第4話 チュートリアルと緑の芋虫

転移、だろう。

一瞬後には、洞窟の中に立っていた。


にじにじ


足元に、緑色の芋虫が歩いてくる。

大きさは、膝くらいの高さ。

リアルでいたら発狂物だが、ゲームでは別に珍しく無い。


「では、倒してみて下さい」


梟の指示通り、芋虫に近付き。

最初から持っていた剣を振り上げ・・・


ザンッ


きゃう


斬り付けられ、芋虫が仰け反り、少し後ろに下がる。

ノックバックだ。

タイミング良くノックバックさせれば、一方的に攻撃ができる。


ザンッザンッ


都合、3回。


きゅうう


芋虫が地面に横たわる。

倒したのだ。


「こんなもんか?」


「普通ですね」


普通で悪いのか?


「やれやれ・・・貴方にはがっかりです。もっとこう・・・ずばずばばあああってなって、じゃじゃじゃーんってなるかと思ったのですが。失望しました」


「黙れ、毟って焼くぞこの梟野郎」


何を期待しておられたのか分かりませんが、期待に沿えず申し訳有りません。


「いえ、大丈夫ですよ。私達が勝手に期待し過ぎていただけです。警戒も解いておきますので、日和見に冒険をお楽しみ下さい。六英雄への監視だけで手が回らないので、貴方に割くリソースは正直無いのです」


梟がふかり、と礼をする。


「じゃあ、さっさと始めさせてくれ」


お時間を頂き有難う御座いました。


「いえいえ、こちらこそ、お時間を頂き、有難う御座いました。御礼に、貴方に祝福を」


ふかっ


梟が差し出した羽から光が飛び。

俺を包む。

梟でも、祝福とか出来るんだな。


-----------------------------------------

名前:カギロイ(真名:シルビア)

種族:ニンゲン

種族レベル:1

ファーストジョブ:レンジャー

職業レベル:1

セカンドジョブ:なし

STR:8

AGI:8

DEX:8

VIT:8

INT:8

MEN:8

BONUS:0

武器:なし

防具:なし

装飾:なし

備考:

 [NEW]ふくろうのかご

  ・探知、看破を無効にする。

   ただし、付与者より格上の

   存在には無効。

  ・ステータス、レベル、職業等を偽装できる。

   数値を実際より低く偽装した場合、

   その数値にまで能力が制限される。

-----------------------------------------


偽装できる能力は有り難いが。

付与者より格上の存在には無効って。

梟より下位の存在って、どのレベルなんだ?

盗賊職には無効とかか?


この名前の表記も、看破される可能性があるって事か?

ちゃんと時間が経ったら、真名とか言うのが消えるんだよな?


「それでは・・・ようこそ、NLJOの世界へ。お帰りなさい、最後の英雄よ」


梟が告げ・・・また、世界が暗転した。


--


目を開けると、そこは草原だった。

空を見上げる。

雲一つない空。

街道では無い。

進むべき道も、分からない。


レンジャーの能力、マップのスキルは有るが。

当然、全くの空白だ。


さく・・・


心地良い音が聞こえる。

草を足でかき分け、進む。

とにかく進まなければ。

リアルな草の匂いが、鼻に届く。

やはり、このゲームは・・・リアルだ。

最近のフルダイブ型のMMOはかなり進化していたが・・・

仮想と現実・・・その僅かな差が・・・此処には在る。


がさ・・・


向こうから来るのは・・・ウルフか。

さて・・・


俺は、腰に刺さった剣を──


無い。

無いよ、剣。

ナイフすら無いよ。

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