第83話 想いの力

「まさか、トキがここまで来るとは・・・だが、快進撃は此処までだ」


ソフィアが、淡々と告げる。


「胸を借りる、とは言いません。勝つ気で行かせて貰います」


トキが、ゆっくりと呼吸をしつつ・・・ソフィアを見る。


アーサーとポラリスが、談笑。

あいつらって、ソフィアの実力分かっているんだろうか?


「では、始めなさい」


女神様の宣言。


先に仕掛けたのは──トキ。


ソフィアに神速で迫る・・・が。


ひゅ・・・


ソフィアが掻き消える。

何とか輪郭が見えたが・・・超高速で移動したのだ。


ゴウッ


ソフィアの回し蹴り。

トキが紙一重で躱し。


続くソフィアの掌底──いや。


ゴッ


無数の火炎柱が、トキを襲う。

避け、或いは氷の魔法で相殺し・・・


ぱちん


ソフィアの鳴らした指。

それと同時に雷が迸り・・・


バヂ


「いあああああああああああ」


トキが雷に撃たれ、転倒する。


が。

転がりながらも回復の魔法を発動。

何とか膝立ちになる。


ソフィアが剣を構え。


「降参しても良いですよ。それとも──その命、散らしましょうか?」


アーサーとポラリスはぽかん、としている。

ムサシとアリスもやや驚いた感じか。

ソフィアは実力を隠すのが上手いが・・・今は、その力を余すところなく魅せつけている。


「・・・トキ、凄く強い・・・でも・・・」


レイが、戦く。

ソフィアは強すぎる。

恐らく・・・俺では勝てない。

ロリアやオトメでも怪し──いや、オトメはアレを使えば余裕か。


「にゃあ!」


トキがソフィアの周囲を回りながら・・・トキが増え・・・8人のトキが、一斉にソフィアに斬りかかり──


右横から来ているトキをソフィアが斬り上げ。

トキが鮮血を噴き出しながら吹き飛び。


「終わりです」


ソフィアが剣を掲げると。

無数の火球が出現、トキを包み込んだ。


ゴウォウ


・・・く。


あれでは助から──いや。


酷い火傷だが・・・何とか生きている。

だが、虫の息だ。


トキ、もう良い。

降参を・・・


・・・


いや。


トキの目・・・まだ・・・死んでいない。

あれは・・・背負う者の・・・目!


「もう戦闘続行は不可能だと思いますが・・・引き際が分からない訳では無かった筈ですが・・・」


ソフィアが目を細める。


「まだ・・・私を・・・信じてくれた人達が・・・だから・・・負けられません!」


トキが。

立ち上がる。


満身創痍。


腕も満足に上がらない。


「分かりました・・・次が最後です」


ソフィアは溜息をつくと。

今日、初めての詠唱を始める。


ギ・・・ギ・・・


空間が・・・悲鳴を上げる。

呪文詠唱・・・ソフィアは・・・本気だ。


「・・・あれは・・・?!」


ロリアが、驚きの声を上げる。

俺でも分かる・・・あれは・・・やばい。

戦闘している空中庭園は、女神様の結界が張ってあるが・・・

それすら突き抜け、周囲を破壊する可能性すらある。

世界が・・・悲鳴を上げている。


「・・・にゃあ!」


トキがソフィアを睨み・・・体の前で腕をクロスさせ・・・


天地開闢の炎よミタマ!」


ゴオオオオオオウ


視界が紅く光り。

熱風が吹き荒れ。

結界、仕事しろ。

爆散する世界。

五英雄とか、近かったから駄目じゃね?


ロリアが張った結界が、俺達を保護してくれている。

トキは・・・


・・・


?!


トキを覆う・・・


「・・・私は・・・負けない・・・私の全ての経験と・・・みんなの想いが・・・!」


いや。

そりゃ、経験してたけど。


それ、使っちゃ駄目だろ。

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