第89話 生きている意味
幸い、代表だからといってあまりぐいぐい来られる訳では無いので、そこは助かっているが。
・・・まあ、レイやユウタ、トキ、ソフィアが、防波堤になってくれているんだけど。
「であれば、幽玄丘陵の辺りに行くと良いでござるよ。良い風が吹いていたでござる」
カゲの情報提供。
良い風、か。
味わってみるかな。
「有り難う、そうするよ」
幽玄丘陵へと、足を向けた。
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「動かないで下さい」
間が抜けていた。
人間の領域だと安全・・・誰がそんな事を決めた?
幽玄丘陵──霊力を持つ樹木がぱらぱらと生えるせいで、気配が察知しにくい。
その土地柄も手伝って・・・窮地に立たされている。
人間──ではない。
この感覚・・・影人。
カゲ──イデアのLJOの頃の種族であり。
カゲのギルドメンバーの多くがこの種族であった。
気配を殺す事において、他種族の追随を許さない。
種族特性として、物理攻撃を透過したり、物質を通過したり・・・
かと思えば、向こうからは普通に物理干渉してくる。
意外とSTRの値も高く──INTも高い。
戦闘と偵察と暗殺のエキスパート・・・いや、というか、隙が無い。
浮かれていた気持ちが、一瞬で冷える。
そして、冷や汗が背中を伝う。
「慎重に考えて行動して下さい──貴方の行動には、数多の命がかかっています」
既に人質を?!
温度の無い女性の声。
ただ、淡々と、目的を果たす。
俺が会った事がある影人。
あれは・・・中身は、人間だ。
そういう意味では・・・本物の影人と会うのは初めてだ。
「我々の主となって下さい。断れば・・・我々は自決します」
「何でお前等はそうなんだああああああああああああああああああああああああああ?!!」
叫ぶ。
自分の命を人質にとるんじゃねえ。
会った頃のイデアと一緒じゃねえか!!
「貴方には、我々の主となる義務が有ります」
「・・・?」
何か理由が・・・?
「まずご存知の通り・・・影人には、誰かを導く事はできません。自らを殺し、誰かに仕える事こそが、至上の幸福だからです」
「ご存知じゃねえよ」
なんで初めての異種族交流で、相手種族の情報を持ってなきゃならんのだ。
「代表を決める・・・そんな、死刑宣告にも等しい宣言・・・当然、皆、自殺を考えました」
「生きていたら良いことが有るよ!」
当然じゃねえ。
「私は・・・生前、仮初めとは言え・・・組織の代表でした。だから、少し自殺衝動が弱かった・・・そこを突かれ・・・私は・・・代表に選ばれました」
「あんた、影人の代表かよ」
他種族の領域に来るんじゃねえ。
「私には、足りない物がありました・・・魂が求める・・・私の存在理由・・・それが・・・私には欠けていたのです・・・」
「ふむ・・・?」
「この領域に来て・・・私は、それを識りました。私が産まれた意味・・・私が生きている意味・・・魂を賭けて仕えるべき相手・・・」
「・・・?」
俺・・・なのか・・・?
「
「イデアじゃねえか」
俺の所に来るんじゃねえ。
まあ、イデアが影人の王っぽいのは、分かる気はする。
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