第48話 追跡者
ひた・・・ひた・・・
忍び寄る、気配。
刺客?
何故、俺が?
しとしと・・・
土砂降りではないが、雨が降り。
じっとりと湿った空気が、不気味だ。
人通りが絶えた道。
濡れたアスファルトを踏みしめ。
ぴちゃ・・・
此処は、
俺に、超人の力は無い。
ボディーガードはつけていない。
此処が、基本的に治安が良い地域という事と、女神様のおかげか俺に害する事はできないという空気がある事と・・・
なので、今日までは不都合は無かった。
何時からつけられていた?
とにかく、オートロックのマンションに飛び込めば・・・いやそもそも、近づけば、人が少しはいる筈。
それにしても、人気という言葉は厄介だ。
会話で使う分には良いのだが。
文章にすると、
「動かないで下さい」
しまった?!
考え事をしている隙に距離を詰められた!
(シルビア殿・・・今のは、部屋に帰ってから考えれば良かった内容かと・・・)
ロリアのツッコミ。
く・・・
「・・・何が目的だ?」
背中に、丸い物が押し当てられている。
硬く、生暖かい。
「
子供?
振り解き、組み伏せる事はできそうだが・・・
相手が刃物や銃を持っていれば、死ぬ。
「そうだ」
「なら──」
前に逃げるか、横に逃げるか・・・
「私を娘にして下さい」
「え」
しまった。
一瞬、思考停止してしまった。
・・・生きてる?
「駄目・・・ですか?」
ゆっくりと、振り返る。
前髪で顔が隠れた、女の子。
露出が極端に少ない服装。
寒い季節でもないのに、手を手袋で覆っている。
年齢は・・・分からないが、未成年だろう。
「・・・君は?」
「私は、
淡々とした、温度の無い声。
俺はお前のご主人じゃないぞ。
「年齢は9歳、性別は女、親とは死別、お金は有ります、生殖能力は獲得済みです」
最後の情報。
手は出さねえよ。
(何者でしょうか・・・?暗殺者であれば、絶好のタイミングを逃したようですし。純粋に、シルビア殿の地位と資産に惹かれて?)
ロリアが訝しむ。
「俺は、養子をとる気は無い」
はっきりと拒絶する。
襲い掛かってくるのを警戒しつつ、距離をとる。
「・・・?!」
少女の顔に驚愕が浮かび、膝をつく。
「・・・お願いします、マスター・・・親の遺産を狙う親族に、遺産を全て渡して逃げたのですが・・・使い切ったら、また狙われます・・・未成年者は法律上、親族が親権を持て・・・「子」の資産や身体を自由にできるんです・・・もう・・・嫌です・・・」
少女が、怯えた様に、自らの身体を抱く。
・・・過去に何があったのか。
「お金なら有ります、家事もします、この身体を自由にしても構いません!」
自由にしねえよ。
俺はどれだけ鬼畜なんだ。
俺は、静かに首を振る。
可愛そうだとは思うが・・・
「お願いします・・・マスター・・・マスターしか、頼れる人はいないんです・・・成人するまでで良いので・・・
・・・・・・?!
サクラ?!
「・・・サクラ?」
「はい・・・月下幻想のサクラ、マスターの愛人です」
・・・
幼女?!
俺は、幼女に手を出していたのか・・・?
(シルビア殿・・・私も、月花殿に賛成です。サクラ殿には手を出すべきではありません)
ロリア、いきなり裏切らないでもらえますか?!
もう出さねえよ。
・・・サクラなら、助けてやりたいが・・・
急に養子なんて言われても・・・
「すまない、サクラ。やはり、突然養子と言われても・・・」
「・・・そうですか・・・」
サクラは、項垂れ、
「すみません、無理を言いました。マスターを困らせるつもりも無いし・・・優しさにつけこむ気も有りません・・・弱みを握って脅迫する気も有りません」
サクラが、頭を下げる・・・
サクラ・・・
「ですので、トキに事情を話して、養子にしてもらいます。お姉さんのフェルが魔王となって、人類を絶滅させかけた事や、両親が殺された事等を話した上で、私の境遇を語り、責任論を論じれば、きっと快く受け入れて下さる筈です」
「よーし、分かった。今日からサクラ──桜花は、俺の娘だ。手続きはどうすれば良いのかな?」
脅してるじゃねーか。
トキを巻き込むな。
「こちらで手配しますので、お父さんは何もしなくて大丈夫です」
桜花が、笑みを浮かべる。
・・・普通に可愛い。
(・・・9歳なら、両親の死因はLJOでは無い筈ですが・・・)
・・・はっ?!
--
無事に帰宅。
「綺麗な部屋ですが、大企業の副社長の部屋にしては質素で狭いですね」
桜花が、感想を述べる。
「部屋が綺麗なのは、夢守が掃除してくれるお陰だな。広さは・・・生活できればそれで良い。そこまで物を集めはしないしな。まあ、2人で住むなら、広い部屋に引っ越しても良いが」
「私は実体が無いしな」
「え、夢守さんって誰、と言うか、今女性の声が、と言うか、ロリアの声が・・・ええええ?」
桜花がおもむろに慌てだす。
淡々としてたけど、慌てる事も有るらしい。
「夢守殿は、カゲ殿の
ロリアが、スマホの画面の中で手を振る。
「・・・仮想人格の演算再現?!スマートフォンのスペックでそんな事できる訳が・・・?!」
桜花が目を見開き、スマホを凝視する。
俺は苦笑して、
「一応、最新型だから、高スペックだぞ。それに・・・種を明かせば、NLJOのロリアが
「虚数世界の仮存在が、実世界のこちらに、次元転移できる訳が無いですよ?!実世界の存在規則に定義されていない事は実現できないので、スマホの演算能力を超えた現象も起こせません!」
うわ、難しい事を言われた。
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すみません、明日も更新できません。
2019/06/15:
桜子→桜花
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