第79話 禁忌

「まず、霊真エーテルとは何か・・・から、説明した方が良さそうですね。霊真エーテルとは、世界や魂、型容ありかた、あらゆる物の基礎となります・・・そして・・・次元渡航・・・空間断裂、外域での保護や、移動も、霊真エーテルによって行います。つまり、次元渡航種は、霊真エーテルの扱いに長けているのです」


「・・・なるほど」


言われてみればしっくり来る。


(なるほど・・・被造物が霊真エーテルの研究をするのが禁忌なのは、その辺りが理由ですか・・・)


ロリアが、苦々し気に言う。


ジッ


眼の前の巨大な壁に、裂け目が現れ・・・広がり・・・何とか通れる程度の穴が開いた。


「・・・本当に開けられるとは。有り難い。行こうか」


女神様を先頭に、壁の向こう側へと潜入した。


--


浮遊する大地群。

液体の塊。

球体状の樹木が、大地を『食べて』いく。

残渣から、存在力を抽出、霊真エーテルに変えているらしい。


ぶわっ


別の浮遊樹木が、無数の樹木を吐き出す。

中には、特に力の強い原住民や魂が捕らえられ、今も・・・


女王種を全滅させ、世界の核を破壊・・・それが、今回の作戦内容だ。

世界の記録すら喰われ、最早再生すらできない。


「・・・我々の世界が、まだ幸福だったとすら思えます」


ロリアが、吐き気を隠さずに言う。


浮遊要塞。

樹木が連なってできたそれが、敵の本営。

オトメの探査の結果、まだ次期女王種は生まれていないらしい。

そして、女神様の話によれば、浮遊要塞の中に世界の核も有るらしい。


「此処までは気づかれずに来たが、要塞内はそうもいかない。十分に気をつけよ」


女神様が、皆を見回し、言う。


「兵種や、雑種はともかく。騎士種と王種、女王種には注意して下さい。霊真エーテルを扱えます」


オトメが警告する。

霊真エーテル系列の攻撃・・・強いんだろうなあ。


「・・・来るでござる」


カゲの警告。


『誰だ』


頭に響く様な、声。

いまいち方向は掴み辛いが、恐らくあのもじゃもじゃの茂み。


「敵の雑種ですね」


オトメが告げる。


「・・・この規模の巣で、見張りがいるとは・・・注意せねばならんな」


女神様が言う。

とりあえず、倒すか。


ひゅっ


俺は飛び上がると、見張り向かって矢を放つ。

見張りは──


ふぉん


避けた?!


『そこか!』


一瞬で俺の目の前に──


ごっ


カゲが蹴り飛ばし、雑種が地面にめり込む。

危ねえ。


「シルビア殿、下がっていて下さい」


ロリアが叫ぶ。

一応、速度には自信があったんだが。

全然動きを追えなかった。


「雑種や兵種でも、十分に脅威となる強さです。気をつけて下さい」


オトメの警告。


・・・今の俺は、LJOの頃とは比べ物にならないくらい弱い。

あの頃なら・・・いや、従魔が戦って、俺は戦って無かったな。


「にゃ・・・むしろ、シルビアさんの姿も見えなかったにゃ・・・?」


「何とかレベルを上げるしか・・・無いな・・・」


女王種との遭遇までに、どれだけレベルを上げられるか・・・


ガッ


地面から生えてきた根が、俺に向かって伸び。

ロリアが掴み、引き摺り出すと、もう一方の手から炎を放ち、消し炭にする。


「シルビアさんは、私が護ります」


ロリアがそう宣言した。

・・・格好悪いな。

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