第21話 触手と職種

「サクラさん、トキさん。前方から3体来る、警戒を。エレノアさん、ユウタさんから離れないで。レイさん、サクラさんの敵を引き受けて」


指示を出しつつ、


バシュ


横湧きしたキノコを撃ち抜く。


「大分安定してきましたね。次の階層に行きましょうか」


ユウタの提案。


「駄目にゃ。2階層は、推奨レベルが30以上にゃ」


「30以上なら、満たしていますよぅ?」


「にゃ?!いつの間ににゃ?!」


レイ ニンゲン 女 Lv.33 アコライト Lv.24

ユウタ ニンゲン 男 Lv.28 アコライト Lv.22

サクラ ニンゲン 女 Lv.37 ファイター Lv.26

エレノア ニンゲン 男 Lv.29 メイジ Lv.22

トキ ニンゲン 女 Lv.53 マーチャント Lv.41

カギロイ ニンゲン 男 Lv.30 ファイター Lv.30


成長早いな。


(一撃で3桁上げれる人の台詞では無いかと)


俺だって、LJO初期はもっと遅かったよ。

始めたところにしては、異常な速度だと思う。


「分かったにゃ・・・カギロイさんに判断を仰ぐにゃ」


「ん?別に大丈夫だと思うぞ」


「じゃあ、行くにゃああ!」


陣形を保ちつつ、移動。


・・・


ん?


何で俺に判断委ねるんだ。

俺、大人しくついていってただけだよな。


(カギロイ殿は、やはりリーダーが似合いますね)


何でだよ。


--


けり


宝箱を蹴飛ばし、鉄の宝箱を開ける。

中からは、[UC]鋼の剣。


「ちょっと良い物が出たな。サクラ、使うか?」


「お、良いのか?有難う!」


サクラが嬉しそうに受け取る。


「鉄の宝箱を、あっさり解錠・・・おかしいにゃ」


・・・あのなあ。


「トキさん。ファイターを何だと思ってるんだ?罠の解除や宝箱の解錠ができないファイターがいてたまるか。ちょっと失礼だぞ」


「ファイターを何だと思ってるにゃああああああ?!」


あれ。


「レンジャーとは言わなくても、せめて盗賊職じゃないと、鉄の宝箱以降は厳しいにゃ」


「DEX多目に振って、スキル成長させれば余裕だと思うが」


「解錠とか伸ばすなら、戦闘技能上げたいけどなあ」


サクラが言う。


--


「3階層・・・!」


レイが嬉しそうに言う。


「トキさん、推奨レベルは?」


「む・・・3階層以降は調べて無かったにゃ。少し待つにゃ」


トキがログアウトする。

見に行ったのか。


(地下水路ダンジョンの3階層は、6人PTでの推奨レベルは100以上。魔法攻撃しか効かない敵、物理攻撃しか効かない敵がいるので注意。触手を持つ敵が、毒や麻痺といったステータス異常攻撃をして来るので注意だそうです。あ、『触手』が『職種』に誤字していますね)


推奨レベル100以上なら無理だな。


ややあって、トキが帰還。


「見てきたにゃ!推奨レベル30以上だから、大丈夫にゃ!」


それ、2階層じゃね。


「え、2階層と推奨レベル同じなのですかぁ?」


エレノアが小首を傾げる。


「トキさん。2階層と見間違えてないか?後、『触手』、の字が誤字ってるから直しておいてくれ」


「にゃ?!ちゃんと3階層見たにゃ・・・?」


ややあって、


「100レベルだったのにゃあ・・・行っちゃ駄目にゃあ・・・後、本当に誤字ってたにゃ・・・?」


やっぱり、五英雄のデータベース利用しているのか。


「じゃあ、行こうか!」


レイが嬉しそうに降りようとする。

待て。


「レイさん、レベルが足りないから、先に進むのはやめようって話していますよ」


ユウタが、優しい声音で言う。


「でも、『もうみんなレベル100以上』だよ?」


あれ・・・?


「『みんなレベル100以上』だから、次の階層も、『余裕で行ける』よ」


・・・んん・・・?


「あ、そうでしたね」


ユウタが頷く。


「行くにゃああああ!」


トキが右手を握り、掲げる。


そうだな、行くか。


--


「はっ!」


レイの回し蹴り。

スケルトンソルジャーが、盾のブロックも間に合わず、まともに受けて仰け反る。


ザンッ


サクラの追撃。

スケルトンソルジャーが更に態勢を崩し。


「フレアアロー!」


エレノアの魔法が炸裂。

スケルトンソルジャーが炎上し、


「にゃっ!」


トキの斧の一撃。

スケルトンソルジャーが息絶えた。


ガラ・・・横湧き、不意に、エレノアの側にスケルトンが出現。


「チャージ!」


剣を構えて突進。

スケルトンをノックバックさせる。


「「ヒーリング!」」


レイとユウタがヒーリングを行使──スケルトンに。

聖なる力を受け、スケルトンが苦しそうに呻く。


「はああああ!」


サクラが息をつかせぬ連撃。

そして、スケルトンは崩れ落ちた。


「ふう、意外といけるにゃあ。余裕だにゃあ」


ガタ・・・


スケルトンジェネラルが1体、スケルトンが2体。


「トキさん、フラグを建てるのは、地上に戻ってからにして頂けますか?」


「にゃああああああ?!」


まあ、危なげ無く終わり、


「ふう・・・カギロイさんのお陰で乗り切れたにゃあ」


何故俺。


「カギロイさん、すごーい!!」


レイが抱きついてくる。


「俺は何もしてないけどな」


苦笑しつつ、レイの頭を撫でる。

ちなみに、本気で何もしてない。

少し口出しした程度だ。


「凄いじゃねえか!」


ぎゅむ


サクラが抱きつく。

わっ。


「こ、こら、サクラ!」


レイの様な小さな女の子なら可愛げが有るが。

流石に、サクラの様な女性に抱きつかれると、焦る。

NLJOは、本当にリアルなのだ。

体温や、湿り気、息遣い、匂い迄体感できてしまう。

非モテには、未知の体験だ。


「何でだよ、レイも抱きついてるじゃねーか!」


子供と大人が張り合うな。


「ともかく、地上に戻るぞ。そろそろ休憩しよう」


俺は、そう提案した。

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