第84話 人類の王

「・・・何・・・故・・・生きて・・・?」


ソフィアが、絞り出す様に、呻く。


「蒼き剣よ!」


ひゅっ


トキが前に掲げた手から・・・蒼白い短剣が飛び。


ソフィアが張った無数の結界を──


その速度に微塵の差も生じず、ただ、飛び──


ソフィアを貫き──


ソフィアの左半身を・・・消した。


「ひ・・・ひ・・・?!」


生物としてあり得ない光景。

断面に、蒼白い光が走り・・・あたかも、ロボットが腕をもがれたかの如く。


断面から、虚空へ、光が漏れ・・・


必死の形相で、ソフィアがその光を身体に留め──


「な──」


月花が呻き声を上げ──


「何をやってるんですかああああああああああ!このおばかああああああああああああああ!!!!」


瞬時にトキの傍に移動した月花が、トキの後頭部を蹴りつけ、転倒させた?!


「・・・正気か・・・?!霊真エーテルを使うなど・・・女神様に、自種族を滅ぼしてくれと言うような物だぞ?!盛大な自殺願望者か?!」


ロリアが涙目で叫ぶ。


・・・あ。


禁忌だっけ。


「えっと・・・想いの力・・・が・・・?」


「いや、霊真エーテルの行使は有り得んだろう」


トキの傍に行ったフェリオが、呆れた様に言う。


「立てますか?」


オトメが、ソフィアに治療を施し。

肩を貸している。


ソフィアの傷は、何とかなったようだ。

さっきの様な、おかしな状態にはなっていない。

半身が無いのには変わりが無いけど。

今は、普通に血が流れている。


「あのままでは危なかったですよ。ただの、ゲーム内の死亡ではありません。魂が・・・いえ・・・この世に存在したという記録さえ、傷ついていました。あのままでは・・・未来永劫、いえ、過去からすらも消えていたでしょう」


こええ。


がちがち・・・


ソフィアが・・・怯えている。


「さあ、トキさん」


オトメは、トキを向くと。


「今度はちゃんと、心臓か頭を撃ち抜いて下さい。これは・・・そういう戦いです」


低い声で・・・しかし。

逃げを許さぬ・・・そんな意思を込め、告げた。


「いえ、降参しますよ?!負けで良いです!すみません、許して下さい!!!」


ソフィアが、崩れ落ち、頭を地面に擦り付けた。


「にゃ・・・も、もう使わないにゃああああ?!」


トキの叫びが、世界に響いた。


--


広大な平原。

集う人々。

上空には、女神様、そして、トキとソフィアの姿が映し出され。


1位 トキ 1,980,988,237 ポイント

2位 ソフィア 1,356,321,349 ポイント

3位 シルビア 3,284 ポイント

4位 カゲ 21 ポイント


文句無しに、トキが1位。

ソフィアは、もう、トキから聞いているのだろうか?

順位入れ替えが無い事を。


「トキ・・・そして、ソフィアよ。そなた等は、本当に良く頑張った。存分に誇るが良い」


女神様の労いの言葉。

本当に丸くなったなあ、女神様。


トキとソフィアが、恭しく頭を下げる。


「それでは・・・此度の代表者選出・・・結果を発表しよう」


どよ・・・


結果は見えているのだが。

やはり、心臓が高鳴る。

世界を満たす、高揚感。


人類代表。


人類の・・・王。


「お待ち下さい、御神よ」


そっと、オトメが女神様に近づく。


あいつ、何やってるの?!

何故今?!

せめて、あと数分待てよ。

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