第30話 焼き払いますか?
「レーヴァテイン、コキュートス」
ロリアが、詠唱を省略して魔法を行使。
それなりに派手な魔法が飛び、ドロップが吹き上がる。
深く蒼い森のダンジョン。
思った通り、敵はそこ迄強くない。
無論、俺がソロできる程易しくは無いが。
出てきた虹の宝箱を、蹴飛ばして開ける。
やはり、吹き上がるドロップ。
ロリアの収納もかなり拡大したので、落ちた物は基本、そのまま入れている。
ダダダダ
オトメが両手の指から弾丸を飛ばし、軽快に魔物を狩る。
きしゃあああああ
素早い動きで、ケモノがオトメに迫る。
コイツ・・・周囲の敵より、格上だな。
ルーチンワークでだらだらと魔物を倒していると、こういうのにやられる。
ジュ
オトメの目から光が走り、ケモノは蒸発した。
格下狩り場であれば、別に困りはしない。
ドロップは、良い物が出る。
普段は物理兵装しか使っていないが、電磁兵装や光子兵装を使えば、強さは飛躍的に上がる。
時空兵装はもはやチートレベル。
・・・
何もしてなさがやばい。
「シルビア殿は、能力強化スキルで我らを強化していますし。魔石や武器での強化もしてくれています。そういう職業、と言う事で良いのでは」
「今回は普通に、ウェポンマスターとかやる予定だったんだがなあ。何だよ、バグって」
セカンドジョブスロットも使えないという。
:「でね、近くにできたパン屋さんでね」
ギルドチャットのシャウトで、雑談が続いている。
雑談をしながら、まったりとソロ。
やはり、ギルドは良い物だ。
LJO後期の様なギルド、義務と規律の塊は御免だが。
:「塩パン・・・それは美味しいのでしょうか・・・」
さらっと、月花がギルドチャットに交じる。
月花のパンは美味しかったが、普通にパン。
「塩パン・・・見た事は有りますが、食べられないですからね。別の食べ物ですが、研究所の分析マシーンを乗っ取って、味わってみた事は有るのですが」
塩パン分析した痕跡が有ればびっくりされると思う。
:「塩パンか・・・この前食べた、塩メロンパンは、なかなか美味かったな」
俺も混ざる。
:「あ、ますたー、いた!ちょっと頼みが有るんだけど!」
サクラに話しかけられる。
何だろう?
:「何だ?」
:「どうも最近、剣がしっくりこなくて。色々武器を試したいので、教えて欲しい。ますたー、色々な武器に詳しいだろ?」
詳しくないぞ。
弓と剣、槍と斧、鎌と鞭、短剣と・・・
「必要であれば、あらゆる武器になれますよ?」
「666種類の武器のチュートリアルはスキップしたから、簡単な物しか扱えないぞ」
「666種ですか・・・?」
そもそも、ロリアが変化した武器なんて、危なくて地上では使えない。
破壊不可オブジェクトを潰したりはできないが・・・格上の魔物でも、豆腐を切るように倒せてしまう。
今はダンジョン攻略中だが・・・まだ時間はかかるし、サクラを手伝っても良いかな。
このダンジョンはまた今度にしよう。
:「ますたー、今どこにいるんだー?」
:「今は、迷いの森ダンジョンだな」
森に違いは無い。
ギルド情報に、居場所通知機能は無いから、バレはしない。
:「じゃあ、あたいも迷いの森ダンジョンに行くよ」
行っても誰も居ませんよ。
:「いや、アジトでまっておいてくれ。今から戻るよ」
スキル、ダンジョンエスケープを発動。
ダンジョンから出られる。
ただし、脱出不可のダンジョンからは出られない。
ひゅん
ダンジョンの外に出る。
ひらひら
サクラが手を振る。
・・・
読まれていた・・・だと・・・
「やっぱりこっちの森かあ。そうじゃないかと思ったんだよなあ」
サクラが笑う。
ギ・・・
レベル13,000くらいのワームが、サクラを攻撃。
ガッ
オトメが、シールドを展開し、サクラを護る。
「え」
サクラがようやく事態に気付き、目を見開く。
ザンッ
なめらかな動きで、オトメがワームを切り裂いた。
レーザーブレイド。
あまり強くは無い。
「サクラ様、もう少し身の丈にあった行動を取られる事をお勧めします」
オトメが困った様に言う。
「・・・ごめんなさい」
サクラは素直に謝った。
--
街。
サクラと2人、いや、オトメを入れて3人だ。
プレイヤーとNPCが混じり合い、流れるように動いている。
本当に人が多いなあ、この街は。
(焼き払いますか?)
払わない。
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