第122話 人類を導く者達

「分かった、正直に言おう」


溜息をつくと、白状する事にした。


「お前達を育てて、魔王軍に対抗する・・・これは、嘘だ。お前達は弱い。だから・・・魔王は俺が倒す」


「なっ」


ポラリスが、アーサーが、驚きと抗議の表情を作る。


「お前達には、英雄になって欲しい。そして、ゲームクリア後の現実で主導権を握り、世界を導いて欲しい」


俺がそう告げると、


「シルビア殿が導かれれば良いのではないでしょうか?」


アリスが尋ねる。


「俺は、現実では大罪人だからな。かなりしっかりと手を回されていると聞いている・・・名乗った瞬間国際指名手配、逮捕だろうな」


「そんなの、何とでも!」


ポラリスが叫ぶ。

重ねる。


「それにだ。リアルの俺は・・・そろそろ100歳を超える、良い歳だ。ゲームの中でこそ好きに動けているが、現実では寝たきり。そろそろ隠居させてくれ」


俺の言葉に、静まり返る。


まあ、年齢は嘘だが。


勿論、面倒だから押し付け、というのは有るのだが・・・引き籠もりのガキに、世界を導くなんて出来ない。

こいつ等で良いのか、というのは疑問が有るが・・・俺よりはマシだろう。


「実務は無論補佐するが、人類には英雄が必要だ。名誉挽回も、絶対に何とかしてみせる。だから、成した事に対する栄誉は受けるべきだと思う」


ムサシがそう発言すると、


「良いじゃないですか」


苦笑しつつ、ソフィアが言う。


「世界を救う偉業は、シルビア殿が行う。私達は、その栄誉を甘受し、人類の復興を主導する・・・鮮やかな役割分担です」


「ソフィア殿?!」


ポラリスが叫ぶ。


「私は小物です。魔力も無ければ、知識も有りません・・・ですが、政治や謀略、名誉や地位・・・そういった物が大好きなんです・・・!シルビア殿!是非その話、協力させて下さい!」


ソフィアが目を輝かせ、手を握ってぶんぶん振る。

お、おう。

思う所は有るが、都合が良いのは確かだ。


「・・・そういう訳だ。みんなも、すまないが協力して欲しい」


反論は、無い。


「ところで──我々の役目は、それだけですか?」


ソフィアが尋ねる。


ああ、そっちも伝えておくか。


「もう1つの役割は・・・餌だ。俺も、魔王に取り巻きがたくさんついてたり、魔王の拠点に侵入したり、というのはきつい。待ち受けるにしても、一箇所にプレイヤーを集めておいた方が、襲撃を読みやすい」


「餌って・・・」


俺の言葉に、ポラリスが困惑した声を出す。


「どちらにせよ、我々が単独で隠れていようと、シルビア殿抜きで固まっていようと、見つかるのは時間の問題だと思うでござる。ならば、シルビア殿と一緒にいた方がマシであろうな」


カゲが言う。


「俺も賛成だ。みんなで魔王を迎え撃とう」


アーサーが言う。

いや。


「魔王と戦うのは、俺1人だ。勝算は有る・・・ただ、すまないが、正直、周囲には気を配れない。魔王は任せて欲しい」


頭を下げる。


「我々の力が、シルビア殿に遠く及ばないのは事実。我々は邪魔にならない場所に退避するか、取り巻きの露払いですね」


ソフィアが告げる。


「勝算って・・・勝てるんですか?」


ポラリスが問い掛けるが、


「シルビア殿が負けたら、人類は滅亡する。ただそれだけです」


アリスがのほほんと言う。

・・・まあ、事実だな。


「俺も、自分の責任は理解している。これは・・・六王の友人、六王を束ねていたリーダーとして、そして、力ある者としての責務、だ」


力強く、言う。


「・・・六王のリーダー、とは、どういう意味か?」


アーサーが不可解な表情をする。

あれ?

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