第120話 帰還不要

「がむしゃらに剣を振るな。動作を読み、オーラを読み取り、クリティカルを狙え」


アーサーと浪人──ムサシに告げる。

クリティカルが出れば、防御を貫通したり、ダメージが増えたり、メリットが多い。

ちなみに、盗賊ギルドのメンバーは、殆どができる。

クリティカルの上位、トゥルークリティカルは少し難しいが、クリティカルまでなら簡単だ。


センスが有るとは言い難いが、やる気は有るようだ。

それなりに頑張っている。

カゲも一緒になってやっている。

カモフラージュというやつだ。


カカカカ


4連のトゥルークリティカル。


隠す気有るよな?


「イメージしろ。火のイメージ、詠唱が無くてもイメージが強ければ発動するんだ」


非魔法職には無理だけど。


魔法職3名、ポラリス、アリス、ソフィアへの指導。

こいつ等も、センスは無い。


「・・・私は信仰による奇跡の行使なので、魔法の構築の訓練は違うと思うのです」


アリスの抗議。

確かに。


「そうだな・・・適切に補助や回復をかけたり、自分の身を守る為に攻撃したり防御したり・・・そう言った訓練の方が良いかもしれんな」


「はい」


ドヤ顔で頷くアリス。


がし


アリスの腕を、カゲが掴む。


「・・・あれ?」


疑問符を浮かべるアリスを、カゲが引きずっていった。


「・・・シルビア殿、アリス殿は?」


ソフィアが困惑した声で尋ねる。


「ゾンビ洞窟に棄ててくる。夕飯時には引き上げるよ」


「そもそも何故、カゲ殿がナチュラルに・・・?」


ポラリスが呻く。

・・・はっ?!

つい指示を出してしまった。


「先程クリティカルヒットを連打していたから、鍛錬の必要が無かったのでしょうね」


ソフィアが困惑した声で言う。


「と、とりあえず、訓練の続きだ」


俺はそう言うと、また駄目出しを再開した。


--


「見てから反応するな、敵の未来を予測し、向かい撃て」


推奨レベル十数万、とはいえ、こいつ等には格上の魔物達。

実践訓練と、レベル上げ。

基礎訓練だとアリスが暇になるしな。

精神集中とか、できる事はあると思うんだが。


「くっ」


ムサシが、敵の攻撃を受け、バランスを崩す。

サソリ型の魔物。

その尾が刺さった部分が、紫色に染まる。


「不浄なる者に癒やしを!」


アリスの魔法が飛び、ムサシが瞬時に回復する。

威力もタイミングもバッチリだが、何かと混ざってないか?


「巡れ巡れ大罪の炎!エクスプロージョン!」


ごたいそうな詠唱に比べると、控え目な魔法が飛び、数体の魔物を焼き尽くした。


「炎の矢!」


ソフィアが炎の矢を放つが・・・敵の妨害くらいにしかなっていない。

センス無いなあ・・・

しかも、今撃ったレッドゼリーは炎耐性が高い。

こいつ、本当に賢者か?


ゴウ


ゴーレムの突進。

それを──アーサーが受け止める。


ガッ


ポラリスの水の刃が、ゴーレムを切り裂いた。


ガアッ


キメラの噛みつき。

その素早い動きは、このレベル帯では頭1つ抜けている。

カゲに噛みつき・・・


ガキン・・・ボロ・・・


歯が欠けて飛び跳ねている。

まあ、ダメージ通る訳はなく。

と言うか、躱せよ、カゲ。

色々隠す気無いだろ。


ヒュ


吸血鬼、レベル帯の違う魔物が混じっていたので、ダガーを投げ、潰す。

推奨レベルは50万程。

時々、レベル帯合わないのが混じるようになっていた。

多分、魔王のせい。


「シルビア殿、そろそろ帰還しないと、夜になりますぞ」


「安全地帯を確保して、ダンジョン内で一夜を明かす」


アーサーの意見に、端的に告げる。

お前等、本当に冒険者か?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る