第63話 地味に高スペック

俺も、解子も、気づき、黙る。


「何故そんな事を聞くのでしょうか・・・意図が分かりません・・・本気で分からなかったのなら、何故分からなかったのか気になります・・・」


オトメが困惑した様に言う。

畜生。


・・・とにかく。


「オトメが現実こっちに来れた理由は分かった。あまり、人目にはつかないようにな・・・」


「私が意図的に視せない限り、神ですら認識できません。安心して下さい」


・・・地味に高スペック。


--


オトメとのやり取りでグダグダになったのと・・・正直、水族館が微妙だったので、帰宅。

ついでに、手料理を振る舞ってくれるらしいので、解子の家に。


呼んでおいた桜花と、解子と一緒に住んでいる零美──レイの本名だ──もいる。


「ますたああああ!解子さんも、おかえりなさい!」


零美が、元気良く飛んでくる。


零美は、少し髪の色が薄く、ショートカットだ。

年齢相応・・・少し小さい?

凄く可愛い顔をしている。


桜花は、零美よりは濃い髪。

髪を長く伸ばしており、大人しい雰囲気。

顔立ちは綺麗な印象で・・・何気に、零美より胸が大きい。


(零美の零は、胸がゼロとか、酷い事を言いますね)


言ってないし、口に出すなよ。


(そうですよね。まだ成長の余地はありますし、解子さんより胸が大きいですしね)


口に出すなよ。


「ただいま、零美」


解子が、零美の頭を撫でる。


「お父さん、水族館どうでした?」


「・・・魚がいたよ」


あれはあれで、学術的に必要なのだろうけど。

見る側としては、正直微妙だ。

まあ、その分、解子の可愛さを堪能できたのだけど。


「では、食事を準備しますね・・・期待しないで下さいね?」


「ますた、ますた!いっぱい期待して良いよ!解子さん、凄く料理上手なんだから!」


「ハードルを上げないで?!」


解子が、零美をがくがく揺らす。


「期待せず待ってます」


桜花が淡々と言う。

こら。


それにしても・・・感じの良い家だな。

高級品で飾られている訳でもなく、一般的な品ばかりだが・・・配置と組み合わせが絶妙で、居心地が良い。

解子のセンスが良いのか、零美のセンスなのか。


桜花、零美と雑談する事しばし、解子が料理を運んでくる。


御飯にお味噌汁、サラダの上に唐揚げ、煮物・・・


いかにも家庭料理、といった感じの料理。

桜花や夢守も、同じく、家庭料理をよく作る。


「お口に合うか分かりませんが・・・」


「いや、凄く美味しそうだよ。うん・・・良い匂い」


唐揚げを、ぱくり、と一口。


・・・


?!


パリパリの衣・・・溢れ出る肉汁・・・しかし、火傷しない程度の温度を保ち・・・

味付けも絶妙・・・これは・・・美味い?!


味噌汁を飲んだ桜花が、その姿勢のまま固まる。

・・・多分、美味しかったんだな。


「どう、解子さん、凄く料理上手いでしょ!」


「・・・確かに・・・驚いたよ」


「お口にあって良かったです」


解子が、微笑む。

いや・・・これは美味い・・・

唐揚げ以外も、全部・・・御飯までも、非常に美味い。

桜花や夢守も相当料理が上手いが・・・解子のこれは、一線を画している。


率直な感想を告げる。


「これは・・・毎日、解子さんの料理が食べたいな」


「・・・はい」


解子が、俯いて頷く。

はい?


最後には、デザートまで出てきた。


女神様が振る舞った神酒とは違い、意識が持って行かれる事は無いが。

至上の美味で・・・しかも、ほっとする様な味だった。

料理が上手い、というのは事実だったようだ。


--


今日は遅くなったので、泊めて貰えることになった。

解子の番は最後だったので、談笑しながら解子があがってくるのを待つ。


「ますたぁ、解子さん覗かなくて良いの?」


「何故覗かねばならんのだ」


零美の戯言に突っ込む。


お風呂覗き、というのは、信頼関係を崩す、悪手だ。

見せて貰いたければ、ちゃんと頼んで見せて貰った方が良い。


(それもどうかと思いますが・・・)


いや、そもそも、見たい訳でもないからな。


(分かります・・・解子さんの大平原を見ても、楽しく無いですよね)


大平原って程でも無いぞ。


人が歩いてくる気配・・・解子があがってきたようだ。


「お待たせしました」


ひょこり


ラフなルームウェアに着替えた解子が、部屋に入ってく──え。


何、あの巨大なものは。

ロリアの偽装ものよりも更にでかい?!


(シルビア殿?!)


「・・・え・・・何でしょうか・・・?」


解子が、困惑した様に後ずさる。


零美が、にんまりと笑うと、


「ふふふ・・・やっぱり、ますたぁ、解子さんの胸に釘付けになった!」


「なっ?!」


解子が、胸を抱え、後ずさる。


俺は、女性の胸部に視線を向ける事は滅多にない。

むしろ、意図的に視線は逸らす。

ヘタレをなめるな。


だが・・・


それを超えて、思わず見てしまう・・・そういう人は、いる。


「え・・・いや・・・だって・・・さっき・・・?」


「えっと・・・普段は、お姉ちゃんが私の為にデザインしてくれた、胸が小さくなる服シリーズを着ているので・・・それを脱ぐと、少しだけ大きくなります・・・」


「・・・少し・・・?」


多分、服のせいとか、そんな次元じゃないんだが。

流石フェル・・・


「あの・・・すみません・・・大きいのは・・・嫌いでしょうか?」


「いや・・・そういう訳では・・・その・・・解子さんは、解子さんだと思うし・・・」


「はい・・・」


・・・空気が微妙だ。

不安がっていそうだ・・・なら・・・


解子を、そっと抱きしめ・・・うわ、柔らかい。

大きいのも、それ以外の部分も。

お風呂上がりだから、温かいし。


「その・・・宜しく・・・な・・・」


「・・・はい」


解子が、体を預けてくる。


「・・・おとーさん、成人したら私にも、ね?」


「ますたぁ・・・私はもう少しで成人だからね?」


桜花は、婚約の話をしているのだろう。

零美は・・・何だ?

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