第117話 拝謁

「まあ、このあたりで、魔王が復活、街を蹂躙、フェリオ達が死んだ、と」


・・・


「魔王の復活・・・依り代は魔族とは限らないですが・・・今回は丁度魔族が街に居ましたからね」


・・・


「五王は・・・」


「死にました。街に集まっていた者は全て死にました。勿論、権力者達、も」


・・・そうか。

俺は、淡々と告げる。


「人類は、女神様の怒りに触れたんだ。愚かな人類の行為に見切りをつけた女神様は、人類を滅ぼす為に魔王を再び降臨された。媒介となったのは、魔王の娘ロリア」


「いえ、ご主──」


「媒介となったのは、魔王の娘ロリア」


月花の声を遮る。

カゲを、月花を見て。


「人類は女神様の怒りに触れた。女神様は人類を滅ぼそうと考えた。それで、魔王を再び遣わされた。魔王の娘ロリアは魔王として覚醒。人類を絶滅させる為、動き出した。分かったな?」


それで。


「今街はどうなっているんだ?」


「・・・逆結界で覆われていますね。・・・その・・・魔王は、人類が召喚される広場に対し、死の魔法陣を設置しました。落ちてきた者を溶かし、魔王の滋養とする結界です。今後は、毎朝の補充の新規参加者と、枠拡張による新規参加者・・・その全てが召喚直後に溶ける事になります」


・・・賢い事で。


「今は、魔王は魔王軍残存戦力の糾合と、プレイヤー達の掃討を実施しています。戦力的にも圧倒的差が有るのですが・・・加えて裏をかかれたり、罠に嵌まったりして、急速に狩られています」


・・・不味いな。


「カゲ」


「・・・はい?」


カゲがこちらの目を見て、問いかける。


「カゲ、すまないが・・・地上に戻って、残ったプレイヤーを助けて欲しい。戦闘を避け、隠れ・・・その上で、訓練もしてやって欲しい」


「・・・分かりました」


カゲが頷く。


「ご主人様はどうされるのですか?」


月花が尋ねる。


決まっている。


「俺は、ダンジョンをクリアする・・・月花、お前と2人で、な」


--


ゴウッ


俺が放った宝飾解放ロストトレジャーが、ボスを撃ち抜いた。

崩れ落ちるボス。


ドロップを掻き分け、祭壇へと向かう。

これで・・・ダンジョン単独制覇、100個。


「やれやれ、本当にやる人間がいるとは思わなかったよ」


背後から、聞き慣れた声。

冒険者ギルドのマスター、妖精係、お姉さん・・・そして、女神様。


「女神様、ご無沙汰しております」


恭しく頭を下げる。

女神様がくすくす笑う。


「キミがそんな態度をとるとはね。流石に、余程堪えたらしいね」


・・・


「女神様・・・願いを聞いて頂けるのでしょうか?」


「許す。ただし、限度があるけどね」


女神様の微笑。

俺の望みは・・・


「それでは、死者の蘇生を・・・お願いします」


くすり


女神様が微笑むと、


そっと、小さな宝石を手渡した。


「蘇生の石。死者を一体、蘇生できる。一体だけ、ね」


ゴッドレア、この世に有り得べからざるレアアイテム・・・だが。


「駄目、だよ。キミの友人全て、なんて。それこそ、ダンジョン単独制覇が200個はいかないと、ね」


くすくす


女神様が笑う。


「まあ、被された泥を赦してあげるんだ。今キミにあげられるのはこのくらいだね」


女神様はそう言うと、出口とは反対側へと歩いて行った。

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