第54話 遊び回る奴

「とにかく・・・何かあったら、私が責任とるにゃ。だから・・・何もしないで欲しいにゃ」


トキは、強い意志を込めた目で、そう宣言した。


--


「エリアちゃんの悪評を流すのはどうだ?」


サクラが、そう提案する。


ギルドホーム、湖の畔。

俺、サクラ、レイ、ユウタ、エレノア、そしてカゲに月花。

オトメも、出てきている。


トキが用事でオフラインなので、再びエリアちゃんの対策会議を行う事になった。

尚、エリアちゃんによるポラリスの攻略は、進行中らしい。


「悪評・・・例えば?」


「いや・・・具体的に考えてる訳じゃ無いんだけどよ・・・」


サクラが、ポリポリと頬をかく。


「エリアさんは、人類を堕落させる為に神様が遣わせた悪魔・・・って言う噂はどうでしょうか?」


エレノアの提案。


「それで人々の警戒を促すのか・・・でも、人類って、結構、団結力弱いからなあ。負けたら人類が滅びるって言われても遊び回る奴はいたし」


俺とか。


「それは、許されないですね。何故でしょうか?人類が滅びれば、自分も死ぬのに・・・気になります・・・!いえ・・・むしろ、その人に大切な人はいなかったのでしょうか?かわいそう・・・」


オトメが嘆く。

俺に9,999のダメージ。


「いや・・・シルビア殿は遊んでいた訳ではないし、むしろ、人類に多大な貢献をしていた!」


ロリアが否定する。

遊んでたよ。


「え、どなたですか?」


ユウタが、驚きの声を上げる。

おっと、ユウタはロリアと初対面だったか。


「ああ、俺の従魔で、ロリアという」


「「ロリア?!」」


ユウタとエレノアが叫ぶ。

あ。


ロリアは溜息をつくと、


「・・・わざとやっているのですか?」


ユウタとエレノアを見て、


「私は、魔王と呼ばれる存在。今はシルビア殿の従魔、皆に危害を加える事は無い」


落ち着いた声音で、告げる。


「ロリア・・・魔王・・・」


ユウタが、反芻する。


「僕は・・・ロリアさんが魔王説には、懐疑的なのですぅ。本当に魔王だったのですか?」


エレノアが尋ねる。


俺は、苦笑すると、


「そう、エレノアの考えている通りだ。ロリアは本当は魔王じゃない。本当の魔王は・・・想像通り、魔導王アークウォーロックフェルだ。妹であるトキには内緒だぞ?」


「「「「?!」」」」


サクラ、レイ、ユウタ、エレノアが絶句する。

あれ?


「・・・想像はしていたが・・・やはりそうなのか。ならばその力、神にすら届いたのだろうな。マスター、貴方の力は、神にも届くのか・・・」


「いや、騙し討ちみたいなものだから」


サクラの慄きを、否定する。

真っ向から戦って倒せる訳がない。


「ううう・・・フェルさん・・・?トキさんのお姉さん・・・?前に少し名前出てきたけど・・・知らないよぅ・・・?」


レイが唸る。

六王って、あまり伝わってないんだっけ?


「ロリアさんでは無いと思っていましたし、フェルさんの話も見た事が有りましたが・・・繋げて考えた事はなかったですね。でもまあ・・・確か、フェルさんのアバターの種族は、魔族。適合率?が高かったのでしょうか」


ユウタが呟く。


「うう・・・過去にそんな事があったのですねぇ・・・人間を滅ぼしたのは人間、と言う事ですかぁ」


エレノアがしみじみと言う。


「・・・フェルの名誉の為に言うが、別にフェルは、殺人鬼でも無ければ、破壊願望がある訳でも無い。以前、レイ殿の言った通り・・・魔王、という役割ロールに囚われただけだ。それに・・・その原因は、エレノア殿が言った通り・・・当時の腐敗した人間共が、その歪んだ欲望を剥き出しに、六王やシルビア殿、その他多くの貢献者を害そうとしたのだ。それが・・・フェルの楔を・・・外してしまった・・・」


ロリアが、淡々と告げる。


「六王さん・・・トキのお姉さんのフェルさんと・・・」


レイが呟く。


「後は、そこにいるカゲが、六王の1人、影王アークシャドウイデアだな」


「えええええええええ??!!」


サクラが叫ぶ。

カゲは、月花から貰った果実酒を飲むのを中断すると、


「あ、お構いなく」


「構うよ??!」


サクラが涙目でカゲに詰め寄る。

他の人の顔には、『誰?』と書いてある。


話を戻そう。


「とにかく、悪評、と言うのは難しそうだな」


考えつかんし、広めるのも面倒だ。


「んーっとぉ・・・エリアちゃん、動画共有サイトに開設したページが、凄く人気じゃないですかぁ?人々の興味を引けるような動画を投稿しませんかぁ?」


「ふむ・・・俺にはそういうセンスは無いが・・・誰か案が有るか?」


「はーい、はいはい!私やりたいやりたい!歌って踊るぅ!!」


レイが元気良く手を挙げる。


「なるほど・・・レイの歌と踊りは素晴らしいな」


レイは、顔を曇らせ、


「ああ、でも、顔を出して動画投稿したら駄目って言われてて・・・」


「そうなのか?」


まあ、俺も、あまりネットやテレビに顔や名前を晒すのは好きではない。

ホームページや雑誌でも、俺やカゲの素顔は非公開だし。

社外の会議等に出るのはカゲなので、俺は相当露出が少ない。


「なら、3Dアバター、を使えばどうでしょうか?」


ユウタの提案。


「僕は、演出なら、少し自信が有ります」


「3Dアバター?」


レイが小首を傾げる。


「人が踊って、その動きを撮影して、CGに同じ動きをさせる技術、かな。ほら、動画で見た事無いか?」


「えっと・・・あ、マイマイみたいなやつ!」


「そうそう」


レイの疑問に、サクラが答える。

なるほど。

それなら、顔は出ないし、踊りを見せられるな。


「機材や撮影場所は、あたいが提供してやるよ」


サクラが、にやりと笑う。

カゲの会社の私物化が激しい件。

売上と顧客満足度、従業員満足度に利益、どれも爆上げしているので、ぐうの音も出ない。


「じゃあ、現実リアルで会うんだね!」


レイが嬉しそうに言う。


「初オフ会ですね」


ユウタも嬉しそうに言う。


「あの・・・僕も行って良いですかぁ?何も出来ないですが・・・」


「勿論。同じギルドメンバー、友人じゃないか」


俺は、笑みを見せる。


「じゃあ、集合場所は──」


サクラが、みんなに、場所を告げる。

会社所有のスタジオだ。

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