第110話 その存在の名は麒麟

霊真エーテルとは、魂の情報をエネルギーとして扱う技術なのですぅ。魂は輪廻転生すべき物なので、霊真エーテルに変換すると収支が合わなくなり、輪廻転生が止まる・・・まさに禁忌なのですぅ」


フレアの解説。

なるほど。


「まあ、此処の世界は仮存在が多いし、そもそも輪廻転生をさせてないので、あまり関係ないのですけどね」


月花が補足する。

じゃあいいのか?


霊真エーテルに変換っていっても、限度を超えなければ、マナを使って修復できますしね」


メイルが補足。


ふむ。


霊真エーテルの研究、しても良さそうだぞ?」


「まず、神の領分を侵している時点で駄目だと説明したよね?」


俺の言葉を、お姉さんが否定する。

そう言えばそうだった。

お姉さんからは別に教えられて無いけど。


「まあ、霊真エーテルの研究手を出す気は無い。フレアもちゃんと側に置いて監視させてるしな。だから、安心してくれ」


お姉さんは溜め息をつくと、


「分かった、キミを信じよう・・・だが、約束を破ればどうなるか・・・分かってるよね?」


怖ええ。。。


魂の奥底から冷える様な威圧。

絶対に駄目だ・・・


俺が冷や汗を自覚しつつ頷くと、お姉さんが微笑む。

・・・恐ろしい気配が無くなって、安心したせいで、お姉さんが凄い美人だと思ってしまった。

いや、そもそも、元から美人だよな。

完璧なまでの造形美。

流石・・・


「もう、おいたしちゃ駄目だからね」


お姉さんは俺の鼻を突付くと、踵を返し、立ち去った。


・・・助かった。


「さて、では続きに戻りましょうか」


月花がそう言うと、再び元の作業に戻って行く。

フェリオとトライプニルが空中に描き出した図面を回しながら議論。

フレアが銃の様な物を触り、メイルが魔法陣を銃の周りに纏わせ。

月花が何やら、紙に色々書き込む。

バスレトがくるくる宙返り、ワムテが光の輪を生み出し。

ルナナが光の泡を吐く。


・・・


「・・・何をしているか分からんが、まさか霊真エーテルの研究してないよな?」


月花が呆れた顔で、


「ご主人様・・・まさかこれが霊真エーテルの研究に見えるのですか?」


え・・・違うのかな。

違う気がしてきた・・・これで決めつけたら恥ずかしいしな。


「とにかく、霊真エーテルの研究はするなよ」


「うさぁ!」


ルナナが元気良く返事した。


--


カチャり・・・


「103階・・・おかしいだろ、このダンジョン?!」


さっきから何度目か分からない叫び声を上げる。


「にゃあとしては、恐らく再挑戦時のショートカットらしき閂付き扉を開けて登ってるご主人様の方がおかしいと思うにゃあ」


駄猫が余計な事を言う。


確かに、大周りして階層クリア、最後に裏側から開ける扉かも知れない。

だが、まともにやってたら何年かかるか分からない。


「時間は有るのですから、ゆっくり探索してはどうでしょうか?」


月花の提案。

しかし・・・


「駄目だ。3ヶ月後・・・最近接都市への侵攻が計画されている・・・もう、時間が無い」


既に遊撃隊による遊撃は始まってるしな。

遊撃だけで潰してしまわないだろうな?


扉を開けては、階段を登る。

そして・・・


「110階層、ボスですね」


カゲが言う。

10階層毎にボスが出てくる。


ボスは・・・


「麒麟、ですね」


月花が言う。


キリン?

なんか鱗も生えてるし、変な感じだ。


「動物のキリンとは別の存在ですよ。神獣、強力な敵です」


月花の解説。

既にフェリオが前脚で抑え込んでるし、白旗振ってるんだが。


「まず魔法がかなり効きにくいです。龍鱗以上の魔法抵抗が有りますね。牙も──」


「いや、もう白旗振ってるし、先急ぐぞ?」


流石に、白旗振ってるやつをドロップに変えるのは気がひける。

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