第29話 僕は君の剣になる

俺、非モテなんですけど・・・

生まれてこのかた、彼女いた事ないんですけど・・・

というか、好意をもたれたことすらないんですけど・・・


(逆に凄いですよね)


ロリア、お前酷すぎないか?!

何で傷に塩塗り込むんだよ?!


(今のは、あちこちでフラグを建てて、モテまくっているのに、それに一切気付いていない、そこが面白みなのではないかと、機械の私は考えます)


いくら俺でも、そこら中でフラグ建ててたら気付くわあああああああ!


「・・・?照れ隠しで誤魔化している・・・という訳では無さそうですね。まさか・・・お姉様を忘れたのですか?」


トキが悲しそうな顔をする。

誰だ・・・?


・・・


トキ?


解子?


「まさか・・・トキが、フェルの妹の解子ちゃん・・・か・・・?」


「はい。貴方のかつての恋人、フェルの妹です」


「いや、俺は別にフェルと付き合ってはいないんだが・・・?」


「え」


「多分、フェルにからかわれたんじゃないか?」


「え・・・え・・・でも・・・でも・・・幻獣ウォリプスの背中で・・・」


何?!


幻獣・・・ウォリプス・・・?


・・・


あ。


思い、出した。


幻獣ウォリプス。

前魔王討伐の前夜・・・フェルと一緒に行ったフィールドで・・・


そう。


あの時フェルは、言ったな。

全てが終わったら、会いたい、と。


だが、その約束はかなわなかった。


フェルと次に再会したのは──


「トキ──やっぱり、俺はフェルとは付き合ってないぞ?」


思い返してみても、付き合ってないな。

その事実は変わらない。

結局、フェルが何を言いたかったのかは永遠に分からないし・・・想像もできないが。


「え・・・あ・・・あれ?」


トキがうずくまり、頭を抱え込む。


(全て分かってる、とか言いながら、格好悪い気がします。恥ずかしく無いのでしょうか?)


口に出すなよ、それ。


「・・・まあ、事情は分かった。フェルの妹さん・・・フェルから、宜しくと頼まれていた。同じギルドメンバーでもあるし・・・これから、よろしくな」


「・・・あ、は、はい。宜しく御願いします」


トキは立ち上がり、ぺこり、と頭を下げる。


「貴方の事を広める気は有りません。五英雄や・・・ソフィアにも」


ソフィアを強調したな。


「トキは、ソフィアと仲が良いのか?」


「はい。姉同士が友人だったので、かなり昔から知り合いでしたので」


姉──フェルか?

案外、ソフィアの姉も、LJOをやっていたのかも知れない。

それにしては、ソフィア弱すぎたよなあ・・・


「・・・まあ、ソフィアは底が知れない。ソフィアには秘密にしておきたいところだな」


「そうなのですか?ソフィアはあんなにシルビアさんのファンなのに」


トキが不思議そうに言う。

何でだよ。

ソフィアが俺のファンとか、あり得ないだろう。


・・・そう言えば、ソフィア、妙に俺の事を調べていたな。

案外、ファンというのも本当かも知れない。


「私もソフィアも、シルビアさんの事は良く、姉から聞かされていたので」


「姉・・・フェルだな」


「フェルと、フィロさんですね」


ん?

何故フィロ・・・


・・・


まさか。


「あれ、シルビアさん、聞いていないのですか?ソフィアは、フィロさんの弟ですよ?」


何・・・だと・・・?


「あれ・・・てっきり、それを知っているから、ソフィアに色々任せたんだと思ってたんですが・・・?」


小首を傾げる。

・・・単に積極的にのってきたから、良いようにさせただけだったんだが。

言い辛い。


「フィロさんが、自分に何か会った時に、ソフィアが独立して動けるよう、ソフィアのキャラは他の五王やシルビアさんには伏せていたそうです・・・が。最後の瞬間まで黙っていたとは思いませんでした」


思い返せば、色々と不自然な事はあったな。

気付かなかった、当時の自分の未熟さに呆れる。


「・・・機会を見て、ソフィアには改めて挨拶に行くよ」


「そうして下さい!ソフィアもきっと喜びますよ」


トキは微笑むと、


「とにかく、シルビアさんは、私には色々隠す必要は無いです。私は全てを知っていますから」


まあ、色々と隠すのは、それはそれで窮屈だ。

トキの前では、ある程度肩の力を抜いても良いのかも知れない。


「あの魔石の量・・・今回もやはり、レンジャー系列を極めているのですよね」


「まあ、な」


というか、レンジャー以外をするつもりだったのに、バグのせいでレンジャー以外になれないんだが。


「レベルも、1,000を超えてそうです」


1,000じゃリヴァイアサンを倒せないぞ?


「貴方が・・・今作での、シルビアさんの従魔ですね」


トキが、オトメに微笑みかける。

オトメが、綺麗な笑みを浮かべる。


「ああ、それと──」


(待って下さい)


ロリアを紹介しようとして──ロリアが静止する。

どうした?


「ところで、トキ様・・・魔王ロリアの名前を聞いて、怒っておられたようですが?」


オトメが尋ねる。


トキは、その綺麗な顔を曇らせると、


「・・・当然でしょう?ロリアは・・・あの最悪の女は・・・友人であるフェル・・・姉を・・・殺したのだから」


・・・あ。


「大量虐殺した・・・勿論それは許せないのですが・・・それでも私は・・・大好きなお姉ちゃんを殺したロリアを・・・許せない」


凍り付く様な声で・・・トキが言う。


・・・そう。


フェルが魔王である事実は・・・誰も知らないのだ。

あるいは、ソフィアは気付いていたのかも知れないが。

・・・気付いていたのだろうな。


恨んでいるロリアが実際には汚名を着せられた者で。

実の姉は、友人やロリアを殺害した存在。

それは、決して、耐えられる事実では無いだろう。


俺が友人の名誉を護るためについてしまった嘘は。

友人の妹を護っていたのだ。


(シルビア殿・・・私は、いないものとして扱って下さい・・・いえ、私は貴方の剣となります)


ロリア・・・すまない。

そして、有り難う。


(弓ではなく、ですか?)


そういう話ではない。


「ロリアは、俺が滅ぼした。いや、俺1人で滅ぼせた訳じゃ無い。六王と、六英雄と・・・そして数多の人々のお陰で・・・俺は、アレを成し遂げた。今はもう・・・この悲しみのない世界を享受すれば良い」


俺は手を上に掲げると・・・虚空を掴む。


「はい・・・大丈夫です。過去は、過去。私は・・・いえ、みんな、顔を上げて、前に進んできたんです」


10年前。

インフラは壊滅・・・流通は破壊され・・・食料の確保どころか、水の確保すら難しかった。

人類も、働き盛りはほぼ死滅。

老人も生存は難しく・・・残ったのは、体が不自由な者と、幼い者達。


それでもみな、顔を上げ、前に進み・・・


英雄達を作っておいたのは、正解だった。

LJOでの強さは、かなりアレだったが。

リアルでの指導力、知識、見識・・・それらは素晴らしかった。

五英雄がいなければ、現在の人類の復興は、無かっただろう。

・・・ただ、五英雄に依存し過ぎる状況になってしまっているので、そろそろ五英雄の財閥を解体しないといけないのだが。


カゲが、独立して活動したのは先見の明があったと思う。


「それにしても・・・シルビアさんと会えて良かったです。100歳を超える寝たきり、と聞いていたので・・・もしかしたらもう・・・と、失礼な事を考えていました」


トキが微笑む。

何でだよ。

誰だよ、そんなデマ流したの。


(トキ様って・・・ドヤ顔で、全てを知っていますって言ってたのに・・・何も知らないんじゃ無いでしょうか・・・?恥ずかしく無いのでしょうか・・・?気になります・・・)


口に出すなよ。


***********

2019/10/06

五英雄に異存し過ぎる状況になってしまっているので

→依存

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