第2話 夢の中・・・?

薄暗い部屋。

まだ日は沈んでおらず、窓から光が差し込んでいる。


夕食の為に買っておいたカップラーメンは、とりあえず放置。


郵便受けに入っていた封筒──βテストの当選通知。

俺は、もどかしさを覚えながらも・・・封筒を開封した。


NLJO──Next Last Judgment Online。

俺が、15歳から、26歳・・・ほぼ10年を捧げたゲーム、LJO。

その後継作品と言われている。


突然のサービス終了・・・あの瞬間は真っ白になったが。

今なら言える。

俺の人生が終わったあの瞬間から、今日まで、生きていたのは・・・今日の為だと。


俺はスマートフォンを取り出すと、インストールしてあるNLJOを立ち上げる。

無慈悲に表示されるダイアログ、βテストコードの要求・・・


[strusreiwameyone]


封筒に書かれた文字を打ち込み・・・


<認証しました>


システムメッセージと共に、画面が先に進む。

そして・・・


利用規約に承諾を選択、オープニングが表示され・・・


<操作キャラクターの容姿を自動生成しました>


そして、キャラメイク。

前作はテキストベースのゲームだった為、キャラメイクはしていない。


デフォルトの容姿も、結構悪くないが・・・少し成長させておく。

16歳くらいの年齢から、26歳くらいの年齢へと。

今が36歳なので、10歳程はサバを読ませてもらう。


・・・ん?

まだ職業を選んでいないのだが。

そこで画面が止まる。


暗い、何も無い空間。

地面をタップすると、中のキャラが歩く。


さて・・・何処まで行けば良いのか。


そういえば・・・あれを試すか。


前作で教えて貰った、想像力を高めるおまじない。


ゲームにのめり込んだ結果・・・まるで自分がゲームの中に入っていたような、錯覚を覚えたことはないだろうか?

想像力さえあれば・・・ワイヤーフレームのダンジョン、線だけで構成されたゲーム画面も、深淵に臨む冒険譚となる。


想像力。

俺はスマホに手を翳し、


八百万の神々よ

此方より彼方へ

御魂は乖離し

化身は箱庭に

遊戯の場

我は此処に在る


そして・・・目を開けると、おれはそこに、いた。


見渡す限りの暗闇。

視界の端にあるのは・・・システムメニュー。


没頭。

まるで、自分がゲームの中に入ったかの様な錯覚・・・


「ステータス!」


-----------------------------------------

名前:シルビア

種族:ニンゲン

種族レベル:1

ファーストジョブ:レンジャー

職業レベル:1

セカンドジョブ:なし

STR:8

AGI:8

DEX:8

VIT:8

INT:8

MEN:8

BONUS:0

武器:なし

防具:なし

装飾:なし

-----------------------------------------


なんか、勝手に色々決められてる気がする。

俺名前、まだ入力してないぞ?


「ほーほー、ようこそNLJOの世界に!」


人懐っこい梟が飛んできて、目前にとまる。

空中に、だ。

梟は空中に静止しないと思うが。


「貴方が案内役のNPCですか?」


俺が尋ねると、梟は激昂して、


「NPCとは何ですか?!私は、ご主人様のお使い・・・私のご主人様は、さる高貴なお方に頼まれて、このゲームの製作を手伝っているのです・・・つまり、私はゲーム製作の関係者・・・即ち、このゲームの世界では創世神にも等しい存在ですよ?!」


「・・・開発スタッフですか・・・?何故此処にいるのですか?」


普通、プレイヤーの前に出てこないよね?


「愚問ですね。邪魔をするなら出て行け、と、ご主人様に追い払われたので、こうやって運営の手伝いをしているのです」


もふ、と梟が胸を張る。


「それは最早、開発スタッフですら無いような・・・」


そもそも、追い出されたのなら、運営を手伝っているのも駄目なんじゃ無いのか?

色々と、裏舞台をばらしている感が有るし。


「ほーほー、口のきき方に気をつけ給え!私は、女神様に請われて仕事をするご主人様に隷属する存在・・・即ち、神にも等しい存在ですよ?!」


「いや、違うでしょう」


有名人の母親の妹の友人の知り合い、的な。


それより、


「名前や職業、まだ選んでないのに、勝手に決まっていたのですが」


「ほーほー、それは不具合ですね」


梟が胸を張る。

胸を張るシーンじゃないぞ。

不具合って・・・超ピンポイントで設定されたんだが。

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