第92話 悪乗り

「何かな?」


俺、今あまりレアアイテム持ってないぞ?


「私達・・・手を組まないかな?」


それは、魅力的な提案。


「魅力的な提案だが・・・対価は?」


戦いは、避けられるなら避けたい。

早く多くの種族と同盟を組めば・・・それだけ有利になる。


フィロは、再びくすり、と笑うと、


「勿論、私にも目的は有る。それは──シルビア、君の傍にいなければ、かなわない事なんだ」


・・・何か目的が有るのかあ・・・

賢人の望み・・・そんなの、推測しようが無い。


「その望みは何なんだ?」


「君に言える訳が無いだろう?女の子にそんな事を言わせる気かい?」


いや、女の子とか関係無いだろう。

全力で突っ込む。


フィロは、くるり、と顔を背け、


「私はね、後悔したんだ。裏方にまわり・・・想いを隠し・・・いや、隠してた・・・のかなあ?」


知らないよ。


「だから、もっと前向きに行動しようとは思う・・・でも、今はまだ、言えないかな」


フィロが微笑む。

く・・・まあ・・・悪巧みでは無さそう・・・か?


(むしろ分からない事が分かりません)


オトメ、混乱させる様な事は言わなくて良い。

分かってないだろ、お前も。


(シルビア殿、相変わらずですよね)


え、ロリアまで悪乗りし始めた?!


「フィロ・・・フィロが手を貸してくれるなら・・・心強いよ」


フィロは・・・エルフ族の代表。

フィロを味方に出来れば・・・3種族の連合となる。

悪くないペースの筈だ。


「うん、今後ともよろしく、ね」


フィロが手を差し出す。

そっと握り。


やわ


繊細な、フィロの手。


<ニンゲンとエルフが、戦いを放棄しました。エルフは、ニンゲンの陣営に入りました>


やや肌寒い気候の中・・・その手は少しじっとりとしている。

心なしか、少し頬も赤い。

色白のエルフだから、目立つ、といのもあるけど。

まあ、風邪を引いても、いざとなったらフィロは自分で治すだろう。


(ご主人様の頭を治すのは困難ですね)


オトメ、いきなり失礼だな?!

何でさっきから攻撃的なの?!


--


フィロと、エルフ達を連れて人間の領域に。

エルフ達は、プライドは高いが、平和的な種族の様だ。

歩く姿すら、様になる。


そして・・・

滲み出る魔力。

なるほど、ニンゲンの魔力とは比べ物にならない。

フィロのソレは、ロリアの魔力すら児戯。


(凄まじい・・・フィロ、更に強くなっていますね)


ロリアが感想を述べる。

別に、外に出ても良いんじゃね?


(ポンコツエルフをからかえると思うと、ドキドキします)


ポンコツじゃないし、からかうな。


「うさぁ」


「おや、ラビットパフかい?ウサギと言えば、LJOのルナナを思い出すね」


フィロが微笑む。

本人だからな。


「姉さん!!」


ソフィアが走ってくる。


「ソフィア・・・もう、私との関係性は明かしたんだね」


こうして見ると・・・確かに、似ている。

魂の色も、容姿も。

今は、エルフとニンゲンと言う、種族の壁が有るけど。


「・・・トキさんがバラしてしまったので、不可抗力です」


ソフィアが、つと顔を逸らす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る