第95話 従兄弟の兄の従兄弟の父親の息子

「ふむ・・・システムアナウンスは、全種族に聞こえているのかと思っていたでござるが・・・同盟単位で制限されて流れている様でござるな。つまり、どこの種族と、どこの種族が同盟済みか、知る方法は無い、と」


カゲが頷く。


「・・・なるほど、ニンゲンは既に影人と同盟済み、と」


フィロは自信に満ちた笑みは絶やさない。

だが、額には冷や汗が見える。


ふと、フィロが気付き、


「カゲか、久し振りだね」


「あ、お構いなく」


「構うよ?!」


カゲのいつものフレーズに突っ込む。


「まあ、これで3種族、ニンゲン、影人、エルフの同盟はできた・・・今後も、この調子で同盟を増やそう」


「そうだな」


フィロのまとめに、頷く。


「姉さんは、次の同盟に関しては、どの種族が良いと思いますか?」


くすり


ソフィアの問いに、フィロは勿体ぶる様な笑みを浮かべる。

まさか、ノープランなんじゃ。


「まさかノープランなのでしょうか?」


ぴしり


フィロの表情が凍る。


「自信満々に、既に同盟済の影人との同盟が次の最善手とか主張して・・・その後も、事実と異なる推測を垂れ流し」


「事実と異なるって何かなっ?!」


オトメのツッコミに、叫ぶフィロ。


「仮説を立てれば誤り、作戦の立案もできない。影人に誘導されたとも分からず、自分達が調査に成功したと思い込む」


「誘導?!」


いや、あれは影人とカゲが有能過ぎるだけだと。


「そして、御主人様を『シルビア』と信じて疑わず」


「??!」


フィロが驚愕の表情を浮かべる。

俺だよ。


「まさか、本当に信じるとは・・・うさぁ・・・」


「ちょ・・・っていうか、ルナナっぽいラビットパフだね!」


あからさまに慌てた様子で、フィロが叫ぶ。


月花が溜息をつく。

ああ、この混沌を収拾してくれるのか。


「御主人様は、LJOで・・・今シルビアと名乗っておられる方は、御主人様の従兄弟の兄の従兄弟の父親の息子です」


「・・・そんな・・・シルビア・・・?!」


フィロが叫ぶ。

ややこしくすんな。

あと、戻ってないか?


「・・・フェル・・・」


フィロが呪詛にも似た呻きを吐き、


「何故お姉ちゃん?!」


トキが困惑した様に叫ぶ。

やばい。


「お前ら、いい加減にしろ。フィロ、俺は俺だ。LJOでは、俺と、カゲ、ソフィア、そして此処にはいないが、他に4人が生き残った。トキは、結局LJOには参加していないので、生きている」


六王・・・彼女達の時間は、11年前のあの時で止まっている。

その後何があったかは、知らないのだ。

あの時何があったかは、知っているけれど。

・・・イデアは、俺達の側だな。


「と・・・とにかく。また、献策が有れば、こちらに伺うよ。今日は・・・これで失礼する」


フィロは、何とか平静さを取り繕──取り戻し、告げる。


「私には、目的が有る・・・その為に・・・先ずはシルビア、キミの役に立つ事を証明しよう。キミの側に立つのは・・・私だけだと、分からせてあげる」


目的・・・またか。

フィロの狙いが、まったく想像できない。


*********

久々の更新です。

半年ほど、不定期な状況が続きそうです・・・

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