第97話 主のお導き

氷の洞窟、フェンリルネスト。

エルフの領域に存在する、レジェンドダンジョンだ。


今は吹雪は止んでおり、視界は良好。

雪原には凍った樹氷が点在し、幻想的な風景を誇っている。


丘陵に腰掛け、フィロと並んで座る。

フィロは、嬉しそうに足をぶらぶらさせている。


一応、極寒の地なのだが。

フィロの張った結界のお陰で、快適に過ごせている。


フィロと2人で、デート。


「綺麗だな」


フィロお勧めの絶景。

確かに、綺麗だ。


それにしても・・・


他種族の領域毎にダンジョンが用意されているし。

広い共通領域にも呆れるほど多数のダンジョン。

こんなにダンジョンがあるなら、踏破数稼ぐのも楽だったのに。

LJOで最後の方に攻略したダンジョンとか、難易度・・・と言うか面倒くささがおかしかったぞ?


「言いつつ、次回層へのゲートを探しているよね。攻略したいと思ってるんでしょ」


ぽふ


フィロが、頭を肩に乗せてくる。


「もう子供じゃない。ダンジョン探索だけに興味がある訳じゃないさ」


俺がそう言うと、

フィロは真っ赤になり、俯き、


「・・・ごめん。お子様は・・・私だね。せっかくの初夜なのに・・・いざとなったら恥ずかしくて・・・シルビアはその・・・もう、何度も経験済なんだよね・・・したい・・・よね」


「大丈夫、フィロ。ゆっくりで良い。こうしている時間も、楽しいからな」


いや、身体がもたないから、本当にゆっくりで良い。

そりゃ、したくないと言えば嘘になるが。


最近は、オトメまで加わった。

他の人は本気だと信じられるが・・・オトメだけは、本気なのか分からない。



びくり


フィロの手を握ると、フィロが震える。

上目遣いに俺を見ると、


にぎ、にぎ


手を握ってくる。


くすり


可愛らしい。


半ば拗ねた様なフィロを眺め、



頭に手を伸ばす。


ふわ


ふわふわの髪と、熱を持ってじっとりとした頭。


「ん・・・」


フィロは、気持ち良さそうに目を閉じた。


--


天使。

エルフも美しいが・・・天使の容姿も、芸術品の様だ。


そして・・・

目の前の天使は、他の天使と比べても頭抜けた美しさを誇っている。


天使の代表──聖王アークセイント、リミア。

影人達の報告で、会いに来たのだ。


友人とは再会したいし・・・早く同盟も結んでしまいたい。


リミアは微笑を浮かべ振り向くと、


「待っていましたよ、宝王アークトレジャーシルビア。人類の代表よ」


向こうもお見通し、か。

影人の動きに気づいていたのだろうか。


「貴方と私が此処で出会ったのは・・・主のお導き」


「えっ?!」


いや、朝女神様と会った時はそんな様子無かったけど?!

今日リミアと会うよ、ふーん、みたいな感じ。

何か調整してくれたのか・・・?


リミアが怪訝な顔をする。


「どうしました?」


「い?いや、何でもない」


と、ともかく、本題を。


「お久しぶりですね、シルビアさん」


リミアが、歩み寄り、後方に手を回す。

あたかも、久々に会った恋人同士のように。

距離、近くね?


「俺にとっては11年ぶり・・・リミアにとっては、どれくらいなんだ?」


時間の流れが同じなら、11年?


「そうですね・・・5,000年くらいですかね」


「久しぶりですね?!」


時間の流れ、違い過ぎぃ。

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