第40話 老いらくの恋

「え、できないんですけど・・・?」


ロリアが困惑した様に言う。


「システムへのアクセス・・・想像もできません」


オトメが珍しく、困惑した顔をする。

あれ、オトメもできないのか。


「・・・わたしゃ、従魔がいないから分からないな」


サクラも困った様に言う。


「私のうさちゃんは教えてくれないよ・・・?というか、喋らないよ?」


まず喋りやすい従魔を捕まえれば良いんじゃね?


「最初から人語を喋ってる魔物を従魔にするのが良いのかも知れないな」


「人語を操る魔物って、従魔になるものなのか?」


サクラが困惑した様に言う。

ひょっとして、人語を操る魔物は、従魔になりにくいのか?


「月花に聞いてみるのが良さそうだな」


「えっと・・・話は聞いていましたが・・・」


ひゅ


月花が、姿を現す。


「人語を操る魔物でも、確率は低いですが従魔になりますし。育てたら、人語を操る魔物も少なくは有りません」


「そうなんだ!じゃあ、頑張る!」


「ただ・・・システムにアクセスはできない筈ですが・・・何故、ご主人様のラビットパフはそんな事ができているのでしょうか?」


「うさぁ・・・?難しい事は分からないうさぁ・・・?息をしたり、食べ物を食べたり、跳ねたり、光熱波をまき散らしたりするのに、原理は分からずに自然にするうさぁ・・・?」


「・・・それはそうだろうな。何かをできる事と、その原理を知る事は、別物だ」


アポカリプスの言う事は、正しいと思う。


「待って欲しい。そのもふもふが、今何か混ぜた気がするんだが?!」


「落ち着け、ロリア。お前がトラウマを煩っているのは分かるが、それをアポカリプスに当てはめるな」


月花は溜息をつくと、


「ともかく、です。システムにアクセスして良いのは、システム管理者のみです。一般ユーザがシステムにアクセスして情報をとってくるのは・・・感心しませんね」


「そのシステム管理権限を悪用して、ご主人様に情報を流している妖精が何か言ってるうさぁ」


「わ・・・私は、ちゃんと、その情報を提供して良いかどうか、熟慮した上で答えてますからね?!」


・・・ともかく。


「まあ、アポカリプスがシステムから情報を入手できるのは分かった。だが、余裕がある時は、月花経由で情報を提供して貰う事にしよう。それで良いか?」


「・・・そうですね」


月花が頷く。


・・・あ。

レイが目を丸くしている。


「えっと・・・ますたあ、と、その周辺の人って・・・結構凄い存在なの?良く理解できないけど・・・何だか凄そうな事を話してる?」


まあ、事情を知らなければそう思ってしまうよな。


「いや、大した話では無いんだが。まあ、また改めて説明するよ」


「そうそう、あたいらのマスターが、かつて人類を救った英雄・・・それだけ知っとけば十分だと思うぜ」


「ええええええええええええ???!!」


レイが叫ぶ。


「待って、ますたあ、待って、本当なの??!」


レイが俺の胸を掴み、超接近して見上げてくる。

えっと・・・


「本当ですよ。ご主人様が人類を救ったのは、事実です」


月花が答える。


「えええ・・・」


レイの頭の上に、ハテナマークが沢山浮かんでいる。


「まあ・・・どう説明するか、整理して・・・また今度みんなには話すよ」


俺は、そう、レイに告げた。


--


「マスター、レイに接近されても、かなり余裕があったな」


レイが去った後、サクラが話しかけてくる。


「女性、といえども、子供だしな。そう、何時までも慌てていては、大人として恥ずかしいだろう?」


「ふーん・・・ロリアと関係でももったか?」


ぶっ


「サ・・・サクラ殿、何を言うか」


「図星か」


サクラが近寄ってくると・・・近寄り過ぎじゃないか?!

おい・・・当たってるぞ?!

その吐息すら聞こえる距離で、


「なあ、マスター。どうせなら・・・大人のテクニック、というものも体験してみないか?子供の遊戯だけじゃ・・・恥ずかしいぜ?」


「な・・・誰が子供だ?!」


ロリアが叫ぶ。


「ロリア・・・あんたさ・・・何歳だ?」


サクラが笑みを浮かべながら尋ねる。


「・・・我は、500歳を超えておる・・・人間共の基準に当てはめれば、その寿命を何度も全うできるな」


まあ、年齢的に子供では無いな。


「500歳、ね。それってさ・・・魔族の年齢的にはどうなんだ?」


「な?!」


ロリアが言葉に詰まる。


「魔族で500歳・・・それは・・・成人しているのか?」


「・・・ぬ・・・く・・・」


・・・してないのか?


「なあ、マスター。あたいみたいな老いぼれとは嫌か?確かに現実リアルでは、マスターとは大分年齢が離れているが・・・このアバターは若い娘の姿だ。悪くは無いだろう?」


ちょ・・・どこを噛んでいる?!


「おい・・・サクラ・・・?」


「大人の技術・・・味わってはみないか?」


「いや・・・しかし・・・」


サクラはふと、表情を陰らせると、


「・・・シルビア・・・老婆にこんな事を言われて気持ち悪いかも知れないが・・・あんたの事が・・・好きだ。こんな気持ちになるなんて・・・思っていなかった・・・。現実リアルでどうこう言う気は無いんだ・・・せめて、この世界でだけ・・・受け入れてはくれないか?」


上目遣いで見上げてくる。


サクラは嫌いでは無いが・・・まだ会って間もないのに・・・


「・・・何を躊躇しているんだ?やはり・・・私では嫌だろうか?」


「・・・そういう訳では・・・」


唇を奪われる。

舌が・・・


「シルビア・・・好きだ・・・」


そう、囁きが聞こえる。

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