第73話 理論と効率

「にゃ」


じっ


熱線が、ポラリスを貫く。

詠唱破棄からの、火と光の混合魔法。


ポラリスや取り巻きが反応するより早く、


「にゃあ」


じじっ


光が次々とポラリスを貫き・・・


ふつふつ


光が突き刺さった地面が溶け、沸騰している。

非破壊オブジェクトなんですけど。


ひゅ


トキが駆け抜け、その手には8個の宝石。


ふぉん・・・


ポラリス達の体が消える・・・退場となったのだ。


「トキさんって、魔法も強いんですね」


エレノアが、驚いた様に言う。


「そうでも無いにゃあ?」


恐らく、純粋な魔法戦では、レベル差でソフィアに軍配が上がると思うが。

やりようによっては、トキが勝つ可能性もある。


トキは、教えた事はすぐ吸収する。

加えて、自分でも理論を組み立て、応用までする。

最近は、色々と教えられる事も多い。


一方、直感やセンスも抜群で、純粋な戦闘技術も極めて高い。

流石、六王である、フェルの妹・・・


いや。


トキ自身、六王の1人と数えても遜色が無い。

LJOを、外からサポートし続けた英雄・・・


トキは、十分に勝算をもって動いているし。

ソフィアも、それが分かっているから勝負を受けたのだ。

まあ、仮にトキが人類代表になった場合でも、トキ自身が代表に相応しい人物なので、安心できる・・・というのも理由の1つだろうが。


「この調子なら、他の五英雄も倒せるかなあ?」


レイが思案気に言う。


「にゃ、五英雄はほっとくにゃ?」


「えっ?!」


「にゃあ。このゲームは、1人が1個の宝石を持ち・・・その数の多さを競う・・・つまり、取得に苦労する、強者の宝石は狙うべきじゃないにゃ。その他大勢の、取りやすい物を狙うべきにゃ。勿論、終盤になって、かなり多く溜め込んでいるなら、選択肢には入ると思うけどにゃあ」


トキは、理論と効率、可能性のみを見て、作戦を立てる。

感情論や、達成感は不要だ。


「散開して、各自、慎重に宝石を集めていくか・・・集団で慎重に移動して、少しずつ狩るか・・・だな。情報が欲しいな」


LJOの頃は、イデアのギルドメンバーが手足の様に動いていたから、情報の取得は容易だった。

システム周りは月花が教えてくれていたしな。

本当に恵まれていたと思う。


「取り敢えず・・・一旦散開・・・かにゃ」


トキはそう宣言した。


--


忍ぶ。


風に紛れ、移動。


標的を発見・・・弓を引き絞り・・・


ひゅ


標的の足を射貫く。


「誰?!」


誰何の声。

どちらを見ている?

背後から近付き・・・


ひゅっ


宝石を奪う。


ちなみに、宝石は、服の中に入れる事はできない。

取るときにハラスメントになるからだ。

手に持つか、袋に入れて吊り下げるか、だ。

不透明な袋に入れても、光って中に宝石が入っている事が分かる様になっている。


「しまっ・・・」


強制退場。

プレイヤーの姿がかき消える。


PKすれば、宝石だけ落ちるから、その方が早い事は早いが。

以前、長くデスゲームにいた事もあり・・・PKするのには少し抵抗がある。

必要であればするが、今は必要ではない。


20個。

気配で探り、襲撃からの強奪。

地味にフィールドが広いし、気配を隠せる奴は隠せるし・・・かなり面倒だ。


どごーん


大爆発。

ああやって大量殺戮からの大量収集だろうか。

PKを気にしなければ、派手にやった方が効率は良さそうだ。

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