第104話 遊神舞撃

ぼう


が、レイがバック転しながら距離を取り・・・その途中から、速やかに傷が癒える。


神闘気。

攻防一体の技。

秘跡の行使すら不要で、傷を癒やす。


ぺろり


ラファエルが舌なめずりをすると、


「本当に厄介な職業ですねぇ」


嬉しそうに言う。

うわ、超余裕そう。


「白虎疾駆!」


レイが光の塊を複数飛ばす。


「護りの風よ」


ラファエルが手を振ると、光の塊があっさり消失する。


ゴッ


いつの間にか後ろにまわっていたレイが、ラファエルに回し蹴り。


ざざざ


ラファエルが吹き飛び、数メートル先で地面に激突。


「やあああ!」


レイが追い打ちをかけて連撃を加えるが、


「お見事です」


ラファエルは採点する様に言うと、レイの攻撃を受け止める。


・・・やはり、厳しい。

だが、ユウタの時よりは戦いになっている。


メイド様も、ご満悦だ。


目を閉じ、ふむだの、ふみゅだの、うわ言の様に呟くが・・・機嫌は良いようだ。

聖職者同士の戦い・・・ひょっとして、酩酊感の様な快楽をもたらすのだろうか?

俺に体重をのせつつ、じっとり汗ばみ、体温も高い。


うわの空っぽいので、試しに抱き寄せ、頭を撫で・・・といった事をしているが、大人しくしている。

普段なら、激怒する筈だ。

のどを撫でると、また可愛い声を出す。


レイが距離を取り、ラファエルを見据える。

レイが纏う神闘気が、一層強くなる。


くすり


ラファエルが笑う。


秘奥義、遊神舞撃。


全身全霊をかけた一撃を繰り出す。


前提条件として、幾つかの技を使った後に、初めて使用可能になる。

全魔力と、殆どの生命力を消費。

勿論、リミアが使った所は見た事がない。

死んだら終わりのLJOにおいては、命を懸けた技だ。


当たればでかいが・・・まず当たらない。

命中補正も無いし、むしろ動きは遅くなる。

複数人のPT以外では、普通は使えない技だ。

相手の動きを止める役がいる。


シャン


レイの舞。


美しい・・・見惚れる・・・

女神様すら虜にした逸れを・・・


ラファエルは、余裕を持って見つめる。

足に、そっと力を込め──避ける気だ。


自分の力を過信せず、常に最善手を選択。

本当に強敵だ。

リミア、良く勝てたね。


レイが、舞いながら、ラファエルに迫る。


「当たれば、痛そうですねぇ」


ラファエルが微笑み、


『動くな!』


「?!」


レイが叫ぶと、一瞬ラファエルの動きが止まる。

そこに──


ゴウッ


遊神舞撃が命中。

そして・・・


ラファエルの体の半分が、吹き飛ぶ。

中心はずらしたか・・・


「癒しの奇跡よ」


ラファエルの言葉に、あっさりとラファエルの傷が完治する。

他方、レイは、渾身の力を使い果たし、倒れている。

これは・・・勝負があった。


ラファエルは微笑むと、


「お見事。まさか呪言を隠し持っているとは・・・意表を突かれたわん。お姉さんの負けにしておいてあ、げ、る」


くすくす、ラファエルが笑う。


「な・・・」


レイが驚きの声を上げる。


「それにまあ・・・うちの大将に任せれば、何の問題も無いしぃ」


ラファエルが、リミアを流し見る。

まあ、事実だ。


レイはもう戦えない・・・後は、アリスとリミアの戦い・・・

アリスは、弱くはない。

とは言え・・・ソフィアにも、遠く及ばない。

そしてその遙か上の実力、フィロ。

そのフィロと同格の・・・リミア。

その差は、歴然だ。

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