第109話 キミは・・・俺の女神様だよ

「でも、実際に、アリスがおしてますよね」


ヒノコ様がゆるりと首を振ると、


「あれは詐欺の様なものだ。アリス自身は、私の名を直接呼び、力の引き出し方も上手い。一方で、リミアの方は、私の名に対して反発を覚えた結果、手足に枷がついた様な状態・・・しかも、その状況はどんどん悪化する・・・本当に、リミアは良くやってるよ」


なるほど・・・


でも、これでは、リミアが可愛そうだな。

塩を送るか。


「おーい、リミア!」


「はい、何でしょうか?」


リミアが、こちらを向く。


「ヒノコ様を信仰するんだ!そうすれば、全て上手くいくぞ」


「シルビアさん、気をしっかり持ってください?!」


リミアが泣きそうな声で叫ぶ。

・・・?


「そんな・・・シルビアさんまで・・・洗脳済・・・?」


洗脳って。


「リミア!」


フィロが叫ぶ。


「はい、フィロさん?」


「悪い事は言わない・・・ヒノコ様を・・・ヒノコ様に祈りを捧げて!」


「フィロまで?!」


青い顔で後ずさるリミア。

何でだよ。


「衆生一切がヒノコ様の信徒となる日は近いです。さあ、リミアさんも」


アリスが、邪悪な笑みを浮かべる。

いや、そんな怪しい態度をとったら、リミアが混乱するじゃないか。


「・・・許せない・・・いつか、いつか、みんなの目を覚まさせます・・・今は・・・貴方に、勝つ」


リミアが、神闘気を纏う。

そして、殺気を立ち昇らせ──


10分程粘ったけれど、リミアは負けた。


--


「我々・・・天使種族の負けです。どうか・・・どうか、他のみんなは見逃して下さい。私が、何でもします」


リミアが頭を下げる。


「いや、天使に何かを要求するつもりはない。対等な同盟を結んでくれれば良い」


俺は、リミアの肩に手を乗せる。


「そうですよ。天使全員が、ヒノコ様を信仰する事──これだけが条件です」


びくり


アリスの言葉に、リミアが青くなる。

やめい。


「何も要求しない、と言っただろ」


ややこしくすんな。


「シルビアさん・・・何故、異界の神を・・・?」


「ヒノコ様は異界の神じゃないぞ」


「嘘じゃ・・・無い・・・?」


リミアが困惑の声を漏らす。


アリスがくすり、と笑うと、


「気づいたようですね」


アリスが、リミアを見る。

引き延ばしすぎだ。


アリスが、続ける。


「看破のスキル・・・それは、コツさえ分かれば、容易に騙せる・・・そうやって、自らのスキルを過信するのを、スキルに溺れると言うのです」


「・・・!」


リミアが、愕然として膝をつく。


「違う?!リミアのスキルは正しく機能してるよ!この世界や、みんなの世界を作ったのはこの女神様、ヒノコ様だ!俺達の女神様だよ!」


「・・・そう言えば・・・確かに・・・御神・・・」


リミアが、目を見開く。

ようやく収まった、かな?


天使達がどよめき、次々に頭を垂れる。


「・・・シルビアよ」


ヒノコ様が、低い声音で言う。

やばい、この状況、楽しんでいたのか・・・?


「ヒノコは俺の女神ってのを、もう一度言ってくれ」


・・・?

言ったっけ・・・?


俺は、ヒノコ様を見据え、


「ヒノコ様は・・・俺の女神だ」


「・・・う、うむ」


ヒノコ様が頷く。

謎のやり取り。


とにかく。


「リミア、天使と、俺達の陣営、同盟を結んで欲しい」


「も、勿論です。勝負にも負け、シルビアさんの陣営に加わるのも予定通り──それに」


リミアが、ヒノコ様を見て、


「御神のおられる陣営に加わるのは、天使のことわり


ヒノコ様は、俺達の陣営じゃないからな。


天使達が、更に深々と頭を下げる。

まあ、黙っておこう。

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