第32話 ロザリー

(女の子、少し呪われていますね・・・仕方有りません)


ふわ・・・


ロリアが、ロリアの姿をとる。


「うお?!」


サクラが驚きの声を上げる。

まあ、実際問題、ロリアの姿を知っている者はいないだろう。

なので、実はあまり問題は無い。

無論、カゲや月花は知っているが。


(私の事は・・・そう、ロザリーと呼んで下さい)


分かった。


「私はロザリー、カギロイ殿の従魔である。良くないものに憑かれておるな」


ボウッ


空中に描かれる、無数の蒼い光・・・魔法陣。

幾重にも重なり・・・


「わ・・・うう・・・」


カエデから、黒いモヤが浮き出て。

刀へと吸収されていく。


ジ・・・


蒼い光が、刀を包む。


「これで良いだろう。刀を抜かなければ、半年は封印できると思う」


「カ・・・カエデは大丈夫なのでしょうか?」


「案ずるな。憑かれていたと言っても、協力者に近い。害は加えられていないようだ」


共犯者っぽかったな。


「ますたー、まだ従魔がいたんだな」


「あまり群れるのは好きで無いのでな。悪いが、内密に頼む」


ロリアが頭を下げる。


「ふーん。まあ、ロリアの存在がトキにバレるとややこしそうだよな」


「そういう事だ」


・・・


?!


「・・・何故、私の名が分かった?」


「カマかけ、だよ。やはりそうか。この前、ますたーが、不自然にロリアの名を出したからな。もしかしたら従魔にいるのかなと思っていたんだ」


・・・サクラ、本当に鋭いな。


「まあ、みんなには黙っておくよ──さん」


「ああ、頼む」


やべー。

全部バレてる。


--


店を出て、手近なダンジョンヘ。


「ますたー、どの武器種も扱えるのか?」


「ああ。本当の職業はレンジャー系列だからな。全ての武器種を扱える」


「レンジャー系列・・・全ての適性がAだっけか。メインをレンジャー系列にするのはますたーくらいだろうなあ」


レンジャー、意外と強いぞ。

他職業だと、もっと強いけど。


じゃ


サクラが、槍を構える。


「ますたー、打ち合って欲しい」


「分かった──ロリア」


ひゅん


俺の右手に、ロリアが飛び込み・・・棒の形を取る。

刃の無い、安全仕様。


カカカカカッ


隙を作る事で、サクラの攻撃を誘い、動きを覚えさせる。

しばらく打ち合った後、


「やっぱり何かしっくり来ないなあ・・・」


ザッ


サクラがやりを地面に刺──そうとして、槍先が滑る。

ダンジョンの床は、地味に破壊不可オブジェクトなんだよな。


「次は何を試すんだ?」


「・・・斧・・・かなあ・・・」


サクラが槍を仕舞うと、斧を出す。


にゅにゅにゅ


ロリアが斧に変化する。


ダッ


サクラが斧を構え、向かってきた。


--


惨劇。

店内には血が飛び散り、血まみれの母親と・・・その母親に庇われた少女、カエデ。


「・・・?!」


サクラが目を見開き、駆ける。


「あ・・・あ・・・」


怯えるカエデ。

動かない母親。


「気絶しているだけだ、まだ息があるな」


ロリアが、母親の腕を掴み、告げる。


「教会・・・医者・・・いや・・・大通りに出て、僧侶系列の職業のプレイヤーに呼びかければ」


「それでは間に合うまい」


サクラが叫ぶが、ロリアが冷静に告げる。


「そ・・・そんな・・・」


サクラが膝をつく。


「それより、何があった?」


俺はカエデの傍に跪くと、話しかける。


「お・・・お母さんが・・・お母さんが・・・!」


「落ち着け。君が騒いでも、母親の容態には関係が無い」


「ますたー?!」


サクラが叫ぶ。


「それより娘よ。状況を報告して欲しい」


オトメが、感情の無い声で告げる。


結局、全ての武器がしっくり来ず、追加の武器を買いに来たのだが・・・

血なまぐさい臭いに、急いで中に入ってみれば。

この惨状だったのだ。


「お・・・お母さんを・・・お母さんを・・・助けて!」


「不要です」


オトメが、淡々と告げる。


「ますたあ?!くそ・・・回復アイテムでも買っておけば・・・いや・・・僧侶系の職業をやっていれば・・・と・・・とにかく、外に出て助けを・・・!」


いや、だからな。

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