第50話 ほぼ何もしてないのと同義

「おう、そんな事は言ってないからな?」


誰がサクラに手を出すか。

あと、ロリアは実体がない。


「口に出さずとも、ご主人様とは心で通じ合っているうさぁ。みなまで言うなうさぁ」


「通じ合えてないぞ」


とりあえず従魔には話しておこうと思ったのだが。

上手く伝わらない。


「あたいは、NLJOこっちでも、現実リアルでも、どっちでも歓迎だぜ?」


「未成年の娘に手を出す父親はいない」


「・・・え、結構いたぜ?」


「え・・・えっと・・・俺は違う」


いるのか・・・?

サクラがあまりにも素な様子で言うから、不安になってきた。

・・・色々あったらしいからなあ・・・サクラ。

本人自身や、知り合いや・・・壮絶な世界で生きていたのかもしれないから・・・


10年前から、現実リアルは一変した。

老人や病人は大半が死に、強盗も横行、犯罪は取り締まれず。

都心部以外は本当に地獄だ。


毎年、着実に落ち着いてきてはいるのだが。

10年前の日本の様な状況になるのは・・・まだまだ時間が必要だろう。


「そう言えば・・・結局、ネットを騒がせている謎の存在・・・何処にでも侵入し、夢守商事のセキュリティを無敵にした人物・・・あれって、ロリアで良いんだよな?」


サクラが訪ねる。


「無敵ではないが、恐らくそうだな」


ロリアが、頷く。


「五王の秘匿データとかにもアクセスしたり、改竄しているらしいが・・・あれってどうやっているんだ?」


「普通に侵入して、普通に書き換えているだけですね」


ロリアが小首を傾げ、答える。

まあ、息をしたり、物を掴んだりするような感じで、実行できるんだろうな。


ロリアが続ける。


「秘匿って言っても・・・端末をネットワークから物理的に隔離する事と、量子暗号化くらいしかしていないので、ほぼ何もしてないのと同義」


「最高のセキュリティじゃねえか!それを破れるのはおかしいだろ!」


ロリアの発言に、サクラが凄まじい勢いでツッコミを入れる。

どうどう。

セキュリティは詳しくないが、五王は結構頑張っていた方なのかな?


「ネットワークから隔離してある端末のデータが、改竄されていたら、そりゃ焦るに決まっているだろ?!例えばさ、ロリア、あんたがしっかり鍵をかけた部屋のテーブルの上に、気付かない間にメモが置いてあったら・・・どうする?」


「ふむ・・・それは不可解な状況であるな。結界を強化せねば」


「だろ?あんたはできてしまうかも知れないが、やられた方はたまったもんじゃねえんだ。少しは加減してやってくれ」


「いや・・・しかし・・・あの程度の防備しかしないのであれば・・・むしろ見て下さいと言っているかのようなもの」


ロリアが困惑した様に言う。


「うさぁ、ロリアも、自分の身に置き換えて考えたら、分かるうさぁ」


「いや・・・先程、自分の身に置き換えて考えたところなのだが」


「うさぁ・・・例えば・・・ロリアが、フレアちゃんの為に、必死に結界を張って、色々準備した部屋で」


「・・・フレア・・・」


「机の上に、いつの間にか、デヴィクトからの愛の招待状が」


「おのれデヴィクトおおおおおおおおおお!」


デヴィクト、というのはフレアとロリアの叔父らしい。

フレアの事を狙っているとか。

フレアは、ロリアの妹だ。


「うさぁ・・・その様に、絶対に安全と確信している場所・・・そこを荒らされると、人は不安になるのうさぁ。だから、少し考えてあげて欲しいうさぁ・・・」


「・・・確かに・・・不安になるな・・・そうだな・・・気をつけ──まて、もふもふよ。何故そなたが、デヴィクトとフレアを知っている?」


そう言えば。


「うさぁ。ご主人様と深い信頼関係を結べば、過去の記憶に遡って取得する事も容易いうさぁ」


何・・・だと・・・


「私は・・・シルビア殿の、過去なんて見れないのだが・・・?」


「信頼レベルが足りてないうさぁ」


・・・むしろ、信頼度で言えば、ロリアの方が高いと思うのだが。


・・・


「なあ、アポカリプス、ロリアと初めて会ったのはどこだ?」


「魔族の街を見物に行った時うさぁ。要塞都市モルフォンうさぁ」


正解。


「じゃあ、アポカリプス。俺が女神様に願った内容は?」


「うさぁ、死んでたから分からないうさぁ」


そうか。


「なあ、アポカリプスって・・・やっぱり、ルナナだろ?」


「うさっ?!」


原理は分からんが。


「・・・やはりもふもふだったのか・・・」


ロリアが露骨に警戒感を強める。


「・・・ルナナは、ただのラビットパフうさぁ・・・」


視線を逸らすルナナ。

自白してるぞ。


「まあ・・・おかえり、ルナナ」


「それはルナナの台詞うさぁ?!」


あれ。


--


ひゅ


ロープを対岸に投げ、


タンッ


飛び降り、ロープを伝って対岸に登る。


レジェンドダンジョン、千尋の谷。

格上のダンジョンだ。


ギルドメンバーと出掛けるときは、従魔禁止、スキル制限、レベル制限状態なので、ソロの方がのんびりできる。


それに・・・制限ダンジョンに行くと、どうしても敵のレベルが適正付近になるのだが。

適正付近だと余裕があり過ぎて、俺は何もしなくても進めてしまう。

トラップも、致死レベルのものは少ないし、宝箱も虹程度だ。


「ダークフォース、テンペスト、カタストロフ」


ロリアの魔法が次々と炸裂、魔物を吹き飛ばす。


照準ロックオン射出ショット


オトメの攻撃が、魔物を射貫く。


「うさぁ」


カッ


魔物が次々と蒸発する。


そして。


ぶわあああああ


次々と湧き上がるドロップ


ルナナが、能力を隠す必要が無くなったのか、久々に元気に跳ねている。


みんな強いな。


「・・・あの・・・アポカリプスさん・・・いえ、ルナナさん、異常に強く無いでしょうか・・・?」


「・・・いや、いつも通りだが・・・?」


「いつも通りのもふもふですね」


「うさぁ?」


一応、前LJOでは、俺のPT内では最強の存在だったしな。


魔石の供給や、LR武器の供給も増えてきた。

この調子で増やしていきたい。

ロリアの空間収納能力も強化され、自動回収、任意武器取り出し、収納量増加・・・順調に能力が向上している。


それにしても・・・


「レベルの上がりが遅くなったな」


「・・・一撃で1万以上上がっているようですが・・・?」


オトメが困惑した様に言う。

いや、1万って、誤差程度だろう。


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すみません、しばらく更新頻度が落ちます。

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