第100話 何故起きたかではなく、今がどうか

エイラがきょとん、として。


「ニンゲンは、影人、エルフ、と同盟していますよね。3種族いるので、向こうは3回勝たないと勝利にならないですよね?」


何その新解釈。


「いやいや、エイラ。そんなルール無いから」


あったら良いなあ。


月花が小首を傾げ、


「種族数勝たないといけないのは、ルールに明記して有りますよね?」


「「「??!」」」


一同、驚きの表情。


改めてルールを見直すが・・・そんな記述は無い。


「あの・・・これ、影人用の告知ですが・・・エイラ様用に翻訳した物なので、文字は読めないと思いますが」


影人が紙を差し出す。

まあ、影人の言語なんて分からん。


・・・日本語じゃねーか。


「・・・確かに書いてあるな。何処で情報が変わったんだ?」


知ってる種族と知らない種族がいるのか?


「御神が作成されたルールを、影人向けの告知は私が翻訳して・・・それ以外の告知は他の人に頼んだのですが・・・その経路の何処かで手違いが生じたのでしょうか?」


月花が小首を傾げる。


パンッ


アリスが手を叩く。


「皆さん、何故起きたかではなく、今がどうか、です。幸いにも、我々は正しい情報に辿り着きました。それで良いじゃないですか」


アリスが微笑む。


アリスが続ける。


「それに・・・結果論として。私達は何度か負けられるので、安心して勝負を受ける事ができます。一方で、向こうは複数回勝たないといけない事を知らないので、最初から真剣勝負をしてくれます・・・これは、御神にとっても都合が良い状況ではないでしょうか」


確かに・・・

1回負けたら終わりと思っていたから、勝負を受けるのを躊躇していた訳だし。

何度か負けてもいいのなら、初回は相手に有利な条件でも良いか。


メイド様が微笑む。


「結論が出たようですね。ニンゲン側は、天使の提案した条件での勝負を受ける・・・そう回答して良いですね?」


おい、主催者。

あんたが回答する気か?


全部神様の手の平の上なのかなあ・・・


「んー、結局、月花ちゃんが頼んだ、もう1人の翻訳者って誰なの??」


レイが小首を傾げる。

・・・女神様が自分でやってる可能性は十分考えられるが。


「御神から預言を受け、神意を代行する使徒がいるそうです。恐らく、その方かと」


アリスの解説。

メイル・・・かと思ったが、違うのだろうか?

天使の誰かを従者としているのかも知れない。


・・・リミアじゃないだろうな?


ともかく。


とりあえず・・・第一戦は、天使族有利の、聖職者対決になった。


--


「シルビアさん、私達、天使の挑戦を受けて下さり、有難う御座います」


リミアはそう言うと、深々とお辞儀をする。

後ろに居並ぶ天使が、続いてお辞儀をする。


うわ、キラキラ光ってる。

女神様の補佐している奴はどいつだろう?

2番手、3番手に出て来るのだろうか?


勝負は、勝ち抜き戦。

代表者3人が、前に出る。


「リミア・・・キミは、同盟を選んでくれると思っていたんだけどね」


フィロが言うと、


「フィロさん・・・私にも、叶えたい願いが有るんです」


リミアが首を振る。


リミアの願い・・・何だろう?

昔から、あまり強く自分の希望を言う奴じゃ無かったからなあ。

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