・・ミストもか。

背中を、汗が伝う。


結局、リミアの目的は分からずじまい。


(私が当てても良いのでしょうか?)


オトメが適当な事を言う。

お前に分かる訳無いだろう。


--


カンッカンッ


建築の音が響く。

鬼族による、城の建設。


粗野ではなく、意外と美しい建築物だ。

・・・失礼か。


ハイテク機器を組み込んだりはしないが、魔導具は組み込まれているようだ。

フィロが遠くから解析した図面と、建築中の様子を交互に見る。


「・・・うわ、完成予定図が既にバレてる。流石フィロだね・・・」


ミストが呻く。


「これでも賢人。一瞥すれば構造は想像できるからね」


フィロが苦笑いする。


「私に言って下されば、色々とギミックをおつけしますが・・・」


「オトメくん・・・だっけ?キミ、敵だよね」


ミストが困惑した様に言う。


ミストはぐっと拳を握り、


「ここは・・・鬼族だけで完成させる!絶対に手出しはしないでくれ!」


そう宣言する。


「そこ・・・もっと右でござるよ」


カゲの指示で、鬼達がレリーフをずらす。

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