第81話 開かない扉

「あれが霊真エーテルの力です。魔力だろうが、武器だろうが、あたったら霧散する運命です」


オトメが、警告する。


霊真極波動砲エーテルバスター!!」


ゴウッ


オトメが巨大な銃から放った光。

王種を貫き──貫かれた所から破れるように崩壊、何も無くなった。


「消えた?!」


霊真エーテルにより、魂の容貌かたちが傷付いたのです。存在を維持できなくなるのは必然」


オトメが低い声で答える。


「アレを一撃とは・・・オトメ、と言ったか。なかなかの力だな」


女神様が目を見開く。


ガッ


壁から飛び出した龍樹が、女神様に迫る。

女神様が迎撃するより早く──


カゲが蹴りつけ、龍樹を飛ばす。

龍樹が纏う蒼白い光が、壁を豆腐の様に分解する?!


カゲを見ると、足に気持ち悪くなるくらいの魔力が渦巻いている。


「・・・霊真エーテルによる存在崩壊を上回る速度で魔力を凝集しているのか・・・凄まじい力とセンスだが、最早気持ち悪いレベルだな」


女神様が呆れた様に言う。

カゲが少し寂しそうにする。

酷い言い様だ。


「いや、悪かった。御礼にポイントを付与しようか」


「いえ、気持ち悪い方向でお願いするでござる」


慌ててフォローしようとした女神様を、カゲが押し止める。


「うさああああ」


ルナナの無数の烈光。


理の槍よルーンスピア!!」


メイルの魔力槍。


炎の裁きよカグヅチ!」


月花の火炎魔法。


氷狼の庭フェリオ!」


フェリオの氷魔法。

おい。


ギジジ・・・


空間が悲鳴を上げつつ、力が龍樹に迫る。

が、龍樹の張った壁に遮られて消える。

霊真エーテルの力って、チート過ぎないか・・・?

と言うか、カゲのさっきの蹴り、これより凄かったのか?


俺の従魔では無くなった存在達・・・その力は、ますます増している様に見えるが・・・


「うさあ?!」


ルナナが抗議の声を上げる。

ああ、すまん、ルナナは今も従魔だな。


「流石、騎士種・・・」


オトメが唸る。


「先程の蹴りには驚いたが・・・打つ手は無いようだな」


騎士種がカサカサと体を揺すり。


「とにかく進むぞ」


女神様が手を振ると、3本程の蒼白い光が伸び。

騎士種を貫き、そのまま消失させる。


?!


女神様、戦えたのか?!


「・・・心の中が読めないが、キミ、今失礼な事を考えなかったか?」


女神様が半眼で尋ねる。


「いえ、決して」


こええ。


それ以降、騎士種は出る事が無く。

やがて、扉の前で止まり、


「この先ですね・・・ただ・・・」


オトメが困った様に言う。


「世界の存在と意味を重ね、扉を閉じる概念を強化しているな。扉の破壊も、壁の破壊も、困難か・・・」


女神様が、苛立ちを滲ませ、言う。


「扉を開けるのに力を使い果たせば、中にいる女王種に狙い撃ちされる可能性が」


オトメが思案気に言う。


「?」


月花が不思議そうに首を傾げる。


「どうした、月花よ?」


女神様が月花に尋ねる。


「開かない扉に何か問題が有るのですか?」


月花が不思議そうに尋ねる。


「開かなければ、無理矢理開く事になりますが、少々面倒だという話ですよ」


オトメの解説。

開ければ良いんだよな?


ガチャリ


話が長くなりそうだから、とりあえず扉の鍵だけ外しておく。


「「??!」」


オトメと女神様が面白い顔をする。

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