第111話 生死を賭した戦い

150階層。

50階層毎に、泉が設置され、セーフティエリアになっているようだ。


今日は此処で休むか。


「おにーさん、おねーさまから連絡が来ています」


フレアが言う。

プレイヤーではないので、ギルドメッセージや、ウィスパー、ショートメール等は使えない。

従魔会話も使えないし。

なので、ロリアに通信機器を渡し、それで会話をしているらしい。


「今一緒にお風呂に入っていると伝えたら、ビデオ通話にならないかと聞いているのですぅ」


「フレアの元気な顔が見たいんだろうなあ」


ちなみに、お風呂云々は比喩だろう。

お風呂に入ってる様に寛いでいる、と伝えたかったのだろう。

画面の中でロリアが、真っ赤になって画面を凝視している。

・・・ん、既にビデオ通話になっていないか?


「あれは一方通行でしか映像を送れないので、こちらの様子は見えてません。まだまだ改良の余地が有りますね」


月花が自嘲するように言う。

いや、それ本当に技術的問題か?

後、ロリアは映像送られているの知ってるのか?


「1日で150階層・・・先は長そうだ。もっとペースを上げないとな」


「既に異常な速度、いえ、異常とかそんな言葉では表現出来ない速度ですけどね」


月花が半眼で言う。

そんなに遅いか?


--


「良くここまで来た」


武人、といった印象の男性が告げる。

151階層。

変則的なフロア・・・最上階か?


「ご主人様、また規格外の強さですね。旧神、エリゴル。絶望的な強さです」


「また神か・・・」


抜け道は有るのだろうか。

というか、ボスに規格外の奴おいておくの、反則じゃね?


「今は旧神としての顕現では無く、魔人としての存在なので、数段格は落ちています。とはいえ・・・アレを倒すのは不可能です」


ふむ・・・


「エリゴル、あんたを倒さずにダンジョンをクリアする方法は?」


俺の問に、


「そんなものは無い」


え。

エリゴルが断言する。


「武神よ。此処に配される際、原存オリジンとして配された者は、課題を出す事で勝利を譲る筈じゃぞ?天命ロールを破る気かの?」


フェリオが呆れた様に告げる。

そんなルールがあったのか。

まあ、超常の力を持つ存在が、本気でかかってきたらゲームが成り立たないよね。

クリアさせる気ないだろってなっちゃう。


「然り。我輩を倒す事こそが試練故に」


駄目だろ。


「ふむ・・・ならば仕方無いのう」


フェリオが頷く。

頷いちゃうんだ。

クリアさせる気無いだろ。


「・・・今から別の所探すか・・・?」


俺の言葉に、月花が首を振る。


「駄目ですね。戦闘が開始したので、逃げられません」


く。


「悪く思うな。我輩も、かつては、簡単なクエスト達成で証とする腹積もりではあったのじゃ。だがの・・・」


遠い目をして、


「喚ばれてから幾星霜・・・些か飽きてな。全力で生死を賭して戦いたい・・・そう思う様になったのだ。恨むな、とは言わぬ。そなたらの怨嗟をも、我輩が甘受して語り継ごう」


エリゴルがイケボで言う。


ひゅん


右手に蒼白く光る槍を。

左手に風林火山と書かれた旗を出した。


「右手の槍は変幻自在で、重量すら自在に変化します。防ぐのは非現実的ですね」


月花の解説。


「・・・強そうだな」


「左手の旗は、戦いの秘技が網羅されていて、あらゆる戦術を無効化するそうです・・・その文章は理解不能な文字で書かれている為、奪っても使う事はできません」


「風林火山って書いてあるんだが・・・」


まあ、意味が分からない文字列ってのは確かだが。

・・・何処かで聞いた事がある気がする?

何かの名前だっけ?


「喚ばれてから幾星霜・・・恐らくまだ10年経ってない筈ですが、突っ込んで良いのでしょうか?」


メイルがぼやく。

まあ、10年って、意外と長いぞ?

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