第67話 水と火と地面

「俺とトキは、運命共同体だ。それを知らない訳では無いんだろ?」


「知らないですけど?!何時の間に・・・?」


今度はソフィアが驚愕の表情を作る。

最近有名だと思ったんだがなあ?


トキが、嬉しそうに、俺の腕に顔を埋める。


「・・・とにかく、トキは席を外して下さい」


「・・・俺が後からトキに伝えれば一緒だと思うが・・・」


「それでも構いません・・・トキ、頼む・・・」


「にゃあ・・・」


トキが俺を見ると、


「シルビアさん・・・何かあったら・・・大声で呼ぶにゃあ?」


「・・・正直、ソフィアが俺をどうこうしようと思ったら、俺もトキも敵わないとは思うが・・・」


カゲなら勝てるが。


トキが立ち去る。

ソフィアは、メイド様を見て、


「・・・あの・・・メイドさん・・・?も、席を外して頂けますか?」


様をつけろよ。

あと、勇気有りすぎじゃね?

蛮勇と言うべきか。


「シルビアさん・・・私も席を外しておきますね?」


「御願いします」


頭を下げる。

いや、多分、少々離れたところで、ちゃんと話は聞こえると思うけど。


ソフィアが、一瞬、訝しげな顔をする。


「すみません、どうしても内密にお話したくて・・・」


「・・・聞こうか」


エリアちゃん、何したんだ?


「実は・・・女神様の試練は・・・終わっていなかったのです・・・」


・・・ん?


「私達は・・・五英雄と、トキは・・・」


・・・まさか・・・


「悪魔と戦い続けてきました」


それな。


「悪魔とは・・・人類に課された試練・・・その人間界での表の名は・・・」


ソフィアは、真剣な表情で・・・その名を口にする。


「夢守商事」


「それな」


「・・・やはりご存知でしたか」


「いや、ご存知というか・・・」


俺は、一呼吸置き、


「・・・トキから連絡が行ってないのか?女神の試練が続いている云々は、完全な勘違いだぞ?夢守商事はカゲの会社。副社長は俺だ」


「・・・な・・・何です・・・と・・・?」


ソフィアが、顔芸をしながら、後ずさる。


「・・・ひょっとして・・・トキが悪魔・・・もとい・・・夢守商事の副社長と婚約を決めたり、ワンやマイマイが夢守商事に関わっているのは・・・」


「いや、普通に、俺だからだな。・・・というか、トキから連絡が行ってなかったのか?」


(・・・思ったより浮かれているのでしょうね)


ロリアが、呆れ気味に言う。


「では・・・多くの分野で夢守商事のシェアが一気に伸び、9割以上のシェアを奪う・・・そんな事が多発しているのも・・・」


「ちょっと待て」


初耳だ。


「・・・それには関与していないと・・・?」


「いや、すまん。娘やワン達に、経営を任せて放置していたんだが・・・多分、やったんだろうな」


後で確認しておこう。

うちの会社の存在理由は、あくまで、寡占を防ぐ為の投石目的であって、うちがシェアを独占しては意味が無い。


「・・・ああ、ワンがそちらに取り込まれたのは把握していましたが・・・あの娘のせいですか」


「そんな訳だ。女神様の試練なんてものはもう無いし、悪魔なんて存在しない」


いや、いるけど、とりあえず地球にはいない、筈。


ソフィアは、少し考え込むと、


「確かに・・・夢守商事の件は、私の勘違いでした・・・ですが・・・私は、信じています。御神は・・・必ず・・・次の矢を撃っています」


あのなあ。


「何もしてないですよ?」


メイド様がいつの間にか戻ってきて、否定する。


「メイド・・・来るな、と言ったでしょう?」


ソフィアが、怒気を孕んだ声を出す。

やや大きめの声だ。


お前、何やってんのおおおおおお?!

俺はドキドキだよ。


「お、おい・・・ソフィア?」


「何でしょうか?」


ソフィアが、困惑した様な声を出す。


「お前・・・会った事・・・有るだろ?」


「誰と、ですか?」


えええ・・・


「どうしたにゃあ?」


トキが、駆けて来る。


「・・・トキ、貴方・・・私に報告する事があったんじゃ無いんですか・・・?夢守商事の動画を追いかけていて・・・そのまま連絡が途絶えて・・・」


「あ・・・しまったにゃ、つい」


いや、それよりだな。


「うさぁ・・・ソフィアのせいで人類は滅びるのか、うさぁ」


「・・・私のせいで・・・何を言って・・・?」


ごく自然に、穏やかに笑うメイド様。

ソフィアが、メイド様を見て・・・固まる。


がたん


尻餅をつき・・・口から、目から・・・下からも?液体を漏らし。

顔は固まり、震え・・・


「・・・ソフィア、どうしたにゃ?」


トキが、真剣な声音で問いかける。


「水と、火と、地面・・・どれが良いか?」


メイド様がにこにこしながら尋ねる。


「水・・・洪水・・・火・・・火山の噴火でしょうか・・・地は・・・地震・・・?人類の有終の美・・・隕石衝突の天は無いのでしょうか?気になります・・・!」


オトメが叫ぶ。


「あ・・・あ・・・」


「ど、どういう状況にゃあ??!」

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