第68話 貴方こそ我が王

いや、流石に人類滅ぼされると困る。


「も、申し訳ありませんでした、女神様!!」


「?!」


トキと、オトメが、驚いた様にメイド様を見る。


「勝手に、人を悪役にしないでくれ。追加の試練なぞ、与えていない。それは信じよ。そうそう簡単に、世界を滅ぼす訳がなかろう」


(・・・・)


ロリアが何か言いたげに、口を動かす。

ロリアの世界、滅ぼされた上に、人類への試練として再利用されたもんな。


「・・・女神・・・様・・・?」


トキが、呆然と呟く。


「ああ、そなたは・・・シルビアの婚約者であるな。結婚式の招待、感謝する。勿論、両日出席させて貰うぞ」


穏やかな微笑みを浮かべる。


来るんだ。

しかも、現実リアルの方も来るんだ。


とにかく・・・


「ソフィア、問題は解決しただろ?人類代表、とやらは任せるが、良いな?」


「人類代表・・・今イベントでやっている、NLJOの代表ですよね。分かりました。今回、勘違いで失礼な事も申しましたので・・・その役目、引き受けます」


ソフィアなら、今から追い上げて1位になるのは余裕だろうな。


「良いのうさぁ?」


「・・・ソフィアは優秀だぞ?それに、人類代表と言っても、具体的に何か有る訳でもないだろう」


「私にお任せ下さい。シルビア殿に代わり、張りぼてとして振る舞うのは、慣れております」


ソフィアが、微笑む。


「うさぁ、人類代表をソフィアとして、異種族との競争に勝ち抜く・・・その覚悟が有るなら止めないうさぁ。負けた種族は、勝った種族に、絶対服従うさぁ」


・・・何・・・だと・・・


メイド様が、そっと顔を背ける。


トキと、ソフィアが、青ざめた顔で俺を見る。

うん。


「頑張れよ、ソフィア」


俺は、淡々と告げた。


--


「シルビア殿おおおおおお、ポイントを受け取ってされええええええええ!」


アーサーが、爆走してくる。

・・・ち、まいたと思ったのに・・・。


「シルビアさん!!お願いしますううう!」


別方向から、ポラリスが来る。

くそ、こいつら、下手にレベルが高いから、地味に追い詰められる。


人類代表が、続く異種族混合孤独の際のリーダー、と判明してから。

やたらと俺にポイントを取らせようとする奴が増えた。


ギルドメンバーやカゲですら、控え目ではあるものの、俺が代表になるのを望んでいるようだ。


「シルビア殿」


す・・・


物陰から現れたのは、ソフィア。

俺を代表にしたい派の急先鋒だ。


「お願いします・・・人類を見捨てないで下さい。人類は・・・貴方を・・・英雄を必要としているんです」


「いや・・・本人の意思を尊重しようぜ。代表なんて、やりたい奴がやれば良いだろう。で、代表がやった結果は、みんなで責任を取る。それで良いじゃないか。代表になる奴が信用できなければ、お前がやれ」


ソフィアは首を振り、


「人類への命令権すら生温い・・・永遠なる他種族への隷属ですよ・・・?!」


「うさぁ?命令権は、『1回だけ』うさぁ?嘘をついて話を有利にするのは卑怯うさぁ」


「どうしてそんな卑怯な事ができるんでしょうか?血も涙もないのでしょうか?気になります・・・!」


「まじかよ、お前、最低だな」


ルナナ、オトメ、俺がソフィアに言い放つ。


「・・・い、1回ですか・・・そ、それなら・・・」


ソフィアが、困惑と安堵の色を浮かべつつ後退し・・・


「・・・いや、『永久に我が種族に絶対服従せよ』とか言えば、ソフィア殿の言った状況になるのでは?」


ロリアがいらん事を言う。


「ああああああああ、シルビア殿おおおおお」


ソフィアがボロボロ涙を流し、マジ泣きする。

いや、相手種族の代表者を信じてやろうぜ。


たんっ


打ちひしがれるアーサーの上ががら空きだったので、包囲網を突破。


「ともかく・・・ゲームくらい、自由にやらせてくれ。最近は多忙なんだ」


結婚、って、結構面倒臭い。


--


無事結婚式は終わった。

トキは、彼女から奥さんに。


NLJO内の結婚式は、トキと・・・それと、ロリアも俺の伴侶となった。


ちなみに、女神様は、言葉通り、現実リアルにも参加していた。

何気に、降臨するのは、世界創造以来、初めてらしい。


ほぼ身内しか呼んでいない、簡素なものだ。

五英雄達は、結婚式の度にひたすら派手だったが。


トキが、ワインを運んでくる。

傍らにはロリア。

ギルドメンバーや、カゲも傍で雑談している。


尚、ロリアは、地味に胸が縮んだ。

勝手に参列していた梟が、事象の固定化と隔離・・・?とかいうのを行い、魔族としての姿を、独立した形骸かたちとして定義云々。

良く分からないが、近似した姿になろうとすると、そちらが現出ロードされる様になったから、らしい。

簡単に言えば、もとの形態が、スライム型と、人型の、2つになったらしい。


胸を偽装できなくなったけど、本人は泣いて喜んでいた。

本当の姿が不定形、っていうのは、落ち着かないのだろうな。


「シルビア殿・・・今日こそは・・・!」


ソフィアが、やや久しぶりに語気を荒くしている。

一応、ソフィアも結婚式には招待していたのだが。

流石に空気を読んで、俺に代表を迫るのは控えていた。

終わったから、解禁らしい。


トキ、ギルドメンバー、カゲは、もう諦めてくれたのだが・・・


尚、現在の最高得点者はソフィア。

ソフィアの点数を受け取ってしまえば、俺がトップになってしまう。


まあ、同意さえしなければ・・・


「いい加減、諦めてくれ。俺は・・・人類代表なんて、器じゃない」


サポートくらいならしてやるが。


「いいえ・・・受け取って貰いますよ・・・私のプレイヤースキル、『貴方こそ我が王ポイポイポイント』で・・・!」


「何それ?!」


おかしい。

何その、用途が限られたスキル。

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