第121話 迫る期限

「ここなら、大丈夫そうかな・・・綺麗な部屋だし」


ポラリスが小部屋で腰を降ろす。


「うん、この床の紋章、魔物がポップする召喚円な」


稼働中かどうかは知らんが。


「休憩なら、泉が有る部屋が良いな。このダンジョンに有るかどうかは知らんが」


ムサシが言う。

有るよ、もう少し行けば。


「でも、未発見のダンジョン・・・少しわくわくしますね」


アリスが微笑んで言う。

俺が踏破済みだし、賢者ギルドにも報告済みな。


「確かに、言えてますね」


ソフィアが頷く。

お前、もう賢者辞めろよ。

床の魔法陣にも興味示さなかったし。


更に進むと、噴水があった。

結界もある。

セーフティースポットだ。


だが。


ふと見ると、カゲも小首を傾げている。

確か、記憶が確かなら、もう少し進んでからの筈だが・・・


「疲れました・・・もう歩けません」


アリスがへたっと座る。

スタミナ回復の魔法はどうした?


「主よ・・・」


ソフィアが祈りの言葉を口にすると、アリスの表情が楽になる。

お前が使うんかい。


「有難うございます。魔道士の魔法も便利ですよね」


アリスが微笑む。

神聖魔法だよ。


マイハウスを出してゆっくり休む・・・といきたいところだが、マイハウスは使えなくなっている。

冒険者ギルドが全滅したせいだろう。

アイテム倉庫が使えるのが恩の字。


「この噴水で水浴びするのは・・・ちょっと狭いわ」


「水浴びするな」


ポラリスのボケに突っ込みを入れる。

本来は炊事や飲料水にする貴重な水だ。


「キラーラビットがいました。香草焼きを作りましょう」


てきぱきと夕食の準備を始めるソフィア。

よくその魔物の名前知ってたな。

後、そいつは致死性の攻撃してくるから、凄く危険なんだぞ?


「相変わらず、ソフィア殿の料理は美味しそうですね」


アリスがニコニコして言う。


「実家がパン屋ですからね」


ソフィアが手を止めずに言う。

パン屋はうさぎをさばけるのか。


--


食事を終え、雑談。


「それにしても、適切な指導が有ればここまで伸びるものなのか」


アーサーが嬉しそうに言う。

そう、アーサー達は、技術も、知識も、レベルも、飛躍的に向上していた。


「私・・・今まで自分が魔導を極めたと思っていたけど──」


ポラリス。

極めてないから。

俺にも劣るし、フェルなんて比較にならないから。


「──でも、気付いたわ。私はまだまだいけるって!」


亀の歩みですけどね。


「これも全て女神様のお導き」


アリスが微笑を浮かべ、十字を切る。

女神様のシンボル、十字架だったか?


「自分でも、凄い速度で成長していて・・・驚きでござる」


カゲが自分の手のひらを見つめながら言う。

いや、お前成長してねえから。


「私は逆に、自分の伸びしろに不安を抱きましたがね」


ソフィアが呻く。

そうなんだよな。

わざとやってるのかってくらい、ソフィアは魔力操作容量が低い。

技術はそれなりに有る様なんだが・・・

後、知識どうにかしろよ。

お前賢者だろ。

一応賢者ギルド在籍してたんだろ。


「俺は──」


ムサシが、俺を見て、


「俺は、シルビア殿、あんたの目的が知りたい」


そう言葉を発した。


「目的?」


こいつ等育てて魔王に対抗するって言ったよな。


「お前達6人を育て、魔王軍に対抗する。魔王軍は強大だ。俺1人では、悔しいが対抗出来ない」


ムサシは首を振ると、


「魔王軍は強い。そしてシルビア殿も強い。そして・・・俺達は弱い。この先何十年かかっても、恐らく俺達では魔王軍に対抗する事は出来ないだろう」


いや、流石に、何十年も有れば。


「そして、人類が滅びる方が早い。後数年もつかどうか・・・」


ムサシが痛い所をつく。

そう、人類にはタイムリミットが有る。

しかも・・・毎日、たくさんの人が死んでいるのだ。

期限まで大丈夫、という話では無い。


「後、11ヶ月と4日ですね。現時点では」


ソフィアがさらりと数字を口にする。

うわ、何か賢者みたい。


・・・誤魔化せないか。

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