第103話 その名はラファエル

「そうですね。私は御神をお慕い申し上げておりますが」


揺らすな、見えん。


「なっ・・・お、おまっ・・・そ、そういうのは・・・ずるいぞ」


メイド様が止まる。


ぽふ


背中に抱きついてくる。

トキ達も見ているのに、やめて欲しい。

まあ、メイド様に文句を言えるのは、フィロくらいだろうけど。


ずるい?


ああ、俺が怒らせるような事を言うと予想してたんだな。

で、地球に何か天罰を下そうとしていた。

それが出来なかったから、振り上げた拳が的な。

俺だって学習するんだ。

今度こそ人的被害が出るかも知れんし。


「気になります・・・前世で何をしたら、ここまで認識が歪むのでしょうか・・・最早病気です・・・」


オトメがため息をつく。

だから、学習したって言ってるだろう。


「私の名は、ラファエル。長らく天使の長を務めていた者。お手柔らかに、ね」


ラファエルがウインク。

聞いた事が有る名前ですね。

3タテされそう。


「僕の名は、ユウタ。剣を賜りし者。御神の思し召しにより、貴方と剣を交えます」


ユウタも、最初から本気。

各種バフを、次々に詠唱する。


ダッ


仕掛けたのは、ユウタ。

風を纏って突っ込み──


「聖句、憐れみの槍は投げ下ろされて」


ゴッ


黄金色の光条が、無数に飛ぶ。

ユウタは慌てて防御、回避行動に移る。


「聖句、獣はその身を縛められ」


バッ


ユウタの手が、足が、光の縄で封じられる。


ラファエルは悠々と、しかし、一瞬でユウタに近寄り、その頬に手を添え、


「ふふ・・・お姉さんが、大人にしてあ、げ、る」


さー


ユウタが青ざめる。


「こ・・・降参します」


「?!」


ユウタが降参、ラファエルが驚きの表情を浮かべる。


「はいはい、勝負がついたので、拘束解いて下さいね〜」


月花の指示に、しぶしぶ従うラファエル。

こええ。。。

ブラフなのか、本当にこの注目度の中でコトに及ぶ気だったのか・・・


「すみません、マスター」


ユウタが謝罪するが、俺は首を振り、


「あれは、相手が悪い。強過ぎる」


これは・・・あいつが女神様の使徒で間違い無さそうだな。

リミアは、同盟のからくりを知っているのか?


「もう・・・今回の勝負、私達が勝ったら、その子を私のモノにしますからね!」


勝手な宣言をするラファエル。

何でだよ。


さて・・・これで、1勝1敗・・・


--


「よろしくお願いします!」


レイが、元気良く頭を下げる。


「あらあら、可愛い子・・・へえ、リミアさんと同じ、秘巫女なのねぇ・・・」


秘巫女。

アークビショップをも上回る秘跡を行使し・・・加えて、アークホーリーモンクを上回る格闘能力、鬼武者を上回る薙刀や刀の扱い・・・チート職業である。


そして、その職業をあっさり看破するラファエル。

リミアの出番が無いの、確定。


「始めて下さい!」


月花が宣言。


ひゅっ

ぼっ

しゅっ


レイが飛び込み、連撃を繰り出す。

レイの一撃、一撃に、青白い光が乗る。

神闘気。


魔力を気力に変え。

神気と混ぜ。

魔を滅する力を練る。


しかも、聖職者の神聖耐性すら貫く。

聖職を超えた聖職。


くすり


ラファエルは微笑むと、


「裁きの御手は降り給う」


ジャッジャッジャッ


レイを無数の光が貫く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る