第19話 オートアタック

「ちょうどダンジョンを体験して貰おうと言ってたんだ」


ライトが言う。

どう見ても、外でレベル上げすべきレベルだと思うが。

まあ、進む方向は、俺が来たのとは別の方向。

俺が篭っていたダンジョンでは無いのだろう。


「ダンジョン、楽しみです!」


レイがくるくる回りながら言う。


「城の裏手にある入り口から、地下水路ダンジョンに行ける。最初は城からの隠し通路だったのだけど、ダンジョンマスターが棲みついて、ダンジョン化してしまった・・・と言う設定だ。初心者の訓練用にちょうど良い」


ライトの解説。


ライトの指示通りNPC何体かと話し、フラグを立て、通行証をゲット。


<インスタンスダンジョンが作成されました>


ダンジョンへと入る。


「暗いですね」


ユウタが言う。


「うん。ダンジョンは、この様に、明かりが必要なタイプも有る。道具を使うか、メイジの灯りの魔法を行使するか」


ライトがそう言いつつ、ランタンに火を灯す。

周囲が、ぼんやりと照らされる。

まあ、俺には最初から、昼間の様に見えてるんだけど。

レンジャーの暗視だ。


レベルやステータスを調整しても、スキルは失われない。

明示的にオフにする事はできるけど。


情報提供って言っても、かなり初心者の説明だったかな。

選択誤った感はある。


キキ・・・


ネズミが近付いてくる。

レベル1でも問題が無い雑魚だ。

大きさは、膝丈くらい。


「わっ、大きいですねぇ」


エレノアが、身構えて言う。


ライトが、解説する。


「画面の、ジャイアントラット、って名前あたりをタップすると、自動攻撃を開始する。スキルを使う場合は、ショートカットをタップから、続けてターゲットをタップ」


え。

ライトは、スマホプレイかあ。


わたわた


手を顔の前で振りながら、


「名前?!タップ・・・ショートカット??」


困惑した様に言う。

おや。

レイは、のかな。


「タップって言うのは、指で触れる事だね。画面のネズミの頭に触ってみて」


ライトが言い直す。

そんな説明だと・・・


「ん・・・」


レイがおそるおそるジャイアントラットに近づき・・・

額に、ちょんと触れる。


がぶり


レイが噛まれる。

ですよね。


「痛ぁい?!」


「だ、大丈夫?!癒しよ・・・ヒーリング!」


ユウタが慌てて駆け寄り、レイを回復させる。


「こいつ!」


サクラがジャイアントラットに斬り掛かる。


「にゃ!」


トキの一撃が、ジャイアントラットを昏倒させた。


「やっ!」


レイが叫び、ジャイアントラットに蹴りを入れる。

それがトドメとなり、ジャイアントラットが倒れた。


「そうそう、そうやって同じ敵をタゲる事で、敵の回避や防御が下がり、倒しやすくなる。複数敵が出た時は、ターゲットを決めてからタップするのも有りだよ。一度、オートアタックが開始しても、別の敵をタップすれば、オートアタックのターゲットは切り替わるよ」


「・・・オートアタック・・・?」


サクラが困惑した様に言う。

トキは苦笑い、レイ、ユウタ、エレノアは困惑。

これ・・・ライト以外、全員いるな。


スマホ画面でプレイしていれば、ライトの言う通りの操作方法なんだが・・・


ゲームの中に入り込んでいると、目の前に敵がいて、自分で動いて、殴ったり、魔法を使ったり、だ。

タップだの、オートアタックだの言われても、分からない。


尚、行動に対する、システムのアシストは有る。

攻撃モーションの補正、回避の補正等だ。

設定でオフにもできるけど。


「あ、ごめん。奥さんに呼ばれた。えっと・・・入口付近なら安全だから、この付近でレベル上げしててくれるかな?」


「分かったにゃ!」


トキが元気良く返事する。

さっき苦笑いしてたし、これ以上有益な情報を得られないと考えてそうだ。


「何か分からない事や、困った事が有れば、PTシャウトで教えてね」


「はーい!」


レイが元気良く返事する。

多分、この娘は裏表無さそうだ。


ライトが、灯りアイテム、回復アイテム等を幾つか渡すと、ダンジョンの外に出た。


「よし・・・行くよぉ!ダンジョン攻略、開始ぃ!」


「待つにゃ?!」


レイが勢い良く走り出そうとするのを、トキが止める。


「此処は、1階層は低レベルにゃが・・・2階層以降は難易度が上がるにゃ。奥に行くのは駄目にゃ」


「でもぉ・・・さっき、結構余裕で敵倒せてましたよぅ?」


「1体だから大丈夫だったのにゃ。1階層でも、奥に行けば複数出るにゃ」


エレノアの発言を、トキが否定。


「とりあえず奥に進んでみて、問題が有れば引き返せば良いんじゃねえか?」


サクラの提案。


「先程の、ライトさんが一緒ならその手もあるにゃが・・・みんなレベルが1、この状況では、強い敵が出たら対処できないにゃ」


「なら、倒せなさそうな敵が出たら、俺が数を減らそう。それで良いか?」


「その自信は何処から来るにゃ?!レベル1にゃよね!さっき明らかに反応遅れてたにゃああ?!」


おおっと。

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