第113話 格の違い

「・・・行くぞ!」


俺の号令に──


ゴウッ


フェリオの圧縮冷気槍、トライプニルの聖炎の渦。


ゴッ


ルナナの月光条、ワムテの瘴気渦。


ガギ


メイルの流水槍、月花の雷槌。


ザンッ


カゲの影斬、バスレトのグレイテストバイト。


そして──


「ま、待て・・・」


折れた旗を振るエリゴル。

旗が光の泡となって崩れていく。

・・・待たない方が・・・?


「卑怯だぞ?!全員で一斉攻撃とか、鬼か?!」


いや、未来読まれるって言われたら、一斉にボコるしかないじゃん?


「後、最後のお前、お前は一体何なんだ???おかしいだろう?!何故、予知した動きと異なる動き・・・我が英知の旗を破壊するとは・・・!」


気が変わったんです。


「しかも、神器を破壊なんて・・・我輩でもできぬのだぞ?!」


LRの3連宝飾解放ロストトレジャー、舐めるな。


「・・・かくなる上は・・・我が真の力をもって、相手をしてやろう」


「なっ」


月花が顔色を変えて叫ぶ。


「・・・正気か?女神様も流石に見逃されまい」


フェリオが焦りを隠せない声で言う。


「酷い・・・にょろ!」


ワムテが半泣きになって叫ぶ。


本気って・・・まさか、旧神として力を解放・・・?


ギッ


空間が悲鳴をあげる。


「無茶です!この世界が壊れてしまいます!」


メイルがきつく咎める声で言う。

だが・・・エリゴルはますます嬉しそうに叫ぶ。


「ははははは、残念だったな。我輩、本気を出したら圧倒的過ぎて、そなた等では存在を認識しただけで魂が潰れるやも知れぬ。最早輪廻の輪に戻る事もなく消し飛ぶが、悪いのはそなた等自身と知れ。さあ・・・最後のワンマンショーの始まりだ!」


やべえええええ。


俺ですら恐怖で膝をつく。

空間は軋んでいるし、知覚しようとしただけで魂がごっそり削れていく。


意識が遠く──


「そうか、仕方が無い、の」


声が響き渡る。

何気ない、温度の無い、声。


発したのは、フェリオ。


エリゴルが放っていた圧が・・・消える。


「ば・・・馬鹿な・・・何故・・・何故貴様・・・いえ・・・貴方が・・・?」


エリゴルが後退り、問いかける。


「おいたが過ぎた、にょろ」


ワムテが・・・告げる。


「仕方が無い、ですよね」


メイルが淡々と、呟く。


「うさぁ」


ルナナ。


4体から、強いとか、強くないとか、そんな基準が馬鹿らしい様な気配を感じる。

敵意が無いせいだろう。

先程エリゴルから感じた様な痛みは無い。


「フェリオ達は、原存オリジンは、『現象』です。そこから神格を得た者が、神や旧神。つまり、別格の存在ですね」


月花の解説。


「フェリオは死、ワムテは混沌、メイルは歌、ルナナは神秘、の概念。まあ──」


最早、立つことすらかなわないエリゴルが、フェリオに前脚で頭を抑え込まれていた。


--


「乾杯!」


久々のダンジョンクリア。

お祝いのパーティーを開いている。


参加者は俺、従魔、ロリア・・・そして抜け出してきたフェルだ。


「お疲れ様、順調なようね」


フェルが微笑んで言う。


「ああ・・・とは言え、最後のダンジョンがまだ見つかって無いんだが・・・」


ダンジョンクリア数、99。

此処まで来たら、100にいきたい。


「フェル殿達は順調なようでござるな。魔族が活性化する満月と新月を避けた三日月の夜・・・1ヶ月後に最終要塞攻略決行でござったな」


「ええ。もう、術式の準備も進んでるから・・・苦労せず落とせる算段よ」


フェルが胸を張る。

正面突破じゃないのかな?


「貴方はどうするの?」


フェルがロリアに話を振る。

返答によっては敵になるのだが。


「私はもう、魔王軍とは袂を分かちました。人間の街で大人しく祈ってますよ」


ロリアが、自嘲気味に笑う。


「敵対はしない、って事ね」


フェルが満足そうに頷く。


「それに・・・大切に想う方ができましたし・・・」


ロリアが頬を染める。

好きな人ができたのかな?

魔族か、人間か。

案外、このタイミングで言ったのは、相手が人間なのかもしれない。

人間が好きになったので、魔王軍には戻らない、と。


「ふーん。つまり、敵なのね」


「何でだよ」


フェルのネジが外れた発言に、ツッコミを入れる。

愛に目覚めたなら敵じゃ無いだろ。

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