第15話 蠱毒

「私1人では限界です。従魔を増やして下さい」


「いや・・・そうは言うがな」


増やそうと思って増やせるものじゃ無いだろう。


「普通は、増やそうと思わないと増やせないんですが・・・」


とりあえず、システムメニューからヘルプを確認。

ふむふむ・・・


「従魔にしたい、という強い意志を持って戦闘を行い、勝利する。勝利後、極稀に敵が起き上がり、仲間になりたそうにこちらを見る、か」


やった事が無いな。

まあ、以前のアレは、従魔っぽく扱ってただけで、実際には従魔システムとは違ったみたいだしな。


「と言う訳で、戦闘後、起き上がってから考えよう。その立札はしまってくれ」


従魔オーディション参加希望者、と書かれた立札──ロリアに告げる。


「・・・既に並んでいる魔物はどうするのですか?」


「帰ってもらえ」


この一瞬で、3体も並んでるんじゃねえ。

お前等、文字読めるのか?


魔物から抗議の声が上がる。


「とりあえず、話だけでも聞きませんか?」


「・・・分かった、話だけだぞ」


そもそも、普通に出現した事ない種類の魔物が、何故混ざっているんだ?


--


「求めているのは、攻撃魔法、支援魔法、回復魔法が使え、頑丈で、物理攻撃もできる奴だ。面倒だから、弱点属性が有る奴は失格だ」


こちらの希望条件を述べる。


「エントリーナンバー、1番。スケルトンジェネラルです。高い魔法防御、再生能力が有ります。物理攻撃で崩されても再構成されるので、実質は物理攻撃は無効です。自分から分解して、敵にぶつかったり、無数の魔法を雨の様に降らす事もできます」


面倒な敵だ。

でも、聖属性に弱そう。


「エントリーナンバー、2番。ディープワンです。多種の闇魔法、奈落魔法を扱えます。粘液が身体を覆っているので、物理攻撃と魔法攻撃、どちらも効き辛いです。そもそも、神速の動きを誇っているので、視認すら難しいでしょう」


良く分からないが、強そうだ。

一つ言える事は、この階層で戦った事は無い。


「エントリーナンバー、3番。ネプチューンです。全魔法を操り、特に水系統の魔法は得意です。弱点属性も有りません」


蒼く長い髪をした、美しい女性。

神様の名前だったような・・・?


「ジ・・・エントリー・・・ナンバー・・・フォー・・・。オートメディック・・・デス。コウゲキ・・・デキマセン」


さっき、3人しか並んで無かったと思うんだが。

後、募集条件満たして無いよね。


機械のゴツゴツした球体。

目?だろうか。

直径の半分程のレンズがついている。


「どうやって選ぶんですか?」


「・・・戦わせて、勝ち残った奴か・・・?」


ロリアの問いに、答える。


「「「じゃんけーん」」」


3人の声が唱和。

じゃんけんかよ。


「「「ちょき」」」


無言でふよふよ浮いている、オートメディックは、多分グー。


「「「・・・次の機会には、是非・・・」」」


あっさり諦めて、帰って行く3人。

いや、この球体も連れて行けよ。


「コンゴトモヨロシク」


よろしくしねえよ。


--


ザンッ


大剣で、巨大なダンゴムシを切り裂く。


ぶわっ


緑の毒霧を吐き出す。


ジャギ


斧に変化させ、


「烈風撃!」


風が巻き起こり、毒霧を散らす。


「オケガハ、ダイジョウブデスカ?」


結局付いてきた球体が、ヒーリングを行使。

特にダメージを受けていないので、意味は無い。


「カギロイさん、従魔を増やしませんか・・・?」


「一応増えたっぽいが?」


ちゃっかり従魔枠に入ったし、しまう事もできない。

従魔契約を解除したい。

そもそも、ロリアと交わしたあの呪文はどうなったんだ?


せめて、機械っぽく、敵の情報でも解析してくれれば・・・


「ピピ・・・前方よりリザードエリート、推奨32,000レベル、2体。デッドリーオクトパス、推奨29,000レベル、1体。接敵まで後60秒」


解析できるのかよ。

後、敵が強過ぎないか。


解析だけされても、戦闘アドバイスが無ければ意味が無いが。


「リザードエリートは物魔万能タイプ。電撃属性が弱点です。デッドリーオクトパスは、攻撃回数は多いですが、命中率は低いです。やはり、電撃属性が弱点です」


戦闘アドバイスを貰っても、活かすのは難しい。

属性攻撃は難しいから、結局は物理で殴る事になる。


「と言いますか、何気に、流暢に話していたような」


ロリアのツッコミ。

そう言えば。


「ご主人様の為に、アップデート致しました。だって、乙女だもの」


乙女なのか?


ディック、だからでしょうか?」


ロリアの解説。

分かり辛い・・・


ぴちゃ、ぴちゃ・・・


予測通り、リザードマンと蛸が来る。

とにかく、殴る。


ヴァリ


オートメディックが雷を放ち、リザードマンの一体を攻撃。

あまり効いてはいないが、攻撃しただけ進歩ではある。


オートメディックも攻撃に参加しつつ・・・

でも結局は、俺とロリアで殴り殺した。

30分、といったところか。

この通路に入った直後よりは、マシになった。


ブオッ


オートメディックが爆風を発し、緑の光が散る。

少しは役に立つ。


「オートメディックに、名前は与えないのですか?」


「まだ従魔にすると決めた訳じゃ無いんだが・・・」


そもそも、従魔になった奴、最初から名前持ってた気がする。


「名前は無くても構いません。ご主人様のお側にいられればそれだけで」


「そ、そうか・・・」


まあ、敵の識別や妨害、回復、支援・・・微力では有るがやってくれるし、良いか。

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