第69話 若い企業

「・・・では、こうしましょう。私とシルビア殿が戦い・・・負けた方が人類の代表になる、というのはどうでしょうか?」


「ふざけるな。負けた方が代表というのはおかしいし、俺がお前に勝てる訳が無いだろう」


魔法禁止にしても瞬殺されるわ。


「ではやはり、スキルで移すしか」


・・・く・・・


「待って下さい」


前に進み出たのは、俺にぺたっとくっついていた、トキ。

俺を庇う様に、前に立ち。


「私が、ソフィアと戦います。私が負けたら、私が代表に。ソフィアが負けたら、ソフィアが代表に。それでどうですか?」


ソフィアは、一瞬考えると、


「それで構いません・・・ですが・・・」


ソフィアは俺を見ると、


「まず、シルビア殿から、他者へのポイントの移動は、禁止して下さい。シルビア殿は、余りにも存在が大き過ぎる・・・シルビア殿、私、トキさん、カゲ殿・・・この4名は、他者にポイントを渡せないルールとして下さい」


ちょ。


「いや、して下さいって・・・そんな事、出来る訳が無いだろう」


「構わないよ」


答えたのは・・・女神様。

ソフィアとトキ、俺、カゲが、恭しく跪く。

様子を察し、サクラ、レイ、ユウタ、エレノアも跪く。


「その4名は、他者にポイントを譲渡できないものとする。そして、トキとソフィアがトップ争いとなった場合は、その順番を入れ替える事とする。それで良いな?」


「有難う御座います」


ソフィアが、謝辞を述べる。

むう。


「では、私達はがんがん稼いで、トキ様にポイントを渡しますね!」


「待って下さい」


おい、オトメ、いらん事を言うな。

ソフィアは、オトメの言葉を遮ると、


「従魔が稼いだポイントは、自動的に主人のポイントとなる・・・そのルールも追加して頂けますか?従魔が代表になるのはおかしいでしょう?」


「うむ、構わない。従魔が稼いだポイントは、主人のポイントとする」


「オトメショーック?!」


いや、お前、絶対狙って言っただろ。


「我が従魔に命ずる。ポイントを稼ぐな」


「ぐうううぐふううううう?!」

「うさあああああああああああ?!」


オトメとルナナが転げ回る。

凄い効き目だな?!


「・・・どうしたのだ、2人とも・・・?特に何とも無いのだが・・・?」


ロリアが、困惑した様な声を出す。


「・・・うさぁ・・・ポイントを稼ごうとしたら、激しい束縛を感じるうさぁ・・・」


「・・・やっぱり、俺のポイント増やしまくる気だったのか」


危ねえ。

まあ、オトメは宣言していたが。

ロリアは、俺を代表者に押し上げる気は無いのだろう。


トキが代表者になれば、身内でもある俺は、全力で支援する。

ソフィアがトキの提案を受け入れた理由の1つは、それ。

アーサーやポラリスも、納得するだろう。


「よろしくお願いしますね」


「負けないにゃあ」


ソフィアと、トキが、微笑みあう。

まあ、悪くない展開だろう。


ソフィアが去り、


「うさぁ、『貴方こそ我が王ポイポイポイント』なんて、使い道が限定されたスキルは存在しないうさぁ」


・・・何・・・だと・・・


「うむ、無いな」

「無いですね」


女神様と、月花。

はめられた?!


「・・・まあ、私が勝てば良いだけの話にゃ」


トキは、そう呟いた。


--


「いや、追い詰めるんじゃなく・・・そこは共存共栄というか、だな」


「スクラップ・アンド・ビルドだよ!ディマンドを正しくソルブしてるから、ブルーオーシャンだけど・・・すぐに赤くなるから、そうなれば競争も生まれるよ!」


分からん。


レイとサクラが、ちょっと頑張りすぎていて、うちの会社の品以外が店の棚から消えつつある。

流石にやばいので、ストップをかけている。


レイが最近、良く分からないワードを使う様になってきた。


「とにかく、他の会社が育たないのはまずい。同等の力の企業が複数いて、競争して・・・それで初めて、健全な自立と言える」


まあ、五英雄の影響がほぼ無くなったのは、良い傾向ではある。


「大丈夫だって。実際、残りのシェアは、新興企業が幾つも台頭しているし・・・幾つかの分野では、むしろうちが負けている分野も増えてきた」


サクラが笑いながら言う。


「そうなのか・・・それは良い傾向だな。新興企業・・・ここ最近できた企業か?」


「はい、ここ1年程で、優れた企業がたくさんできました。若い企業ですよ・・・社長が10歳とか、それ以下の企業も」


「若過ぎるな」


ユウタにツッコミを入れる。

最近、若い世代で、異常な才能を持つ者が現れている。

別に超能力とかが有る訳では無いが、俺達は最早、旧人類と言っていい。

サクラ、レイ、ユウタ、エレノア・・・皆、リアルでも相当な才能を示している。


「にゃ・・・にゃ・・・」


トキが、ぶつぶつ言いながら、何かをノートに書き留めている。


バタン!


何かを押し開け、駆け込んできたのは・・・ポラリス。


お気に入りの湖畔、扉なぞ無いのだが・・・演出、だろう。


「トキ!!貴方、いい加減にして下さい!」


「にゃ?」


「トキよ、やる気が有るのか?!」


「・・・にゃあ?」


ポラリス、アーサーに怒鳴られ、トキが小首を傾げる。


「貴方が何故シルビアさんに選ばれたのか分かりませんが・・・選ばれたからには、努力したらどうですの?!昔から気に入らない点は有りましたが・・・今の腑抜けた貴方は、もっと醜いですわ!」


「・・・え、何だか気に入らない点があったにゃ・・・?」


困惑した様な声を出すと、くてっと俺にもたれかかる。


「きいいいいいいい!シルビアさんに近づき過ぎですわあああああああああ!」


「・・・何の話だ?」


何か、俺に近付く事でルール違反とかがあったっけ?

別段、そんなイベントは無い筈だが。

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