第118話 過疎化

地上は、悲惨だった。

地上は、静かだった。


現地の人類を含め、街には生存者は居ない。

そんな分かりやすい場所にいれば・・・殺される。


黒い光の柱・・・始まりの街のあった場所。

今では、終わりの街、と言うべきか。

始まりにして、終わりの場所。


プレイヤーの補充が、1日1回なのは、まだ救いだ。

即時補充なら・・・とっくに人類は全滅しているだろう。


「ご主人様、どうされますか?」


月花が尋ねる。

短く、答える。


「カゲと合流する」


カゲは、合計5名のプレイヤーを助け、隠れているらしい。

実力は隠しているとか。


さて。


物陰から、様子を伺う。


カゲを含めて6人。

カゲですら、それだけしか救えなかった。

ここにいるメンバーが、生き残ったプレイヤー、いや、人間の全てかも知れない。


レベルは・・・10万前後か。

低いな。


さて。


・・・


あれ、これ、どうやって出ていけば良いんだ?


「何奴!」


カゲがこちらの方を見て、叫ぶ。

ナイスアシスト。


「待て、怪しい者ではない」


瞬時に戦闘態勢を取るプレイヤー達の前に、ゆっくりと出て行く。


「誰だ。魔王軍ではないと証明出来るか?」


長身の男性が、低い声で言う。

金髪碧眼、銀色のフルプレート。

装飾の付いた長剣。

騎士か、剣士か。


「俺は人間だ。この耳を見ろ。・・・と言うか、魔王軍は人間のフリをして近づいてくるのか?」


俺は耳を見せつつ言う。

魔族は耳が尖っている。


「先日も人間に化けた魔族に騙され、仲間を半分失いました。当然の警戒です」


ウェーブのかかった茶色い髪の女性が、警戒を滲ませた声で告げる。

背中に背負った杖、緩やかなローブ。

後衛だろう。


魔王、そんな事してるのか。

一気に難易度上がってるなあ。


「俺の名は、シルビア。六王、各ギルドマスターの友人だ」


どよっ。

6名──カゲは演技だが──がざわめく。


「大罪人シルビアか!非戦闘職を選んだ、戦いから逃げた者。今更何をしに来た!弱者は足手まといだ、引っ込んでいろ!」


緑髪のエルフの男性が叫ぶ。

やはり杖を背中に、緩やかなローブ。


え。


何で俺、こんな雑魚に吠えられてるの?


「いや・・・あのな?」


確かに非戦闘職だが、お前達よりは遥かに強いぞ?

カゲになら瞬殺されるけど。


「シルビア殿・・・噂には聞いております。戦闘行為は出来なくても、人柄は良く、知識も豊富、と。今は状況が状況です、お知恵を借りられるのであれば、借りたい。ただし、本物であれば、ですが」


金髪碧眼の優しい目をした女性が告げる。

服装からして、聖職者のようだ。


「証拠、か。例えば、フレンド登録をすれば、フレンドリストには表示されるが・・・」


頭の上に名前が出る訳でもないしな。

PT組むと、レベルが表示されるから避けたい。


「俺は、シルビア殿を信じよう。これでも人を見る目は有るつもりだ」


浪人って感じの、黒髪長髪の男性。

刀を2本下げている。


「拙者は、信用できないでござる」


カゲが、俺に殺気を飛ばしつつ言う。

続ける。


「聞くところによると、レベルが100万を超えているそうでござるな。然らば、拙者を軽くいなせる筈でござる。手合わせ願いたい」


ちゃきり


カゲが刀を構える。


俺はレベル400万だが、お前、レベル500万超えてるじゃねえか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る