第36話 アポカリプス

> いいえ

> いいえ

> いいえ

> いいえ


選択肢のいいえ、を選んでいく・・・あ、はいといいえが左右逆だ・・・危ない。


「ますたあ、すごおおおい!」


<ラビットパフAは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフBは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフCは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフDは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフEは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフFは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフGは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフHは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフIは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフJは寂しそうに去って行きました>

<ラビットパフKは寂しそうに去って行きました>


・・・おい、『はい』と『YES』なんだが。

右上にバツ印・・・は無いし・・・おい、あと13秒って何だ・・・12・・・おい。


<タイニーレッサーラビットパフ・アポカリプスが従魔となりました>


名前ごつすぎるわ。


後、やっぱり、変な契約っぽいのなくても勝手に従魔になるよな?

そして、ただでさえ弱いラビットパフが、更に小さくなって、しかも劣化種なんだが。

手の平サイズで地味に可愛いが。


「私も頑張る!」


レイが再び駆け出し・・・


500匹くらいは倒しただろうか。

ようやく1体起き上がり、契約を交わし・・・


「宜しくね・・・んーっと・・・うさぎだから・・・うさちゃん!」


ポウッ


レイが名前を呼んだ瞬間、ラビットパフが光る。


「命名、ですね。本来、魔物に名前は無いのですが・・・ああやって名前を与える事で、自らの眷属としての力を与えるのです」


オトメの解説。

お前等、最初から名乗ってるよな。

俺が命名する余地ないよな?


「ますたあ、一緒の魔物だね!おそろい、おそろい!」


劣化種な上に小さいんですが。


「んーん?ますたあのうさぎ、赤ちゃん?!小さい、可愛い!」


「なんか劣化種らしいぞ」


初めて聞いた種族名だが。


「んー、うさちゃんの方が強いって事ぉ?」


レイが小首を傾げる。


「らしいな」


なので、従魔契約を解除したい。


「んー、今日は有り難う、ますたあ!また今度、付き合って、ね!」


「ああ、また今度、な」


レイの頭を撫でてやる。


ぎゅむ


目を細め、抱きついてきた。

柔らかくて温かいなあ。


手を元気良く振りつつ、レイが去って行く。


さて・・・そろそろ、俺もログアウトするか。


(シルビア殿)


ん。

どうした、ロリア。


(少し話が有るのです・・・アジトにいきませんか?)


ん?


--


「シルビア殿・・・さっきのあの様子は、どうしたのですか。あの様な小さな子に、でれでれと」


「・・・いや・・・その・・・だな」


レイが特に可愛い娘だとか、幼い体つきなのに出るところが出ているとか、ぐいぐいくっつかれたとか・・・色々あるが・・・


俺の免疫が無さ過ぎるのが原因だろうな。


ロリアは溜息をつくと、


「シルビア殿・・・情けない・・・毒に麻痺に混乱、誘惑に呪い・・・バッドステータスにはかなり耐性が有るし・・・物理耐性や魔法耐性もかなりのもの・・・なのに・・・女の子の暗殺者に迫られたらどうする気ですか?」


「いや・・・あのな。俺だって、暗殺者なら返り討ちにするぞ・・・だがな、知り合いだから・・・」


「・・・知り合いだからって、あっさり近付かれて、あっさり腑抜けにされてたら、心配です」


・・・ですよね。


「友人としても心配ですし・・・従魔としては情けない限りです」


本当に悲しそうに、ロリアが告げる。

・・・そうだなあ・・・


「先程の話では有りませんが・・・この体で良ければ、シルビア殿の鍛錬に付き合えますが」


「え」


「この体は、生前の私を模したもの・・・免疫、とやらをつける一助にはなるでしょう。大丈夫です。痛覚等の神経系は再現しておりませんので、少々無茶をしても大丈夫ですよ」


「・・・いや・・・その・・・あの、だな・・・」


「私の体ではお気に召しませんか?先程、私の姿が魅力的、と言ったのは、虚偽ですか?」


いや・・・凄く魅力的では有るんだが・・・

その・・・


ロリアは溜息をつくと、


「何を抵抗しておられるのか、理解できません。この体は、偽りの物ですが、感触等は本物と寸分違いません。精巧なラブドールと何が違うのでしょうか?」


・・・いや、そんな物を使った事は無いが・・・

ロリアが、淡々と、温度の無い声で続ける。


ロリアの視線が、真っ直ぐに刺さる。


「・・・私も、恥ずかしいのですよ?言わせないで下さい・・・本当は・・・」


潤んだ目。

上気した顔・・・


・・・


それはあたかも・・・愛しい恋人の眼差しに見え・・・


本来は、レイに鼻を伸ばしてしまった俺の従魔である事が恥ずかしいと言う事だろう。


それが・・・先程までの台詞が照れ隠しであったかの様な、そんな勘違いをしてしまいたくなる程・・・


心臓の音が煩い。


「ロリア・・・」


「はい・・・シルビア殿・・・やっと・・・」


じっとりと汗ばむロリアの体は・・・リアルな体温を伝えてくる。


--


(シルビア殿、サウザンドが捕捉されました)


またか?!


現実リアル、本社、自室。

仕事中、ロリアからの報告。

侵入警報はここ最近、一切鳴っていないのだが。

数日に1回、痕跡が見つかる。

・・・残念ながら、相手の方が上手と言わざるを得ない。


(重要情報は必死に隔離しているのですが・・・完全に遮断できている自信は無いですね)


まあ、自信が有れば、侵入の段階で検知できるよね。


(所々にハニーポット、罠を仕掛けてありまして。そこに入った時だけ、検知できている状況です)


ファイル名、フォルダ名を、気になる名前にしておくのだ。

ふらっとそこに侵入したら、御用。

御用できてないけど。


(逆探知も、846層までしか追跡できていませんし)


本当に1000本の串刺してるのか?


(副社長魅惑の写真集、副社長禁断の入園写真、副社長禁断のお風呂写真集・・・このあたりが食い付きが良いハニーポットですね)


「おかしい」


それは多分、重要機密の偽装だと思われただけだと思う。


(後は、猫ちゃんの写真集とか)


それは本気で見に行ったのかも知れない。

猫、可愛いよ。


(日本の名刀百選とかにも侵入しました)


ストアで買えよ。

いっぱい売ってるだろ。


(その度に追跡して、侵入路を塞いでいるのですが。毎回別の場所から・・・恐らく、見つけられていない、大元が有るんだと思います)


厄介だな・・・


(もうフォルダ名が思いつきません)


副社長に女性の影、みたいな見出しにでもしておけ。


(あ・・・それって私・・・)


あ、いや・・・うん。

仕事中にそういう反応されると、にやけるので止めて欲しい。

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