第88話 正式サービス開始

(・・・種族レベルと、ステータスの比率が大きく違うのですよ)


ぽそり、とロリアのヒント。


・・・


ああ?!


何これ、ロリアのステータス、高すぎ?!


「・・・これは・・・ロリアの成長率が凄く高い・・・という事か?」


「違うでござるよ」


カゲが否定。

でも・・・


「かつて、LJOでは、拙者もやはり、それなりのステータスがあったでござる。が、低すぎるのでござるよ」


・・・なんだって・・・?!


「だから・・・人類は不利、という事ですね」


ソフィアが、苦し気に呟く。

そう言えば・・・全員、種族人間っぽいな。

LJOでは、多種多様だったのに。


「NLJOは、他種族もプレイする想定で作ったうさぁ。だから、キャラクターメイキングの際、自種族以外は選べない様になっているうさぁ!」


「・・・いや、もう少し、種族間の差を無くそうぜ」


何この酷いゲームバランス。


--


正式サービス開始から、2日。

大きな動きは無い。


ニンゲンの領域、多種族の領域、共通領域。

多種族の領域に入ると、大幅に力が低下する。


共通領域なら、どの種族でも、ペナルティは無い。

異種族と遭遇するなら、そこだとは思う。


実際、異種族と遭遇した人もいるらしい。


「先に何処かの種族を取り込む事ができれば、有利になります。こちらから動きますか?」


ソフィアが尋ねる。


「駄目だ。情報が少な過ぎる」


俺は、頭を振る。

数ヶ月、もしくは、年単位で待つ事も選択肢だ。


各種族代表は、他の種族代表に対し、挑戦権を持つ。

共通領域であれば、その権利は同等・・・お互いに勝負の内容に同意した場合のみ、勝負が開始される。

他の種族の領域で、その種族の代表に勝負を挑まれれば・・・拒む事ができないし、勝負の方法を決める事もできない。


つまり・・・俺は、共通領域ならまだしも、他種族の領域には行く訳にはいかない、という事だ。

・・・くそ・・・トキかソフィアに押しつけられていれば・・・


LJOの頃であれば、カゲのギルドメンバーに色々内偵させていたのだが・・・

まあ、月花から更に濃密な情報を得ていたが。


恐らく、ルナナに聞けばシステム情報を得られるのだろうが・・・

システム側は、本来、全種族平等に扱う筈。

なら、システム側の情報を引き出すのは、やるべきではないと思う。


「他の領域に潜入してこようかにゃ?」


「危険だ」


トキの提案を、却下する。

他種族の領域では、隠形の能力も、激減するのだ。


「シルビア殿、くれぐれも気をつけて欲しいでござる」


「ああ、分かっているよ。俺は人類の代表だからな」


カゲの忠告に、微笑を返す。


「いえ、妻として、夫の心配をしただけでござるよ。貴方が無事なら、人類の未来など、どうなっても構わないでござる」


「・・・お、おう」


・・・直球だな。

顔が赤くなるのを、顔を背けることで隠す。

何気ない声音で爆弾放り込むのをやめて欲しい。


「ちょっとその辺を歩いてくるよ──1人になりたい」


誤魔化し、そう言い放つ。

顔が火照っている、というのもあるが。

少し気を張って疲れた、というのもある。

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