第31話 永久機関

「まずは武器屋に付き合って欲しい」


「分かった。あては有るのか?」


一般的なRPGでは、武器屋は1つの街に1つだ。

複数有る場合は、武器種が違ったり、ランクが違ったり・・・


NLJOでは、NPC──人々は、普通に生活を営んでいる。

当然、武器屋は複数有る。

贔屓にする武器屋を見つけ、そこのお世話になるのが一般的、らしい。


更には、プレイヤーが露店で直接売りに出していたり、冒険者ギルドで売っていたり。


武器を買う、と言っても、様々な方法が有る。

とりあえず色々試したいなら、大手の武器屋に入るのが──


「とりあえず、あそこ覗いてみるよ」


サクラが指し示す先。

街の一角の、小さな個人商店。

品揃えは怪しいが、長く付き合うなら良いかも知れない。


「いらっしゃいませぇ〜!」


元気な女の子が、こちらに気付き、笑みを浮かべる。

店の子だろうか。


「嬢ちゃん、元気良いなぁ」


サクラが、手馴れた様子で女の子の頭を撫でる。


「子供が好きなのか?」


「ああ・・・懐かしいな。あれからもう10年以上、か」


・・・子供か・・・孫か・・・死んだのだろう。

あの件で。


(・・・)


ロリアが、申し訳無さそうな空気を出す。

いや、お前加害者じゃないからな?

被害者1号、兼、冤罪だからな?


「武器、見せてくれるか?」


「はーい。おか〜さ〜ん!」


女の子の案内で、店内に。

小さく、飾り気は無いが、良く整理されている。

武器も、良い品のようだ。


「いらっしゃいませ」


女性が、笑顔で迎える。


「剣以外の武器を使いたくてね。色々試したいんだが、見せてくれるか?」


「剣以外・・・ですか?」


女性が、きょとんとする。

見回すと、剣が多い。

武器屋によって、得意不得意は有るからな。


「そうですね・・・」


女性が色々と並べていく。

鞭、弓、槍、斧・・・シミター、レイピア、薙刀・・・剣ではあるが、変わった形の物も。


(冷凍銃や、光子銃、ロケットランチャー等を製造しましょうか?)


いらない。


「面白そうだな。全部貰おうか」


サクラが、じゃらりとお金を出す。

ギルドで狩りに行った際、結構レアを出しているので、それなりにお金は有る。


「お姉さん、有難う!」


女の子が、サクラに抱きつく。


「お姉さん、か。アバターで若作りし過ぎたかな」


サクラが苦笑する。


「俺も同じ様なものだ」


実年齢と、アバターの年齢をあわせる必要はない。

なりたい自分になれば良いのだ。


「お買い上げ、有難う御座います」


「いや、こちらこそ。なかなか良い品のようだ。また来させて貰おう」


「武器種が決まりましたら、更に上位の品も有りますので」


女性が微笑む。

サクラが買ったのは、基本的にはコモンの武器。

粗悪品では無いが、強い武器では無い。


「お姉さん、こっち来て!凄いのを見せてあげる!」


「これ、カエデ!」


女性が、咎める様な声を出す。


女の子──カエデに連れられて地下に。

そこで、カエデが持ってきたのは・・・1本の刀。


「これは、妖刀・・・ですね」


オトメが、警戒した様子で言う。

呪われた武具・・・時々見つかる。

装備すると、バッドステータス、呪いが発生。

普通はステータス低下くらいだが・・・


(強い魔力・・・いえ、怨念・・・思念・・・を感じます。迂闊に装備すると、意識を乗っ取られそうですね)


ロリアも、警戒色濃い声音で言う。

人斬りとかになるのだろうか。

ゲーム内に入り込んでたらどうなるのだろう?


(むしろ、スマホモードでプレイしていても、意識を持って行かれるかも知れないですね)


おいおい。


「刀か・・・強そうだな」


サクラが手を伸ばすと──


「いけません!」


女性が、静止する。


「アレは、売り物では無いんです・・・以前お売りした際、困った事になりまして・・・」


女性が目を伏せ、


「しかも、何故かうちに戻って来てしまいまして・・・」


「カエデ、ちゃんと拾ってきたんだよ!偉い?」


「カエデが拾ってきたの?!」


理由判明。


「うん、連れて帰れって言われたから!」


妖刀は、地味にこの店が気に入っているのだろうか。


「なあ、これあたいに売ってくれないか?金なら言い値を出すぞ?」


「駄目です・・・これは、教会に持って行こうと思っているのです・・・これ以上、悲劇をおこす訳には・・・」


カエデがまた連れ帰らないようにな。

ちょっと憑かれてるのかも知れない。


「教会・・・教会に納めると金を取られるが。聖者ギルドなら無償で引き取ってくれるから、そっちで良いんじゃねえか?」


聖者ギルド。

プレイヤー達によるギルド。

ギルドマスターは、六英雄の1人、アリス。

現実リアルでもそれなりに活躍しているが、会った事はない。


「確かに・・・生活に余裕は無いですが・・・」


「ねーねー、おか〜さん。このお姉さんに売ったら良いと思うの!また帰ってきたら、また売れるよ!」


「カエデ?!」


何度も売れて、便利だね。

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