第42話 集うシリーズ

「面白そうだな、受けてみるか」


「はい」


ユウタが微笑を浮かべる。


「何かお勧めのイベントは有るか?」


「えっとね・・・『五象六富に染み渡る』、とかどうかな!」


レイの提案。

何だそれ。

クエスト名で、内容が想像できん。


「あれって、推奨レベル500超えてたよね。厳しいと思うよ」


ユウタが苦笑して言う。


「にゃあ、色々な場所に行けたのは面白かったけど、面倒だったにゃあ」


トキはクリア済みか。


「『集う魔物達』、とかはどうですか?」


エレノアの提案。


「無印なら、推奨300ぐらい・・・いけそうかな」


ユウタが頷く。


「じゃあ、それで行こうか」


俺は、そう告げた。


--


クエストを受注する際、レベル制限モードにするかどうかを選べるらしい。

300を超えるレベルの場合、レベル300まで下げられている。

まあ、ジョブは下がってないので、余裕なのは変わらないのだけど。


「『集う魔物達』は、迷宮踏破、魔物の群れ、小ボス、ボスと、連続挑戦するクエストです。ギルドでチャレンジするのも楽しいし、最後の宝箱目当てに野良PTの募集も盛んに行われています」


ユウタの解説。

野良PTというのは、酒場で参加者を募って、一時的なPTを組んで遊ぶ事らしい。


「『逆襲の集う魔物達』、『続集う魔物達』等、難易度が上がったクエストも有るにゃ。所謂、『集う』って言われてる一連のクエストにゃ」


名前からでは、難しい順番が分からないが。

先程クエスト一覧を見たところ、『逆襲の集う魔物達』が推奨1,000、『続集う魔物達』が推奨5,000。

『奈落に集う魔物達』、なんかは、推奨レベルが1,000,000になっていたので、かなり上位までクエストを用意してあるようだ。


集うシリーズ以外にも、結構色々あるので、もっとクエストを利用しても良かったかも知れない。


「それでは、マスター、受けて下さい」


クエストを受注するのは、PTリーダーの役目だ。

PTリーダーが受注すれば、PT全体が受けた事になる。


「受けたよ」


クエストを受けた状態で、酒場に設置されたゲートをくぐれば・・・


謎の地下遺跡へと転送された。


--


「このフィールドには敵も出ないし、罠も有りません。ただ、ひたすら広くて・・・」


ユウタの解説が続く。

出たのは、広間。

4方に通路が伸び、通路の先は暗くて見えない。


なるほど、探索がメインのマップか。


「よし、行くぞ」


後方の通路を抜けると、そこには階段。


「・・・一発でクリア?!こんなの初めてです!」


ユウタが驚きの声を上げる。


「そりゃ、一発クリアくらいするだろ、レンジャーならな」


「レンジャーでも無理にゃあ」


トキのツッコミ。

方向感覚って、レンジャーの必須技能だよ。


「レンジャー?」


レイが不思議そうに繰り返す。


「・・・ああ。俺のステータスに表示されているウェポンマスターは、偽装でな。本来の職業は、系の4次職だ」


「「「「「レンジャー系の4?!」」」」」


驚きの声がハモる。

いや、サクラとトキは知ってるよな?!


「す、凄い、凄い、凄い、ますたー、すごーい!!!」


レイがぴょんぴょん跳ねる。

いや、レンジャーは誰でもなれるし、サブでも育てられるから。


(宝王は、転職条件がある特殊クラスうさぁ。レンジャー系列以外の経験が有れば、転職できないうさぁ)


・・・そうだっけか。

そういう意味では、レンジャー系列の4次は珍しいのかも知れないな。


「・・・マスター・・・既に4次職だったにゃあ・・・?」


「ああ、4次は珍しいらしいな」


レンジャーでなければ珍しくもないが。

レンジャーだけで4次まで行くのは面倒だ。


「4次職って確か・・・レベルが10万超えてたよなぁ」


サクラが呆れた様に言う。


「10万・・・」


エレノアが息を呑む。

レベル上げ、早い方だろうか?

でも、イデアは1億超えてるらしいしなあ。


「マスターがレベル10万以上なら、このクエストも簡単過ぎでしょうか?」


「そうでもない。俺のプレイヤースキルで、実質レベルを300まで下げているし。そもそも、レベル制限モードだしな」


ユウタの問いを、否定する。

尚、従魔には手出し禁止の指示済。


「プレイヤースキル、ですか?」


エレノアが小首を傾げる。


「ああ。プレイヤー毎に、呪い無効化したり、名前等を偽装したり、魔法威力が向上したりする事が有るだろ。そういう特徴の事だな」


「え、何それ?!」


レイが驚きの声を上げる。

あれ、みんなヘルプ読んでないのか?


(ヘルプには書いてないうさぁ)


・・・そうなのか。


「・・・なるほど。言われてみれば、納得できる気がするな・・・ずりぃな」


サクラが半眼で言う。

いや、多分お前もプレイヤースキル持ちだぞ。


次のマップ。


大量の魔物が湧き、5分間耐える、というのが条件なのだが。


「閃!」


サクラの刀技が発動、大きな軌跡を描き・・・無数の敵が両断される。

敵の群れを駆け抜けつつ、ひたすら倒していく。

格上の敵も混じっているのだが、関係が無いようだ。


「破!」


レイが次々と敵を殴り、蹴り、昏倒、そのまま死亡させる。


「斉!」


気弾を飛ばし、着弾、爆砕、無数の敵が飛ぶ。

まあ、普通に強い。


「ラーヴァブルーム!」


エレノアの大魔法が発動。

溶岩が噴き出し、無数の敵を巻き込む。


「ファイアボルト、サンダーボルト!」


ユウタが発動の早い魔法を放ち、着実に敵を仕留めていく。


「ライトニングエクスプロージョン!」


ゴアアッ


明らかに格が違う魔法が発動。

トキだ。

光が膨れ上がり、一角の敵が絶滅する。


・・・


俺は特に何もする事が無く。

本来なら、酷い湧きのせいで、敵の群れに押しつぶされそうになりつつ、壁際で耐える筈のこのマップで。

敵が枯渇して、取り合いになっている。

制限ダンジョン、等倍のダンジョンはもう駄目かも知れない。


(アジトのダンジョンゲートを開放すれば、難易度を上げられるうさぁ。難易度を上げれば、制限レベルに対する、出現する敵のレベルが上昇するうさぁ)


それはアリかも知れないな。


5分が過ぎたので、中央に階段が出現。


「敢えて階段を上らず、此処でレベル上げをするPTも有ります」


ユウタの補足。

なるほど、湧きが良いからか。

楽勝で倒しているせいで、あまり経験値入ってないけど。

・・・ユウタには良い経験値になっているようだ。


次のマップは・・・小ボス、ミノタウロス。


ザンッ


サクラが首を撥ねる。

いや、ボスってそうやって倒すもんじゃねーから。


「サクラ凄い!」


レイがぴょんぴょん飛び跳ねる。


「へへ、まあ、マスターのお陰だな」


「何でだよ」


どう見ても、技量のせいです。


大ボスマップでも・・・


ザシュッ


サンダーバードの羽を、サクラが斬り飛ばす。


ゴウッ


エレノアの大魔法が炸裂。


ガッ


レイがオーラを纏った拳撃で翻弄し・・・


サクラとレイの連撃の後、エレノアの大魔法がサンダーバードの命を奪った。

・・・恐らく、トキなら一撃で倒すが、そこは空気を読んだようだ。


そして最後。

6個の宝箱と、真ん中に大きな宝箱。


それぞれ、開けると、PTメンバー全員の足元に、光に包まれたアイテムが出現する。

PTドロップだ。

そこそこの価値のアイテムが出たようだ。


「お疲れ様」


めいめい、労いあい。

クエストをクリア。


「これがインスタンスクエストか。悪くないな」


「面白かった!でも、もっと歯ごたえが欲しかった!」


レイの言う事は分かる。

1階層目のクリアが早かったのはおいておくにしても。

2階層目からの敵が、明らかに力不足だった。

一応、レベルは300から500、低くない筈なのだが。

ジョブレベル下がってないとはいえ、みんな明らかに強いな。


(推奨レベル、とはいっても、スマホモードでプレイする人用の基準うさぁ。こちらに来ている人にとっては、話にならないうさぁ)


・・・そうなのか。

そうなると・・・アジトのダンジョン機能を使うのが良さそうだな。


「野良PTで来た時より、遥かに楽ですね。みんな強いです」


ユウタが微笑を浮かべる。


「程良い緊張感だったにゃあ」


トキが言う。

大嘘をつくな。


(ご主人様、そろそろ夜ですね)


そうか。


「お疲れ様。そろそろ良い時間だろう。今日はこのあたりで切り上げよう」


「はーぃ、お疲れ様ですぅ」


エレノアがのんびりと言う。

お互い挨拶を交わすと、解散した。

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