第98話 立場をわきまえた発言

こほん


俺は咳払いをすると、


「リミア・・・人類の代表として話が有る」


こくり


リミアは頷くと、


「シルビアさん。言いたい事は分かっています」


リミアは微笑み、


「天使族は、ニンゲンに、宣戦布告をします。対戦方法は、代表者を5人選んでの決闘。参加資格は聖職者・・・この条件でどうでしょうか?」


「断る」


待て。

まず、俺には、争う気は無い。

支援職(自称)であるリミアであれば、同盟を持ちかけてくると思ったのだが・・・

何故、いきなり決闘になるんだ。


しかも、その条件が、こちらに著しく不利だ。

せっかく同盟をして規模を増やしたのに、代表者を選んで争うとなると、数の有利を活かせない。

その代表者の職業が聖職者、というのも、こちらに不利な条件。


リミアは意外そうな顔をすると、


「・・・代表者が3人ならよろしいでしょうか?」


「断る」


何で減るんだよ。

そこじゃない。


「俺は・・・ニンゲンは、天使族と争うつもりは無い」


「・・・!それは・・・嘘では無い・・・ですね」


リミアが驚いた様に言う。

あのなあ。


「・・・では、逆に、ニンゲン側から天使への決闘のルールの提案は有りますか?」


「いや・・・天使とは、争わず、同盟を行いたい」


まず争い自体が嫌だし、負けたら何を要求されるか分かった物じゃないし。


リミアは首を振ると、


「同盟は許されません・・・主は、各種族が死力を尽くし、争い、雌雄を決する事をお望みです」


・・・まあ、争いを見物したいからこんな事考えたんだろうけど。

でも、女神様と何度か顔をあわせているが、同盟増やしていっている事に関して、特に文句は言われていない。

というか、百柱神、すげー忙しそうだし。

新入りに業務押しつけられるとかあるのだろうか。


「とにかく・・・ニンゲンは、天使と、争うつもりは無い」


俺は、そう宣言した。


--


「・・・さて、どうしたものか・・・まさか、リミアが敵対的になるとは思わなかった」


幹部連中──従魔、トキに六英雄、ギルドメンバー、フィロ、エイラを集め、切り出す。

月花、フェリオ、メイル、メイド様も勝手に来ている。

良いのか?


「主の思し召し・・・ですか。何故そんな考えに至ったのでしょう・・・?」


メイド様がわくわくした様子を隠さずに言う。

何故でしょうね?


「リミア殿率いる天使達・・・負けた時の要求は未知数ですが、天使であればそう無茶な要求は・・・」


ソフィアが悩みながら、絞るように言う。


「まず、先に相手の要求を聞き、その後で勝負を受ける手もあるね。先に要求を出す事自体は良いんだよね?」


フィロが、月花の方を向いて尋ねる。


「はい。勝負のルールを決めるタイミングで、予め要求を決めておく事は可能だそうです」


メイド様が答える。

伝聞系だけど、決めたの貴方ですよね。


「・・・確かに、要求がおかしなものでなければ良いかも知れないが・・・その後は、対等な同盟関係になるのか?」


服従しろという要求でなければ。


「ただ・・・今がニンゲン陣営なのが、天使陣営にはなりそうだにゃあ」


トキが困ったように言う。

他種族の挑戦を受ける権利も、天使の代表者、リミアに行く、か。


「とりあえず受けてみたらどうでしょうか?」


メイド様の提案。

貴方、運営者ですよね。

うちの陣営じゃないですよね。


「メイドくん。もう少し立場をわきまえた発言をして欲しい。キミは、うちの陣営の方針に口を挟む立場じゃ無いよね」


ぴしゃり、とフィロが言う。

フィロはメイド様が女神様とは知らない。

知らないって怖い。

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