第93話 賢王

「・・・確かに、トキに言われなければ、気づかなかったかも知れん」


素直に認める。


「トキ?」


フィロが小首を傾げる。


「フィロさん!」


トキが駆け寄って来る。


「・・・誰かな?」


困惑した様に、フィロが言う。


「解子です」


「ゲーム外からサポートする様に言ったよね?!」


おおっと。


トキは頬をかくと、


「ゲームに危険性は認められなかったので・・・βテストにも当選したので、始めちゃいました」


言い訳する様に言う。


「・・・まあ、解子ちゃんがいれば、ソフィアと私の関係がバレるのも仕方が無いかあ・・・」


フィロが溜息をつく。


「フィロ殿」


ロリアとオトメが、くる。

少し離れた所に出現し、わざわざ歩いてきたのだろう。


「ロリアかい?久し振り、だね」


フィロが微笑む。


「フィロ様、お久しぶりです!!またお会いできて・・・恐悦至極に存じます!」


「えと・・・ごめん・・・誰・・・だろう?」


初対面だろ。

混乱させる様な事をするな。


「フィロ、こいつは──」


俺がフィロに紹介しようとしたのを遮り。


「私は、侵略的次元渡航種です!!」


「誰?!物騒な名前だね?!」


フィロが叫ぶ。

更にややこしくするな。


「こいつはオトメ、俺の従魔だ」


「はい、御主人様の従魔よめです」


「えっ」


読み方がおかしい。

オトメのいたずらに、翻弄されるフィロ。

何でやねん。

オトメの頭にチョップする。


こほん


フィロは咳払いをすると、


「シルビア。私達エルフと、ニンゲンは同盟した訳だけど・・・私は、賢王アークセージ。今後の方針に関して、提案が有る」


自信に満ちた、フィロの顔。


フィロは、重圧から解放され・・・一方で、力は増し、魂の輝きも天地を焦がす程だ。

色々あったのだろう。

時の流れも、違ったのかも知れない。


「うん・・・教えて欲しい、賢王アークセージ


まっすぐに、フィロの顔を見る。

フィロは微笑むと、


「種族同士の争い・・・これは、いかに早く、自分の陣営に数を集めるか・・・それが重要だ」


こくり。


俺は、頷く。


「私が調べたところ、参加種族は・・・ニンゲン、エルフ・・・鬼、天使、半精霊、影人・・・そして、魔族。この7種族だ」


影人の調査とも、一致している。


「キーマンとなるのは・・・影人。情報は武器だ。何とかして、影人を自陣営に引き入れる必要がある」


「そういう事か・・・」


何故フィロが、ニンゲンとの同盟を望んだか。

つまりは、それが理由だ。


影人とエルフ・・・それぞれの調査力と知識を合わせれば・・・


「つまり。次の一手は、影人への接触、そして、同盟の締結」



??!



既に同盟済ですけど?!


フィロは微笑むと、


「驚いているね。大丈夫・・・私の予想だと──」


・・・ああ、冗談かな?


「影人の代表は・・・影王アークシャドウイデア」



違いますけど?!



トキが、ロリアが、困惑した顔をしている。

ソフィアが、顔を真っ赤にして、視線を踊らせている。

オトメが、水を得た魚のような目をしている。

エルフ達は・・・陶酔した様な眼差しで、フィロを見ている。

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